声に恋する君に恋した

塚口悠良

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4.運命力とかそういうもの

4-3.向き合い方

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 俯いたままに呟かれた言葉を聞き返すけれど、橘はふるふると首を横に振るだけで、答えてはくれない。聞かせるために言った言葉で無いのなら無理に聞き出すこともない。深追いせずに黙る。数秒の後、橘はパッと顔を上げ、いつもみたいに笑った。
「せっかくカラオケだし、歌おうぜ!」

 橘がマイクを持って前奏に身体を揺らす。音量調整も手早く終わらせ、準備万端だ。画面に歌詞が表示され、息を吸った音がマイクに乗る。続いて聞こえた歌声は、とても安定していて綺麗だった。イケメンは歌まで上手いのなぁと感心しながら聞いていると、アイドルらしいキメのところで俺に向かってウィンクまでかましてきやがる。バチっと合った目があまりにも楽しそうで、俺まで嬉しくなってきてしまう。仕草まで完璧な仕上がりで、橘がこの曲を、このコンテツをどれだけ好きかが伺える。アニメしか見ていない人間ではあるが、あまりの熱量に感化され、作中で一番好きだった曲を予約する。次曲に表示されたタイトルを見てこちらを二度見してくる橘に前を向くように手で示しドリンクを傾けた。毎回イイ反応くれちゃうから、こっちも楽しくなるってなもんで。直近で聞いているわけじゃない曲だ。あんま歌えなかったら橘に歌ってもらおう。
「この曲、アニメで見てて一番好きだったんだよ。歌えなかったらパスするから頼むわ」
「えぇ! 歌えるとこだけでも歌って! 俺もこの曲大好きなんだよ。まさか北見が歌ってるの聞けると思わなかった」
 にこにこと笑っている橘は完全にマイクを遠くに置いて歌うつもりはないと意思表示してくる。好きなコンテンツを友だちも知ってて、大好きな曲をそいつが歌う。考えてみれば理想的な構図だ。橘の気持ちも大いに理解できるため、なんとか歌いきるために気合いを入れる。ミディアムバラードなラブソングはアイドルとして披露する場面はもちろん、その時のメンバー同士の思いを代弁しているともとれる歌詞が印象的だった。覚えているか不安もあったが、前奏が流れてきた瞬間、恐らく大丈夫だと確信できた。マイクのスイッチを入れ、息を吸った。
 歌いきって橘を振り返る。嬉しそうに笑ってくれてるかな、と期待したけれど、その予想は大きく裏切られることになった。どこか浮かない顔をして眉を寄せている橘に血の気が引く。やっぱ好きな作品の曲中途半端に歌われるの嫌だったか。どう謝ろうかと考えているとすすす、と橘が近寄ってくる。その隣に腰を下ろすけれど、橘は口を開いてはくれない。
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