声に恋する君に恋した

塚口悠良

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2.相互理解を深めて

2-3.マブダチ

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 放課後、荷物をまとめて立ち上がると何も言わずとも橘がついてくる。教室からなにやら軽いブーイングが起こっているが知ったことではない。
「橘今日も北見と帰んの? いつの間にそんな仲良くなったんだよー」
「いやーもはやマブダチかも!」
 橘の返しにぶーたれていたクラスメイトもゲラゲラ笑っている。何が面白いんだ。こちとらマブダチだぞ。隣に並んだ橘に視線を向けると締まりのない笑みを浮かべるから額をぺし、と押さえる。
「む、なんだよ」
「顔ゆるゆる。なに、なんか嬉しいことあったん?」
「え? マブダチ否定されなかったから」
「はあ~?」
 あの会話で俺がわざわざ否定するわけないし、そもそも面と向かってても否定はしないけど、それが嬉しくてにやにやしてるってなんだ。ちょっと想像してたよりだいぶ可愛いぞこの男。
「北見、今日はどこいく? やっぱゲーセン?」
「ん~……今日うちでもいいか?」
「え、北見の家?」
「そ。買いたいゲームあるから金貯めたくて」
「おお! そうだよな。外だとどうしても金かかるし」
 うんうんと頷き、買いたいゲームの内容を深掘りしてくる橘にホームページを見せつつ内容を説明する。ゲームのシステムに難しそうと険しい顔をしていて思わず笑う。
「なに、シミュレーションゲーム苦手?」
「うぅん……定石が分かんなくて詰むこと多い。考えること多すぎてキレそうになる」
「以外と脳筋だよな橘。ああいうのは一匹ずつ誘い込んでしばくんだよ。お前敵の大群に突っ込んでそう」
「……エスパー?」
「バカだろマジで」
 至極真剣な顔で言う橘に笑いながらツッコミを入れる。橘と仲良くしてて気づいたことがいくつかある。橘は意外と短絡的で脳筋タイプだ。アクションゲームも防御を固めて工夫をこらすより火力ガン上げで殴ってれば勝てるみたいなことを平気でやる。そっちの方が近道な時も確かにあるが、そうじゃないことも多い中、真剣にパワーゴリ押しをしては大笑いしながらリトライする姿はもはや芸術的だった。俺にはできない楽しみ方を全力でやっているのを見て、バカだなぁと思いつつも面白い奴だと思って見ている。
 それから、よくやってるゲームが恋愛シミュレーションゲームだというのも最近知ったことだ。好きな声優が出ているゲームならなんでもと聞いてはいたが、そっちもやるんだと正直驚いた。橘の話を聞くに、ただ恋愛をするだけじゃなく、かなり世界観やシナリオが練られているものが多いらしい。そのおかげで純粋にゲームとしても面白いのだと教えてくれた。まあ確かにいわゆる乙女ゲームが原作のアニメは何度も見ているが、シナリオが面白いものも多い。ルート分岐の性質上しっちゃかめっちゃかになっている作品も無くはないが、そこはまあご愛嬌の範囲内だろう。橘と駄弁りつつ家までの道のりを歩く。今日は夜まで家に誰もいないし、気兼ねなく過ごしてもらえるはずだ。
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