声に恋する君に恋した

塚口悠良

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2.相互理解を深めて

2-4.どうぞ気兼ねなく

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「ほら、どーぞ」
「お、お邪魔します!」
「今日親いないから、ゆっくりしてって」
「ほぁ⁉ あ、うん。ありがとう」
 何かに大袈裟に驚いた橘は一度咳払いをして靴を脱いだ。そっと靴を揃えてもう一度改めてお辞儀をした橘にそこまでかしこまらなくていいと伝えるが、どうしても緊張は解けなさそうだった。
 自室に案内して、適当に座っているよう促した。パソコンデスクか勉強机の椅子、もしくはベッドぐらいしか座るとこないけど好きなとこ、と言ってお茶を取りにリビングへ向かう。それにしてもなんであんなに緊張してるんだ。意外と人の家遊びに行くとかしてこなかったのかもしれない。だとしたらちょっと悪いことしたかもな。次からはもっとちゃんと橘の意思を確認しなければ、と意気込み麦茶をコップに入れて部屋に戻る。扉を開けると、勉強机の椅子に背筋をピンと伸ばして足を揃えた状態で座っている姿が見えてさすがに耐えきれず大笑いする。持ってきたコップを落とさないように咄嗟に置けたのだけは褒めてもらいたい。
「ちょ、なに。なんで大笑いすんの?」
「いや……だって……おまっ、それ、緊張とかいうレベルか?」
「うっ、うるさい! どうしたらいいか分かんないんだよ!」
 顔を真っ赤にして叫ぶ橘を余計にからかいたい衝動に駆られるけれど、その欲求をなんとか押さえ込む。そばに置いたコップを手渡してやり、ベッドに腰掛ける。麦茶を飲んで少し落ち着いたらしい橘はキョロキョロと部屋を見回して俺に視線を固定した。
「意外と、殺風景だな」
「グッズとかって話?」
「そう」
「俺はあんまグッズ買わない派だからね。橘は?」
「俺は、結構買う。推しはなんぼあってもええ」
「あっ無限回収ニキだ」
 言いながらカラーボックスを引っ張ってきて開ける。この中には選りすぐりのグッズが詰まっていて、たまに取り出しては見返している。橘を手招きして箱の中身を見せると目を輝かせ始める。
「これ、北見のコレクション?」
「そう。この箱の中に俺のこだわりを詰めてる」
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