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小鳥の案内人
しおりを挟む後ろを振り返ることができず、リノ達は走り抜けていきます。
「ねぇリノ、大丈夫?」
「大丈夫だ。
けど、あの兄さんの言ったことって本当に信じていいのか?」
「それは………」
言い淀むアンジェの変わりにシンが答えました。
「リノ、助けてもらったんだぞ。
今は信じるしかないだろ。それにツルペタだったし、声もハスキーだったけれど女みたいだったぞ。」
「え?うそだぁ。すっげぇツルペタだったよ」
そういった瞬間、リノは地面とキスしてしました。
「アンジェいてぇよ」
「リノ!そんな下品なこと言わないの 」
「ちぇー」
「まぁまぁ、アンジェ、リノ。お前ら落ち着けよ。あれ、リノ。お前まだ糸まみれだぞ」
「あぁ、これだろ?
すんげーべったりしてとれねぇんだよ。水辺を探さないと無理みたいだ」
「そうか」
「そうね。水辺は必要だけど、まずはユナと合流しましょう。
ねぇ、どっちへ向かえばいいの?」
アンジェは肩に止まることりに訊ねます。
「チー」
そう鳴くだけで、どっちを指しているのか、まるでわかりません。それでもアンジェはにこにこしていました。
「OK、わかったわ」
「え?アンジェ今のでわかったのか!」
「ちー!」
まるでスゴいと言いたいばかりに小鳥は羽根をばたつかせます。
「多分こっち!」
指を指した方角はせっかく逃げ出した所へと戻ってしまうような道でした。
「びっ!?ぴーぴー!!」
小鳥があんまりな道を指差すアンジェに
パタパタ鳥が肩で暴れています。かわいい。
「おい、なんか違うようだぞ」
「え?本当?」
「ちーぴーーー」
「おっ、飛んで教えてくれるみたいだぜ」
リノは空飛ぶ鳥のその後につづきました。
「リノ!それ以上はいくな。」
「え?」
「残念だけど、簡単には行かせてくれないみたいだぜ」
シンはボーガンを構えました。
その先には、枯れ葉の隙間、その真っ暗な闇から青黒い手がにょきりとはみ出しています。いくつもの手がガサガサと動き始めていました。
「うーうー」
人のようなけれども、異なるぞわぞわと背筋を寒くさせる声にシンは耳を塞ぎたいのを堪えて矢を打ち込みました。
「あたったか!?」
「まて!リノ!いくな!」
シンが止める前に鋭い爪が、リノの背中を引き裂いてしまきました。
「リノ!!」
「がはっ」
リノは切られて衝撃で前に、崩れ落ちていきます。
シンは普段決して出さないような声で叫んでいました。
「アンジェ!」
「わかってるわ」
アンジェは、シンが叫ぶ前から動いていており、既にリノのそばにいます。そうしてリノの首根っこを掴むと地面を蹴った反動で後ろへと下がりました。
「大丈夫?」
「わりぃ、へましちまった。」
「これくらいいいわ。それより血が」
「いや、これくらいか擦り傷だよ」
そういいますが、背中の傷は酷く肉が見えています。
「だめ!止血しておくわ。」
アンジェは手早くリノの体から流れる血を止めるために清潔な布で縛ります。
「シン!」
「わかってる! 」
シンは、ボーガン専用のリノ特性弾をぶちこみました。
辺りが、燃えあがってきますが、辺りから響くうめき声は静まりません。
「一体こいつら、何が効くんだ!」
シンは苛立つように叫びながら、一歩前へとすすみました。
しかし、
「わっ、」
足首を何かにつかまれまてしまいました。
「シン!!」
アンジェが手をのばします。
「くそ!」
シンは足を掴むナニカに向かってボーガンを連射しました。
が、効果はほとんどありません。
仕方なく掴んでくる手を掴もうとしましたが、
しかし、それはスカスカとしていて実態がありません。
「なんだこいつら!」
何度も手を外そうとしますが、取るどころか触れることも、できません!
「くそ!放せ!」
「シン!どうしたの!?」
「足を放さないだけじゃない!増えてるぞ!」
言っている間に鋭い爪が迫ってきていました。
「アンジェ!」
───やられる!!
アンジェは目をぎゅっと閉じました。
しかし、耳元でパシュッと軽い破裂音が聞こえたと同時にリノの声が聞こえました。
「ユナ!なにやってんだお前!」
驚いたような呆れたようなリノの声でアンジェは目を開きました。そして、その光景にどうしていいのかわからなくなりました。
ユナは知らないお兄さんにだっこされており、その手には剣が握られています。
「え?え?ユナ、なにしてるの?」
アンジェが訊ねますが、ユナは振り返ることができずに
「えっ、えーっとだっこ?」
アンジェに聞かれてユナはそう答えるしかありませんでした。それに、リーンゼィルはまるで気にせずにユナと剣をにぎります。
「ユナ!剣と一緒に降りてくれ! 」
「は、はい」
そうして、弓をつがえシンをとらえる魔物に向かって狙いを定めます。
「だめ、そいつには何も効かないし!すり抜けちゃうわ!!」
アンジェが、叫びますり。
「大丈夫だ!問題ない!」
リーンゼィルは真っ直ぐに狙いを定めました。
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