枯れ落ちる花

塚口悠良

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いつも通りのお約束

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 シングルのベッドに二人で入って、他愛ない話をする。大学のゼミで仲良くなった友人の優菜とサークル帰りに適当に集まってなんとなくご飯を食べて、なんとなく寝る用意をして。そんないつも通りの時間を過ごした。優菜は、そーっと冷えた足先を私の足にくっつけてイタズラっぽく笑っている。それを大げさにしかるのも、いつも通り。
 時計の針が十二を越えたのを見届けてほんの少しの熱を込めて、言葉を紡いだ。

「さ、優菜。もう寝ようか」
「……寝ちゃうの?」

 甘えたような声で、私が欲しい返事をくれる。私はいつもこうやってズルをする。この子がそれを拾い上げてくれるって知ってるから。

「寝なくてもいいけど、なんかしたいコトある?」
「遊んでよー」
「ん、なにしたいの?」
「わかってるくせに。いじわる」

 そう言って、優菜は私の身体に手を這わせる。そっと背中を撫でて、お尻、お腹、胸。もどかしいほどに優しく触れて、伺うみたいに私の顔を見る。

「今日のあたしはえっちなんだから」
「へぇ。いつもじゃないの?」
「美咲に言われたくないんだけど」
「はあ? 別にあたしは……ちょ、……んっ……」
「説得力ゼロじゃん。ふふ。かわいーこえ。えっちだね」

 するすると身体を撫でながら耳元で囁かれて、全身から力が抜けるのが分かる。溺れるみたいに、どんどん息が出来なくなって、頭もぼーっとして、快楽に身を委ねてしまう。あー……きもちいな。ぼんやり視線を彷徨わせた先に最近部屋に飾った芍薬の花を見つけて、なんだか見られているような、後ろめたい感覚にさいなまれる。あんなもの、どうして贈って来たんだか。

「ねぇ、よそ見しないでよ」

 拗ねたような優菜の声に意識が引っ張り上げられる。尖らせた口に吸い付いて唇を舐める。そうするだけで嬉しそうに蕩ける瞳がなんだかとても甘そうだなと思う。

「だったら、夢中にさせてよ。訳分かんなくなるくらい」
「いーよ。一緒にきもちくなろ?」

 こうして夜が更けていく。これも、いつも通りのお約束だった。
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