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第1笑
12本目(3)ネタ『世界平和』
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「はい、どーも~凸込笑美で~す」
「ほ、細羽司です!」
「はい、『セトワラ』、今回はこの二人でお届けします、よろしくお願いします~!」
「お願いします!」
会場中に拍手が起こる。拍手が鳴り止んでから二人の右側に立つ笑美が軽く頭を下げる。
「え~たくさんの拍手ね、ありがとうございます……」
「『お笑いで世界を平和にしたい!』」
司が大声で叫ぶ。笑美が戸惑う。
「おお、いきなりどないしたん?」
「ついでにもう一個、いいですか?」
「あ、ああ……」
「『可愛い女の子とお付き合いしたい!』」
司がさきほどよりも大声で叫ぶ。笑美がさらに戸惑う。
「え、ええ?」
「すみません……ついつい平和への熱い思いが出てしまいました……」
「いや、平和より私欲が強いな!」
「僕は常々考えているんですよ、世界平和について」
「嘘やん! 女の子がどうとか言うてたやん!」
「常々は言い過ぎました。時々です」
「頻度が極端に下がったな!」
「まあ、とにかくですね、そういうことを言うと、『意識高いね~』とか言われるんですよ」
「ああ、人のことを馬鹿にしてくるような奴は放っておいたらええんですよ」
「そうですか?」
「そうや、アーティストも言うてるやん、『音楽で世界を平和に!』『ラブ&ピース!』って」
司が鼻で笑う。
「……どだい、無理な話なのにね」
「馬鹿にすんなや!」
「え?」
「え?ちゃうねん、言ってるそばからディスんなや」
「ああ、はい……」
「頼むでホンマ……」
「とにかくですね、お笑いで世界を平和にしたいんです!」
「ふむ……」
「日本のお笑いにはそれだけのポテンシャルがあると思うんですよ 特に漫才には!」
「漫才が?」
「ええ、世界を見渡してみても、こういう形式の話芸は珍しいみたいですし……」
「ああ、そんな話は聞いたことあるな……」
笑美が頷く。
「僕は『漫才』を『マンザイ』として、世界に通じる言葉として定着させたいんです!」
「お、大きく出たな……」
「ゆくゆくは『ヘンタイ』と並び立つほどに……」
「何と並んでんねん! 『サムライ』とか『マンガ』とかと並び立てや!」
「ああ、そっちもありますね……」
「そうやがな……『ヘンタイ』って定着してんの⁉」
一度目線を外した笑美が驚いて司の顔を見る。
「はい、一部の界隈ですけど……」
「い、嫌やなそれ……」
「とにかく、漫才で世界に打って出たいんです!」
「う~ん……」
笑美が腕を組む。司が尋ねる。
「駄目ですかね?」
「駄目ってことはないけど、まず理解出来るんかな?」
「理解出来るかとは?」
「『ボケ』と『ツッコミ』の違いとかさ……」
「ああ、『ヴォケ&トゥクォミー』とか言えば……」
「発音の問題ちゃうねん! 役割のことを言うてんねん!」
「役割ですか」
「そうや」
「片方が間違った言動をして、もう片方がその間違いを正すんですよね……」
「大体そんな感じやな」
「つまりは僕がヴィランで、笑美さんがヒーローということですね」
「アメコミ映画の構図にせんでもええやろ!」
「じゃあ、今度からはピッチピッチの全身タイツを着てもらって……」
「どんな羞恥プレイやねん!」
「デ〇ズニ―の海賊版を作る奴らと、それを取り締まるディ〇ニーの戦いみたいな……」
「ウチらが取り締まられるわ!」
「ここは思い切って、ボケとツッコミの概念を変えても良いかもしれませんね……」
司が腕を組んで呟く。
「え? どういうこと?」
笑美が首を傾げる。
「寿司がステイツに渡ってカリフォルニアロールを生み出したみたいなことです」
「あ、ああ……」
「世界に打って出るには、そういう柔軟性も求められると思うんですよ」
「例えば? ダブルボケみたいなんは日本にも既にあるで?」
「『ゼン&ツッコミ』……雑念が混じると、肩をビシっと叩かれるんです」
「ただの座禅やろ! 修学旅行やないか!」
「日本文化と言えば禅みたいなところあるじゃないですか、ステイツでは」
「いや、アカンやろ」
「『ボケ&ニンジャ』……ボケると、なにもない壁が回転してニンジャが現れるんです」
「お客さんの目が全部そっちに行ってまうやろ!」
「ニンジャは鉄板かなって、ステイツでは」
「アカンって」
「『テリヤキ&スキヤキ』」
「ボケとツッコミは⁉ それはそれでコンビっぽいけど!」
「ステイツでは両方馴染みありますよ」
「……アメリカのことステイツって言うなや! 腹立つな!」
「ああ、これは失敬、ついつい癖が……」
「自分、バリバリの瀬戸内海育ちやろ!」
「『サイモン&ガーファンクル』」
「コンドルが飛んでいきそうやな! 音楽で世界を変えられそう!」
「『リロ&ステ〇ッチ』」
「〇ィズニ―飛んでくるから止めて⁉」
「『ビーフオアチキン』」
「フィッシュプリーズ!」
「『デッドオアアライブ』」
「西部劇みたいになってる!」
「『キングコングⅤSゴジラ』」
「戦うな! &はどこ行ったんや!」
「漫才ってある種戦いみたいなもんじゃないですか」
「やかましいな! 平和にしたいんやろ⁉ 『ラブ&ピース』の精神やろ!」
「『ラブ&ピース』ならぬ『ラフ&ピース』……これだ、これですよ!」
「……どうすんねん?」
「笑っている僕の鼻の穴にピースした指を突っ込んで下さい」
「な、なんでそんなことせなアカンねん!」
「はははっ! さあ、早くツッコんで下さい! あはははっ!」
「立派なヘンタイになっとるやないか! もうええわ!」
「「どうも、ありがとうございました!」」
笑美と司がステージ中央で揃って頭を下げる。
「ほ、細羽司です!」
「はい、『セトワラ』、今回はこの二人でお届けします、よろしくお願いします~!」
「お願いします!」
会場中に拍手が起こる。拍手が鳴り止んでから二人の右側に立つ笑美が軽く頭を下げる。
「え~たくさんの拍手ね、ありがとうございます……」
「『お笑いで世界を平和にしたい!』」
司が大声で叫ぶ。笑美が戸惑う。
「おお、いきなりどないしたん?」
「ついでにもう一個、いいですか?」
「あ、ああ……」
「『可愛い女の子とお付き合いしたい!』」
司がさきほどよりも大声で叫ぶ。笑美がさらに戸惑う。
「え、ええ?」
「すみません……ついつい平和への熱い思いが出てしまいました……」
「いや、平和より私欲が強いな!」
「僕は常々考えているんですよ、世界平和について」
「嘘やん! 女の子がどうとか言うてたやん!」
「常々は言い過ぎました。時々です」
「頻度が極端に下がったな!」
「まあ、とにかくですね、そういうことを言うと、『意識高いね~』とか言われるんですよ」
「ああ、人のことを馬鹿にしてくるような奴は放っておいたらええんですよ」
「そうですか?」
「そうや、アーティストも言うてるやん、『音楽で世界を平和に!』『ラブ&ピース!』って」
司が鼻で笑う。
「……どだい、無理な話なのにね」
「馬鹿にすんなや!」
「え?」
「え?ちゃうねん、言ってるそばからディスんなや」
「ああ、はい……」
「頼むでホンマ……」
「とにかくですね、お笑いで世界を平和にしたいんです!」
「ふむ……」
「日本のお笑いにはそれだけのポテンシャルがあると思うんですよ 特に漫才には!」
「漫才が?」
「ええ、世界を見渡してみても、こういう形式の話芸は珍しいみたいですし……」
「ああ、そんな話は聞いたことあるな……」
笑美が頷く。
「僕は『漫才』を『マンザイ』として、世界に通じる言葉として定着させたいんです!」
「お、大きく出たな……」
「ゆくゆくは『ヘンタイ』と並び立つほどに……」
「何と並んでんねん! 『サムライ』とか『マンガ』とかと並び立てや!」
「ああ、そっちもありますね……」
「そうやがな……『ヘンタイ』って定着してんの⁉」
一度目線を外した笑美が驚いて司の顔を見る。
「はい、一部の界隈ですけど……」
「い、嫌やなそれ……」
「とにかく、漫才で世界に打って出たいんです!」
「う~ん……」
笑美が腕を組む。司が尋ねる。
「駄目ですかね?」
「駄目ってことはないけど、まず理解出来るんかな?」
「理解出来るかとは?」
「『ボケ』と『ツッコミ』の違いとかさ……」
「ああ、『ヴォケ&トゥクォミー』とか言えば……」
「発音の問題ちゃうねん! 役割のことを言うてんねん!」
「役割ですか」
「そうや」
「片方が間違った言動をして、もう片方がその間違いを正すんですよね……」
「大体そんな感じやな」
「つまりは僕がヴィランで、笑美さんがヒーローということですね」
「アメコミ映画の構図にせんでもええやろ!」
「じゃあ、今度からはピッチピッチの全身タイツを着てもらって……」
「どんな羞恥プレイやねん!」
「デ〇ズニ―の海賊版を作る奴らと、それを取り締まるディ〇ニーの戦いみたいな……」
「ウチらが取り締まられるわ!」
「ここは思い切って、ボケとツッコミの概念を変えても良いかもしれませんね……」
司が腕を組んで呟く。
「え? どういうこと?」
笑美が首を傾げる。
「寿司がステイツに渡ってカリフォルニアロールを生み出したみたいなことです」
「あ、ああ……」
「世界に打って出るには、そういう柔軟性も求められると思うんですよ」
「例えば? ダブルボケみたいなんは日本にも既にあるで?」
「『ゼン&ツッコミ』……雑念が混じると、肩をビシっと叩かれるんです」
「ただの座禅やろ! 修学旅行やないか!」
「日本文化と言えば禅みたいなところあるじゃないですか、ステイツでは」
「いや、アカンやろ」
「『ボケ&ニンジャ』……ボケると、なにもない壁が回転してニンジャが現れるんです」
「お客さんの目が全部そっちに行ってまうやろ!」
「ニンジャは鉄板かなって、ステイツでは」
「アカンって」
「『テリヤキ&スキヤキ』」
「ボケとツッコミは⁉ それはそれでコンビっぽいけど!」
「ステイツでは両方馴染みありますよ」
「……アメリカのことステイツって言うなや! 腹立つな!」
「ああ、これは失敬、ついつい癖が……」
「自分、バリバリの瀬戸内海育ちやろ!」
「『サイモン&ガーファンクル』」
「コンドルが飛んでいきそうやな! 音楽で世界を変えられそう!」
「『リロ&ステ〇ッチ』」
「〇ィズニ―飛んでくるから止めて⁉」
「『ビーフオアチキン』」
「フィッシュプリーズ!」
「『デッドオアアライブ』」
「西部劇みたいになってる!」
「『キングコングⅤSゴジラ』」
「戦うな! &はどこ行ったんや!」
「漫才ってある種戦いみたいなもんじゃないですか」
「やかましいな! 平和にしたいんやろ⁉ 『ラブ&ピース』の精神やろ!」
「『ラブ&ピース』ならぬ『ラフ&ピース』……これだ、これですよ!」
「……どうすんねん?」
「笑っている僕の鼻の穴にピースした指を突っ込んで下さい」
「な、なんでそんなことせなアカンねん!」
「はははっ! さあ、早くツッコんで下さい! あはははっ!」
「立派なヘンタイになっとるやないか! もうええわ!」
「「どうも、ありがとうございました!」」
笑美と司がステージ中央で揃って頭を下げる。
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