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4.運命力とかそういうもの
4-2.オタクのたしなみ
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スマホで表示させたサイトを橘に見せながら口を開く。
「俺さ、このサイトで記事書いてんだよね」
「これ……え、書いてるの北見!?」
表示したサイトは毎クールのアニメを一話ごとに感想・考察として記事にしているもの。自分で言うのもなんだが、かなり閲覧数は回っている。恐らく、橘も見たことがあったのだろう。目の前でスマホの画面と俺の顔を交互に見て口をパクパクさせる橘に耐えきれず大笑いしてしまった。
「ちょ、笑うことないだろ。びっくりしたんだから……。そっか。北見だったのか」
驚きを通り過ぎたらしい橘はぼそりと呟き微笑んだ。
「『アイドルスタート』第一期第七話、『夢の先を見つめて』の記事。俺の大好きなカナメが、人生で初めて仲間の存在を肯定できた、大切な話だ。その記事で、アイドルに対して、『アイスタ』に対して、よく知らないなりに受け取った熱意と覚悟を言語化して伝えてくれたのが、めちゃくちゃ嬉しかった」
橘の言葉に、今度は俺が驚くことになる。その記事は、俺にとっても印象深いものとなっていた。アニメの感想記事なんて、コメントがつくこと自体がそう多くない。ついたとしても、自分なりの解釈を展開したり、認識の甘い部分を指摘するようなものが多いし、そういう場であると認識している。けれど、あの記事には、今までになかった感謝と俺の記事に対する感想が長く綴られたコメントがついた。自分の考えがファンの方の心に残ったことが嬉しくて、自分の文章を肯定されたのが嬉しくて、しばらくスクショを取って眺めていたのだ。
「違ったら、悪いんだけど。結構長めにコメントくれた?」
「……うん。迷惑かなって思いながら、感謝を伝えたくて書いた」
「長文のコメント、感謝ベースで書かれることってマジでなくて。……すげー嬉しかったし、励みになったんだよ」
もともとアニメが好きで、だから見てるし、自分の記録として書いてるだけの記事たちだけど、やっぱりネットにあげるという行為を行っている分、反応があれば嬉しいものだ。あのころはちょうどサイトが閲覧数を増やしていたタイミングでもあったから、噛みつかれることも多かった。そんな中でもらったコメントだったから、本当に心を救われていたところがある。恥ずかしそうに頬を染めて俯いた橘の頭に触れる。救われたって言ってるんだから、胸張って欲しいところだけどな。
「お互い、出会う前から感謝し合ってたとか、運命力高めだな」
「……北見」
消え入りそうな声で名前を呼ばれる。橘が吐く息が震えていて、髪から覗く耳が赤い。小さく息を吸ったあと、何かを呟いたみたいだったけれど、それが俺の耳に届くことはなかった。
「俺さ、このサイトで記事書いてんだよね」
「これ……え、書いてるの北見!?」
表示したサイトは毎クールのアニメを一話ごとに感想・考察として記事にしているもの。自分で言うのもなんだが、かなり閲覧数は回っている。恐らく、橘も見たことがあったのだろう。目の前でスマホの画面と俺の顔を交互に見て口をパクパクさせる橘に耐えきれず大笑いしてしまった。
「ちょ、笑うことないだろ。びっくりしたんだから……。そっか。北見だったのか」
驚きを通り過ぎたらしい橘はぼそりと呟き微笑んだ。
「『アイドルスタート』第一期第七話、『夢の先を見つめて』の記事。俺の大好きなカナメが、人生で初めて仲間の存在を肯定できた、大切な話だ。その記事で、アイドルに対して、『アイスタ』に対して、よく知らないなりに受け取った熱意と覚悟を言語化して伝えてくれたのが、めちゃくちゃ嬉しかった」
橘の言葉に、今度は俺が驚くことになる。その記事は、俺にとっても印象深いものとなっていた。アニメの感想記事なんて、コメントがつくこと自体がそう多くない。ついたとしても、自分なりの解釈を展開したり、認識の甘い部分を指摘するようなものが多いし、そういう場であると認識している。けれど、あの記事には、今までになかった感謝と俺の記事に対する感想が長く綴られたコメントがついた。自分の考えがファンの方の心に残ったことが嬉しくて、自分の文章を肯定されたのが嬉しくて、しばらくスクショを取って眺めていたのだ。
「違ったら、悪いんだけど。結構長めにコメントくれた?」
「……うん。迷惑かなって思いながら、感謝を伝えたくて書いた」
「長文のコメント、感謝ベースで書かれることってマジでなくて。……すげー嬉しかったし、励みになったんだよ」
もともとアニメが好きで、だから見てるし、自分の記録として書いてるだけの記事たちだけど、やっぱりネットにあげるという行為を行っている分、反応があれば嬉しいものだ。あのころはちょうどサイトが閲覧数を増やしていたタイミングでもあったから、噛みつかれることも多かった。そんな中でもらったコメントだったから、本当に心を救われていたところがある。恥ずかしそうに頬を染めて俯いた橘の頭に触れる。救われたって言ってるんだから、胸張って欲しいところだけどな。
「お互い、出会う前から感謝し合ってたとか、運命力高めだな」
「……北見」
消え入りそうな声で名前を呼ばれる。橘が吐く息が震えていて、髪から覗く耳が赤い。小さく息を吸ったあと、何かを呟いたみたいだったけれど、それが俺の耳に届くことはなかった。
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