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第1笑
3本目(2)勝負強さ
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「ああ、こいつは失礼、いい体だと思って……」
「誤解を招くような言い方!」
手を離した江田に笑美が突っ込む。
「良い筋肉の付き方だとおもったっす」
「ああ、そうですか……」
「よく飲むプロテインはなんすか?」
「飲んでいる前提の質問!」
「参考までに聞いておきたいと思ったっす」
「飲んでませんよ、一口も」
「ええっ⁉」
江田が後ずさりをする。
「えっ、そんなに驚くこと⁉ いつの間にか女子高生の間でプロテインがバズっている世界線にでも迷い込んだん、ウチは⁉」
「しかし、その腕の筋肉は一朝一夕では身に付かないものっす……」
江田があらためてマジマジと笑美の腕を見る。
「あ、あんまりジロジロ見んといてもらえます?」
「笑美さんはお笑いのプロを目指していたんです」
「プロ!」
司の言葉に江田は目を丸くする。笑美が訂正する。
「あ、あくまで目指していただけですよ……」
「その道では結構有名なコンビだったんです」
「ま、まあ、自分ではよく分からんけども……」
笑美が後頭部をポリポリとかく。江田が尋ねる。
「関西弁ということは、この辺の出身ではないっすよね?」
「ええ、笑美さんは大阪で活動されていました」
「! 大阪の活躍がこの瀬戸内海まで届くとは……」
「いやいや、この情報化社会ならそう珍しいことでは……」
笑美が手を振りながら謙遜する。
「野球部っぽく言えば、『プロ注』ってやつです」
「! プ、プロが注目するほどの逸材……」
「逸材って、そんな大げさな……」
笑美が苦笑を浮かべる。
「あのスピード、腕の筋肉……プロの目に留まる人はやっぱり並大抵の鍛え方、努力はしていないってことっすね……」
「自分ではよう分かりませんけど……」
笑美が首を捻る。
「よおっし!」
「⁉」
「大いに刺激を受けたっす!」
「そ、そうですか……」
「筋トレを再開するっす!」
「だからよそでやって下さい!」
「! そ、そんな……」
江田がショックを受ける。司が口を開く。
「笑美さん、それはあまりに酷では……」
「こっちが悪いみたいに言うな!」
「しかし……」
「しかしもかかしもあるか! よく考えてみいや、ここはお笑いサークルの部室や! なんで筋トレをしとんねんっちゅう話や!」
「……百歩譲ってそうだとしましょう」
「譲る以前の話やねん!」
「……ちょっと良いかな?」
「あ、屋代先輩!」
部屋の片隅の机に座っていた屋代が口を開く。笑美が目を細める。
「い、いつの間に……」
「勉強しに来たんだ」
「屋代先輩もうっとうしいでしょう⁉ 勉強している横で筋トレされたら!」
屋代が眼鏡の縁を抑えながら話し始める。
「そもそもとして、ここは部室である前に教室だ……」
「はい?」
「教室というものは学生に使用する権利、出入りする自由がある……」
「は、はあ……」
「よって、この筋肉達磨……」
「なんちゅうあだ名や」
「もとい、江田健仁にもこの教室に出入りする自由がある……ということだ」
「そ、そうですかね⁉」
笑美が首を傾げる。
「しかも、江田もこのサークル、『セトワラ』の一員だ、ここにいても何ら問題はない」
「筋トレは問題あるかと思いますけど⁉」
「適度な運動は脳の活性化に繋がる……」
「ええ……」
「よって、彼は笑いの筋トレをしているということになる!」
「ならへんでしょう!」
「ふむ、筋が通っている……」
「どこがや、無茶苦茶やろ!」
頷く司に笑美はツッコミを入れる。
「……自分は1年の時から、エースで四番を任されてきたっす……」
「今度はこっちが語り出したよ⁉」
笑美が江田の方を見る。
「しかし、いつも肝心なところで結果が出せなかったっす。ここぞというところで打たれたり、打てなかったり……」
「ま、まあ、そういうこともあるでしょう……」
「そこで自分なりに分析をしてみた結果……」
「結果?」
「自分にはここ一番での集中力と勝負に対する度胸が足りないという結論に至ったっす!」
「そ、そうですか……」
「ここなら、その欠点を克服出来ると思ったっす!」
「ん? ここなら?」
「そうっす! この『セトワラ』なら!」
江田が力強く頷く。
「も、もしかしてやけど……司君?」
笑美が司を見る。司が頷く。
「はい、今度のネタライブ、笑美さんと江田先輩に出てもらおうと思いまして……」
「マ、マジか……」
「不束者ですが、よろしくお願いするっす!」
「え、ええ……」
勢いよく頭を下げてくる江田に対し、笑美が露骨に顔をしかめる。
「僕からもお願いします!」
司も頭を下げる。屋代が口を開く。
「この分厚い胸板……ツッコミの入れ甲斐があると思うが?」
「ちょっと黙っといてください……」
「もうこれ以上悔し涙は流したくないっす!」
「!」
「ここ一番での勝負強さを得て、最後の夏は笑いたいっす!」
「笑いたい……涙は流したくないか……」
「笑美さん?」
「……よっしゃ、ウチで良かったら協力させてもらいます!」
笑美が笑顔で頷く。
「誤解を招くような言い方!」
手を離した江田に笑美が突っ込む。
「良い筋肉の付き方だとおもったっす」
「ああ、そうですか……」
「よく飲むプロテインはなんすか?」
「飲んでいる前提の質問!」
「参考までに聞いておきたいと思ったっす」
「飲んでませんよ、一口も」
「ええっ⁉」
江田が後ずさりをする。
「えっ、そんなに驚くこと⁉ いつの間にか女子高生の間でプロテインがバズっている世界線にでも迷い込んだん、ウチは⁉」
「しかし、その腕の筋肉は一朝一夕では身に付かないものっす……」
江田があらためてマジマジと笑美の腕を見る。
「あ、あんまりジロジロ見んといてもらえます?」
「笑美さんはお笑いのプロを目指していたんです」
「プロ!」
司の言葉に江田は目を丸くする。笑美が訂正する。
「あ、あくまで目指していただけですよ……」
「その道では結構有名なコンビだったんです」
「ま、まあ、自分ではよく分からんけども……」
笑美が後頭部をポリポリとかく。江田が尋ねる。
「関西弁ということは、この辺の出身ではないっすよね?」
「ええ、笑美さんは大阪で活動されていました」
「! 大阪の活躍がこの瀬戸内海まで届くとは……」
「いやいや、この情報化社会ならそう珍しいことでは……」
笑美が手を振りながら謙遜する。
「野球部っぽく言えば、『プロ注』ってやつです」
「! プ、プロが注目するほどの逸材……」
「逸材って、そんな大げさな……」
笑美が苦笑を浮かべる。
「あのスピード、腕の筋肉……プロの目に留まる人はやっぱり並大抵の鍛え方、努力はしていないってことっすね……」
「自分ではよう分かりませんけど……」
笑美が首を捻る。
「よおっし!」
「⁉」
「大いに刺激を受けたっす!」
「そ、そうですか……」
「筋トレを再開するっす!」
「だからよそでやって下さい!」
「! そ、そんな……」
江田がショックを受ける。司が口を開く。
「笑美さん、それはあまりに酷では……」
「こっちが悪いみたいに言うな!」
「しかし……」
「しかしもかかしもあるか! よく考えてみいや、ここはお笑いサークルの部室や! なんで筋トレをしとんねんっちゅう話や!」
「……百歩譲ってそうだとしましょう」
「譲る以前の話やねん!」
「……ちょっと良いかな?」
「あ、屋代先輩!」
部屋の片隅の机に座っていた屋代が口を開く。笑美が目を細める。
「い、いつの間に……」
「勉強しに来たんだ」
「屋代先輩もうっとうしいでしょう⁉ 勉強している横で筋トレされたら!」
屋代が眼鏡の縁を抑えながら話し始める。
「そもそもとして、ここは部室である前に教室だ……」
「はい?」
「教室というものは学生に使用する権利、出入りする自由がある……」
「は、はあ……」
「よって、この筋肉達磨……」
「なんちゅうあだ名や」
「もとい、江田健仁にもこの教室に出入りする自由がある……ということだ」
「そ、そうですかね⁉」
笑美が首を傾げる。
「しかも、江田もこのサークル、『セトワラ』の一員だ、ここにいても何ら問題はない」
「筋トレは問題あるかと思いますけど⁉」
「適度な運動は脳の活性化に繋がる……」
「ええ……」
「よって、彼は笑いの筋トレをしているということになる!」
「ならへんでしょう!」
「ふむ、筋が通っている……」
「どこがや、無茶苦茶やろ!」
頷く司に笑美はツッコミを入れる。
「……自分は1年の時から、エースで四番を任されてきたっす……」
「今度はこっちが語り出したよ⁉」
笑美が江田の方を見る。
「しかし、いつも肝心なところで結果が出せなかったっす。ここぞというところで打たれたり、打てなかったり……」
「ま、まあ、そういうこともあるでしょう……」
「そこで自分なりに分析をしてみた結果……」
「結果?」
「自分にはここ一番での集中力と勝負に対する度胸が足りないという結論に至ったっす!」
「そ、そうですか……」
「ここなら、その欠点を克服出来ると思ったっす!」
「ん? ここなら?」
「そうっす! この『セトワラ』なら!」
江田が力強く頷く。
「も、もしかしてやけど……司君?」
笑美が司を見る。司が頷く。
「はい、今度のネタライブ、笑美さんと江田先輩に出てもらおうと思いまして……」
「マ、マジか……」
「不束者ですが、よろしくお願いするっす!」
「え、ええ……」
勢いよく頭を下げてくる江田に対し、笑美が露骨に顔をしかめる。
「僕からもお願いします!」
司も頭を下げる。屋代が口を開く。
「この分厚い胸板……ツッコミの入れ甲斐があると思うが?」
「ちょっと黙っといてください……」
「もうこれ以上悔し涙は流したくないっす!」
「!」
「ここ一番での勝負強さを得て、最後の夏は笑いたいっす!」
「笑いたい……涙は流したくないか……」
「笑美さん?」
「……よっしゃ、ウチで良かったら協力させてもらいます!」
笑美が笑顔で頷く。
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