【第一章完結】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!

阿弥陀乃トンマージ

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第1笑

3本目(3)ネタ『マネージャーと先輩』

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「はい、どーも~2年の凸込笑美で~す」

「3年の江田健仁っす!」

「『セトワラ』、今回はこの二人でお届けします、よろしくお願いしま~す」

「お願いします!」

 借りた講堂内に拍手が起こる。ひと呼吸おいてから江田が話し出す。

「マネージャーと先輩の関係に憧れるっす!」

「な、なんや、急に⁉ ビックリした」

「……憧れているっす」

「ああ、任せて、ウチそういうのいっちゃん得意やねん」

「やってくれるっすか?」

「ええよ」

 江田が少し後退して、小走りでステージ中央に戻ってくる。

「先輩、お疲れ様っす!」

「あ! ウチがマネージャーじゃないんや⁉」

「……何がっすか?」

「いやいやごめん、ちょっと面食らって……続けて」

「先輩お疲れ様っす! これ手作りのレモンジュースっす!」

「ああ、ありがとう……手作り?」

 江田が袖をまくって力こぶをつくる。

「レモンを握り潰して作りました!」

「握力エグいな!」

「気持ちを込めたいなと思って……」

「気持ちを込めたとてよ……」

「先輩!」

 江田が気を付けの姿勢をとる。

「おっ、なんやあらたまって?」

「今年こそ全日本カバディ選手権出場目指して頑張って下さい!」

「え⁉ ウチ、カバディ部なん⁉ 女子カバディって、マイナー過ぎひん? ラクロスとかじゃないの?」

「先輩のあの試合を見て、素敵だなと思って……」

「ああ、マネージャーになるきっかけの試合かな?」

「レイダーとしてキャントしながら、アンティにストラグルしたあの瞬間、痺れました!」

「何々⁉ なんて?」

 笑美が戸惑う。

「え?」

「も、もう一回言ってくれる?」

「レイダーとしてキャントしながら、アンティにストラグルしたあの瞬間、痺れました!」

 江田が早口でまくしたてる。

「なんで二回目ちょっと早口になんねん! 分からんねん!」

「あの時のストラグル……最高だったっす!」

「ストラグルした覚えがないのよ……」

「七人のアンティに囲まれて……」

「アンティって人なん⁉」

「はい」

「ちょっと待ってね、一つずつ確認させてくれる?」

「良いっすよ!」

 江田が右手の親指をサムズアップさせる。

「えらい気持ちのいい返事やな。えっと、カバディってあれよね? 確かインドの国民的スポーツよね?」

「違います!」

「え?」

「カバディは格闘技っす!」

「ガチ勢やった! めんどくさいな!」

「訂正してください!」

「ごめん、ごめん、『カバディ、カバディ、カバディ……』って連呼する格闘技よね?」

「ああ、キャントですね」

「キャント出た! キャントは声出すって意味なんかな?」

「レイダーがキャントします」

「ああ、ってことはレイダーも人なんやな、だんだんと分かってきたぞ……ちょっともう一回、ゆっくり確認させてもらってええかな?」

「う~ん……良いっすよ!」

「ちょっと溜めてからの良い返事!」

「まずレイダーが……」

「人がね」

「キャントして……」

「声出して」

「アンティに囲まれながらも……」

「あ、相手のことやな」

「ストラグルします!」

「あ~ストラグルが残っていたか!」

 笑美が頭を抱える。

「先輩!」

「なんや?」

「あの時のストラグル、もう一度見たいっす!」

 江田が胸の前で両手を組む。

「まず、ストラグルを教えて⁉」

「ストラグル、ストラグル……」

「ストラグルコール始まった!」

「ストラグル、ストラグル、ストラグル……」

「いよいよもって意味分からん!」

「……ストラグルしないんすか?」

「あ、ああ……」

「先輩もしかして……」

 江田が口元を抑える。

「うん?」

「ストラグル恐怖症に⁉」

「トラウマ抱えることなの⁉」

「あの時のアンティは確かにすごかったっす……」

「相手ね、強かったんかな?」

「でも、先輩!」

「うん⁉」

「諦めないで下さい! 一度の失敗で自信を失うなんて、先輩らしくないっすよ!」

「なんか励ましてくれてる……それっぽくはなってきたな!」

「もう一度私のハートにストラグルして下さい!」

「おおっと、これは大ヒントや!」

「お願い、ストラグル、ストラグル、ここにストラグル♪」

「! あ~分かった、皆まで言うな……」

「あなたから~♪」

「もうええって!」

「ストラグル!」

「語呂悪いな! タッチでしょ⁉ ストラグルはタッチのこと!」

「キャッチング!」

 江田が笑美の腕を突然掴む。

「えっ何⁉ 怖っ……」

「ストラグル、失敗です。よって……ローナです」

「新しい用語出てきた! もうええわ!」

「「どうも、ありがとうございました!」」

 笑美と江田がステージ中央で揃って頭を下げる。
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