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第1章
第7話(3)呼び出し
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「ああ、静香さん、よく来てくれましたね……」
「ああ……」
わたしはそう言って、怪しげに微笑む天馬さんに軽く頭を下げる。
「来てくれてありがとう!」
「はい……」
わたしは光る白い歯をこれでもかと見せつけてくる功人さんに応える。
「こうして日を置かずに逢えたことを嬉しく思う……」
「はあ……」
わたしはやや感激している様子のジャッキーさんに対して生返事をする。
「やあ、元気していたかい?」
「ええ……」
わたしは今にもハイタッチしてきそうな勢いのノリタカさんを軽くあしらう。
「オイラと会えなくて寂しかっただろう?」
「いえ……!」
わたしは訳の分からないことをほざくブレムさんにはっきりとNOを突き付ける。
「なんだよ、オイラにだけ当たりが強いな……気のせいか?」
「気のせいではありません」
「え?」
「大体、金曜日に会ったばかりでたった一日しか空いてないじゃないですか、寂しいという感情の芽生えようがありません」
「お、おう……」
淡々と告げるわたしの言葉にブレムさんは面食らう。
「ミス静香、土曜日はゆっくり出来たかい?」
功人さんが目から星が出てきそうな勢いでウインクしてくる。
「……皆さんからの……特にあなたからの連絡さえ無ければ、それは素敵なサタデーナイトフィーバーでしたよ……」
「はははっ、こいつは傑作なジャパニーズジョークだ」
「ジョークではありません……」
わたしは高笑いをする功人さんに冷ややかな視線を向ける。
「我からの連絡がきちんと届いたのだな、良かった。情報端末というものを使うのは初めてでな、大鷹に文を届けさせようかと思ったが思い留まったぞ」
「思い留まっていただけたのは賢明なご判断でした」
わたしはジャッキーさんに告げる。土曜夜の閑静な住宅街を大鷹が飛んだら大騒ぎだ。
「しかし……よく暗号文が読めたな?」
「何故あれが迷惑メールに分類されなかったのかが不思議です……」
わたしはノリタカさんに向かって首を傾げる。
「まあ、念の為にRANEにも暗号なしの文を送ったけどな」
「セキュリティーの意味が無いじゃないですか……」
「それもそうか。それならば、もっとレベルを上げた暗号文を送るか?」
「いいえ、結構です……!」
わたしは心底ウンザリした返事を返す。
「……本当によく来てくれましたね?」
天馬さんがわたしを見て不思議そうに尋ねる。
「……なにか?」
わたしは尋ね返す。
「いえ、あまり気乗りしていない御様子なので……」
「そりゃあ、日曜日に学校に呼び出されれば誰だってね……」
わたしは周囲を見回す。そうだ、今日は日曜日なのである。
「ふむ……」
ふむ……じゃないって。
「……」
わたしは天馬さんに対して抗議の意味を込めて目を細める。
「しかし……」
「え?」
「何故来てくれたのですか?」
「連絡を無視して、家で爆睡してやろうかとも思いましたよ……」
「ええ、そういう選択肢を取ることだって出来たはずです……ですが、貴女はこうしてここにいる……あらためて……何故ですか?」
天馬さんは小首を傾げる。
「答えは簡単です……」
「ほう、伺いましょう」
「……来なかったら来なかったで面倒くさいことになりそうだったので……」
「!」
「……違いますか?」
「ふっ、ふふふっ……そうですね、その考え方は当たらずも遠からずです」
どっちなんだよ。わたしは目を閉じるくらいの勢いでさらに目を細める。
「………」
「まあ、来て頂いて良かったです。貴女に来てもらわないと、ぼくたち五人だけがここに取り残されるようなかたちになっていましたからね」
そちらの方が人数多いのだから、取り残されるのはおかしいでしょう。
「いやいや、野郎だけで親睦を深めるってのもなあ~」
ブレムさんは肩をすくめる。あなたは親睦からもっとも縁遠い人だろう。
「私はそれでも一向に構わないが?」
功人さんが大げさに両手を広げる。それならば今からでもわたしはお暇致しますが?
「いやいや、サイレンスも来てもらって意思の疎通を深めた方が良いよ」
ノリタカさん、わたしとあなたにしか通じないコードネームを挙げたら、意思の疎通もなにもあったものではありません。説得力に著しく欠けます。
「……なるほど、一理あるな……」
いや、なにがなるほどなんですか、ジャッキーさん。深々と頷いても、ここには何の理もありませんよ。
「えっと……」
「ああ、何故ぼくたちが顔を揃えているのかが気になるということですよね?」
「ええ、まあ……」
わたしは天馬さんの問いに頷く。果てしなくどうでもいいと言えばそうなのだが、一応知っておいた方がいいことではあるだろう。
「それは……ん?」
「おっと……?」
「むっ……?」
「うん……?」
「こいつは?」
わたし以外の五人がハッとした表情になる。置いてけぼりにしないでくれ。
「妖です、祓いましょう」
「ヴィランだ、共に戦おう」
「モンスターだ、討伐と参ろう」
「エイリアンだ、迎撃しよう」
「悪魔だ、退治しようぜ!」
「え、え、え、え、え~~⁉」
わたしは素っ頓狂な声を上げてしまう。日曜出勤だなんてそんなの聞いていない。前言を撤回する。どうぞ置いてけぼりにしてくれ。
「ああ……」
わたしはそう言って、怪しげに微笑む天馬さんに軽く頭を下げる。
「来てくれてありがとう!」
「はい……」
わたしは光る白い歯をこれでもかと見せつけてくる功人さんに応える。
「こうして日を置かずに逢えたことを嬉しく思う……」
「はあ……」
わたしはやや感激している様子のジャッキーさんに対して生返事をする。
「やあ、元気していたかい?」
「ええ……」
わたしは今にもハイタッチしてきそうな勢いのノリタカさんを軽くあしらう。
「オイラと会えなくて寂しかっただろう?」
「いえ……!」
わたしは訳の分からないことをほざくブレムさんにはっきりとNOを突き付ける。
「なんだよ、オイラにだけ当たりが強いな……気のせいか?」
「気のせいではありません」
「え?」
「大体、金曜日に会ったばかりでたった一日しか空いてないじゃないですか、寂しいという感情の芽生えようがありません」
「お、おう……」
淡々と告げるわたしの言葉にブレムさんは面食らう。
「ミス静香、土曜日はゆっくり出来たかい?」
功人さんが目から星が出てきそうな勢いでウインクしてくる。
「……皆さんからの……特にあなたからの連絡さえ無ければ、それは素敵なサタデーナイトフィーバーでしたよ……」
「はははっ、こいつは傑作なジャパニーズジョークだ」
「ジョークではありません……」
わたしは高笑いをする功人さんに冷ややかな視線を向ける。
「我からの連絡がきちんと届いたのだな、良かった。情報端末というものを使うのは初めてでな、大鷹に文を届けさせようかと思ったが思い留まったぞ」
「思い留まっていただけたのは賢明なご判断でした」
わたしはジャッキーさんに告げる。土曜夜の閑静な住宅街を大鷹が飛んだら大騒ぎだ。
「しかし……よく暗号文が読めたな?」
「何故あれが迷惑メールに分類されなかったのかが不思議です……」
わたしはノリタカさんに向かって首を傾げる。
「まあ、念の為にRANEにも暗号なしの文を送ったけどな」
「セキュリティーの意味が無いじゃないですか……」
「それもそうか。それならば、もっとレベルを上げた暗号文を送るか?」
「いいえ、結構です……!」
わたしは心底ウンザリした返事を返す。
「……本当によく来てくれましたね?」
天馬さんがわたしを見て不思議そうに尋ねる。
「……なにか?」
わたしは尋ね返す。
「いえ、あまり気乗りしていない御様子なので……」
「そりゃあ、日曜日に学校に呼び出されれば誰だってね……」
わたしは周囲を見回す。そうだ、今日は日曜日なのである。
「ふむ……」
ふむ……じゃないって。
「……」
わたしは天馬さんに対して抗議の意味を込めて目を細める。
「しかし……」
「え?」
「何故来てくれたのですか?」
「連絡を無視して、家で爆睡してやろうかとも思いましたよ……」
「ええ、そういう選択肢を取ることだって出来たはずです……ですが、貴女はこうしてここにいる……あらためて……何故ですか?」
天馬さんは小首を傾げる。
「答えは簡単です……」
「ほう、伺いましょう」
「……来なかったら来なかったで面倒くさいことになりそうだったので……」
「!」
「……違いますか?」
「ふっ、ふふふっ……そうですね、その考え方は当たらずも遠からずです」
どっちなんだよ。わたしは目を閉じるくらいの勢いでさらに目を細める。
「………」
「まあ、来て頂いて良かったです。貴女に来てもらわないと、ぼくたち五人だけがここに取り残されるようなかたちになっていましたからね」
そちらの方が人数多いのだから、取り残されるのはおかしいでしょう。
「いやいや、野郎だけで親睦を深めるってのもなあ~」
ブレムさんは肩をすくめる。あなたは親睦からもっとも縁遠い人だろう。
「私はそれでも一向に構わないが?」
功人さんが大げさに両手を広げる。それならば今からでもわたしはお暇致しますが?
「いやいや、サイレンスも来てもらって意思の疎通を深めた方が良いよ」
ノリタカさん、わたしとあなたにしか通じないコードネームを挙げたら、意思の疎通もなにもあったものではありません。説得力に著しく欠けます。
「……なるほど、一理あるな……」
いや、なにがなるほどなんですか、ジャッキーさん。深々と頷いても、ここには何の理もありませんよ。
「えっと……」
「ああ、何故ぼくたちが顔を揃えているのかが気になるということですよね?」
「ええ、まあ……」
わたしは天馬さんの問いに頷く。果てしなくどうでもいいと言えばそうなのだが、一応知っておいた方がいいことではあるだろう。
「それは……ん?」
「おっと……?」
「むっ……?」
「うん……?」
「こいつは?」
わたし以外の五人がハッとした表情になる。置いてけぼりにしないでくれ。
「妖です、祓いましょう」
「ヴィランだ、共に戦おう」
「モンスターだ、討伐と参ろう」
「エイリアンだ、迎撃しよう」
「悪魔だ、退治しようぜ!」
「え、え、え、え、え~~⁉」
わたしは素っ頓狂な声を上げてしまう。日曜出勤だなんてそんなの聞いていない。前言を撤回する。どうぞ置いてけぼりにしてくれ。
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