声に恋する君に恋した

塚口悠良

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3.学生の本分

3-4.不思議なやりとり

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「そんなにしたいなら、夏休みとか。泊まりに来れば」
「マジ!? ちょ、俺こういうの本気にするよ?」
「母親の前でこの手の冗談言わないだろ。こっちにも本気にする人いるんだから」
「そうよー。もう大歓迎のお料理作っちゃうんだから! 好きなメニュー今のうちに聞いとこ。何が食べたい?」
「え、え……! か、カレー? とか、唐揚げ、とか……ですかね」
「ハンバーグは? 好き?」
「好きです!」
「んふふ……ザ・男の子って感じねぇ~いいわぁ作りがいあるわぁ。ちなみに橘くんは甘いもの好き? ショートケーキとかガトーショコラとか」
「え、めっちゃ好きです。ケーキ系なんでも好き」
 母さんとふたりで大はしゃぎしながら好みの聴取が始まってとりあえずダイニングテーブルに座る。友だちと母親が楽しそうに話してるのってなんか変な感じだ。面白いけど、妙な気分。適当に眺めていると突然橘が俺の方を振り返る。
「北見のお母さんすごいな……! ケーキ作るんだって!」
「おぁ、うん……知ってる……」
「やだぁ……照れるわぁ……祐介、橘くんすごいいい子よ!」
「うん……それも、知ってる……」
 ふたりが揃って俺に報告をしてくるからより一層面白い。知ってるよ。俺の母親だし、俺の友だちなんだから。ほんとに楽しい人たちだな、と思いながらもいいタイミングだ。話を切り上げて部屋に戻るように促した。コップを片方手渡して橘を先に部屋に向かわせる。
「んふふ……可愛い子ね」
「だろ。自慢の友だちだからな」
「あら……素敵ね。いつでも泊まりに来ていいって伝えておいて」
「はいよ」
 母さんからの言付けももらったことだし、ほんとに部屋に戻ろう。おかわりが欲しくなった時のためにオレンジジュースをパックごと抱えて部屋に向かう。
「よぉし、休憩休憩」
「北見のお母さんすごいふわふわしてて話しやすかった。ちょっと安心した」
「おお。まあね。時たまなに言ってるか分かんねえときあるけど」
 にこにことクッキーを食べている橘を見ながら、そういえば橘の両親については何も知らないな、と思う。別に取り立てて気にするようなことではないかもしれないが、少しくらい聞いてみてもいいか。
「橘の母さんは? どんな人?」
「んー……厳しい人……ではあると思う。自由にさせてくれてるけどな。成績はある程度キープしてないとやばいかなぁ」
「まあそれはどこもそうか。うちは母さんが緩い分父さんが勉強には厳しい。大学もそれなりのところには行けってうるせえんだよなぁ」
「あー、まあそうだよな。うちもそんな感じ」
 やっぱ高校二年にもなると大なり小なり受験の話が出てくるもので、ほんのりうんざりした気持ちをオレンジジュースで流し込んだ。
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