【第一章完結】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
49 / 50
第1笑

12本目(4)結果発表

しおりを挟む
「お、お疲れ様でした!」

 控室に戻ってきた司が笑美に頭を下げる。

「ああ、お疲れ様……」

 笑美が応え、椅子に座る。

「はあ……み、水……ぷはあっ!」

 司も笑美と机を挟んだ席に座り、水を飲んでぐったりとなる。

「ふっ、大分お疲れの様やな……」

 笑美が司を見て笑う。

「そ、それは疲れますよ……」

「説明会でもやったやんか」

「だ、だから、あの時とは比べ物になりませんよ!」

「そうか?」

 飲み物を一口含んだ笑美が首を傾げる。

「そうですよ! 会場の大きさもそうですし……雰囲気がもう、全然違います!」

「雰囲気ね……」

「ええ、もうこの決勝に懸ける!っていう雰囲気が他の出場者の方からビシビシと伝わってきて……さらに……」

「さらに?」

「客席ですよ! もう一挙手一投足を見逃さんばかりに見つめてくるじゃないですか! 刺さるような視線っていうのを初めて体感しましたよ!」

「一挙手一投足って、野球選手やないんから」

「おかしいですか?」

「うん。投はおかしいやろ」

「え? 言葉のキャッチボールをしたじゃないですか」

「何を上手いこと言うてんねん。でも……」

「はい?」

「わりと余裕あるやんか」

 笑美が手に持っていたペットボトルを司に向ける。

「え?」

「大体は緊張でガチガチになってもうて、お客さんのことを気にする余裕なんてほとんどなくなるもんやで」

「そ、そういうものですか?」

「そういうもんや、まあ、逆に視線を意識し過ぎてもうてアカンことになるパターンもあるっちゃあるけど……」

「あれです、お客さんをカボチャだと思いました」

「そこはジャガイモとかやろ、なんでカボチャやねん」

「夢の時間が解けてしまわないように……」

「シンデレラか、なにをロマンチックなこと言うとんねん」

「あ~でも、不思議と客席の様子はよく見えましたね……」

「へ~」

「案外……大物かもしれませんね」

「自分で言うな」

 司が苦笑する。

「いやいや……良い意味で開き直ったのが良かったかもしれません」

「開き直った?」

「ええ、ネタを決めたのが直前だったじゃないですか」

「そうやな」

「結局、学校で一回、会場に移動中に一回、そこの廊下で一回……計三回しかネタ合わせ出来なかったじゃないですか」

「移動中も廊下もなんやかんやでバタバタしとったから……実質一回やな」

「ぶっかけそうめんだったじゃないですか」

「ぶっつけ本番やろ。なんやツルツルしとるやないか」

「とにかくもう、ええい、しょうがない!って思ったっていうか……」

「極端な話、トチらんかったらそれでエエわって感じ?」

「正直……そんな感じですね」

「ほうか……」

「す、すみません……」

 司が頭を下げる。笑美が手を振る。

「いや、エエよ。それがかえって良かったかもしれんな」

「よ、良かったですかね?」

 司がおそるおそる尋ねる。

「後で見返してみんことには細かいことは分からんけど……少なくとも舞台上では悪いとは思わなかったで」

「そ、そうですか……」

 司はホッと胸を撫で下ろす。

「だからといって、完璧に良かったかと言われると……」

「ええっ⁉」

 司が驚く。笑美が笑みを浮かべる。

「冗談やがな、結果はウチが決めることやないし……おっ、呼ばれたで」

「は、はい……」

 笑美と司は控室から出て、結果発表のステージに向かう。

「……優勝は、『セトワラ』!」

「!」

「おっしゃ!」

 優勝決定のアナウンスを聞いて、司は驚き、笑美は派手なガッツポーズを取る。

「セトワラのお二人、ステージ中央にどうぞ……」

 大きな拍手に包まれながら、笑美と司がステージ中央に移動する。

「……」

「……はい、それでは、お二人からコメントを頂けたらと思います。お願いします」

「はい、えっと……すみません……」

「いや、色々大変やったんですよ、他のメンバーがちょっと体調崩してしまったので、急遽この2人でネタやることになったので……」

 感極まる司を笑美がフォローする。司が鼻をすすり、前を向く。

「はい……」

「おっ、大丈夫?」

「ええ……」

「そんならリーダーからよろしく」

 笑美が促す。

「ええっと……まずは支えてくれた最愛の家族に感謝を……」

「ハリウッドセレブみたいに言うな!」

「なんて小粋なジョークを挟んじゃったりなんかしてね……」

「自分で言うてる時点で粋じゃないのよ」

「今日は残念ながら来られなかったメンバーに感謝したいです」

「ああ、それはちゃんと言うとかないとね」

「メガネの先輩、マッチョの先輩……」

「名前を言うたれ!」

「謎多き双子……」

「謎ではないやろ、同級生や!」

「メガネ2号、チャラ男1号……」

「ひどい言い草やな! チャラ男は2人もおらんし!」

「お嬢様と執事さん、外国からの留学生3人……」

「だから名前を言うたれよ」

「絶海の孤島……古びた館……そこで起こる事件とは……」

「なんのナレーションやねん!」

「冗談はさておき……メンバーの皆、審査員の方やお客さん、そしてこの大会に携わる全ての方々、応援してくれた皆さん……どうもありがとうございました!」

「おおきに!」

 司と笑美が頭を丁寧に下げる。会場を温かな拍手が包む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...