【序章完】ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
19 / 50
序章

第5話(2)声かけおじさん

しおりを挟む
「でもなんで道頓堀に? 学校に行きなさいよ」

「それが深い事情があってねえ……」

「事情?」

「癸組の子ら、不登校気味なんよね~」

「は⁉」

「落ちこぼれ扱いされすぎて、不貞腐れてるっちゅうかなんちゅうか……」

「そ、そんな……」

「まあ、街には繰り出しているみたいやから……これから個別面談やね、屋外で」

 無双が苦笑する。

「……ないじゃない」

「え?」

「あなたほどの人がそんな子たちに構うことはないじゃない! 実力に見合わない不当な扱いよ! 私から高校に抗議するわ!」

「おっとっと、その気持ちは大変ありがたいんやけど……もう決まった話やしね……」

 無双が両手を挙げてリカを落ち着かせる。

「それでいいの⁉」

「しゃあない、しゃあない……」

「しゃあないって!」

「リカちゃんが怒鳴り込んだりしたら、事態が余計ややこしくなるし……」

 無双が小声で呟く。

「なによ⁉」

「な、なんでもあらへんよ……落ち着いて……」

「これが落ち着いていられる⁉ 州の戦力または防衛に関わる由々しき問題なのよ⁉」

「それやねん」

 無双が右手の人差し指を立てる。

「え?」

「その由々しき問題を解決したいと思っていてね。まあ、わてとリカちゃんの考えている問題には食い違いがあるようやけど……」

「食い違い?」

「わては落ちこぼれも立派に育てなアカンと思うてるんや。陰陽師高校に入るということは、それなりの素質があるということ……それをむざむざとゴミ箱に捨てるような真似をしたらもったいないわ」

「一理あると思うけど……それはあなたがすることかしら? あなたはいわゆる“エリート”の更なる飛躍に手を差し伸べるべきだと思うわ」

「そういう連中は放っておいても勝手に育つよ」

「そうは言っても……」

「それに……」

 無双は何かを言いかけてやめる。

「それに……なによ?」

「いや、なんでもないわ……」

 無双は首を左右に振る。

「なんでもないってことはないでしょう」

「まあまあ、リカちゃんも忙しいんやろ、わてもそろそろ行かんと……」

 無双が立ち去ろうとする。リカが呼び止める。

「ちょっと!」

「久々に会えて良かったわ。ほなね」

「! あ……!」

 風が吹いたかと思うと、無双の姿はリカの前から消えていた。

「……」

「随分とレトロなゲームをやっているんやね」

 ある古びたビルで、旧世紀の遺物とも言える、ゲーム筐体に向かってゲームをする。金髪で短髪の少年に無双が声をかける。青年が怪訝そうな顔で無双を見る。

「おっさん、誰やねん?」

「おっさんとはご挨拶やな、気持ちはまだ十代やで?」

「そんなんどうでもええねん。学校やったら行かへんで」

「おっ、よう学校関係者って分かったね? 初対面のはずやけど」

「……烏帽子に狩衣でうろついてたら陰陽師高校やろ、それともあれか? 不審者か?」

「なかなか鋭いな……」

「馬鹿にしとんのか」

「馬鹿にはしてへんよ、君の担任になったから挨拶にね」

「担任?」

「うん、授業に出ようか」

「せやから行かへんって言うてるやろ」

「よし、このゲームに負けたら、勝った方の言うことを聞くことにしようか」

 無双が少年の真向いの席に座る。

「勝手に決めんなや」

「なんや、自信がないんか?」

「……秒で終わらせたるわ」

 数分後……。

「わての勝ちやね」

「そ、そんなアホな……」

「それじゃあ、ついてきて」

「ちっ……」

 無双は少年についてくるよう促す。続いて同じビルでエアホッケーに興ずるサラッとした黒髪で、赤いスカーフで口元を覆った少年に無双が声をかける。

「君……」

「……おやじさん、どなたですか?」

「お、おやじって……」

「学校なら行きませんよ」

「それは困るっちゅうねん。エアホッケーでわてが勝ったらついてきて。君どいてくれる?」

 無双は少年の友人をどかし、少年と向かい合う。

「何を勝手に話進めているんですか……」

「やらへんの? おやじに負けたら恥ずかしいもんな」

「! ……まあ、良いでしょう」

 それから数分後……。

「うん、わての勝ちやね」

「そ、そんな、俺の反射神経を遥かに凌駕する……?」

「じゃあ、君もついてきてね」

「くっ……」

 無双は二人の青年を連れて、隣のビルにあるカラオケボックスの個室に入る。そこにはミディアムボブの黒髪に青いメッシュを入れた少女が座っていた。

「邪魔するで~」

「邪魔すんねやったら帰って~」

「ああ、ごめん……って、そうやなくて!」

「……おじさん、誰?」

「お、おじさん……」

「学校なら行かへんよ」

「そういうわけにはいかん。カラオケの採点でわてが勝ったらついてきて」

「は?」

「自信ないん?」

「おもろいやん……」

 そして、数分後……。

「……わての勝ちやね」

「な……なんちゅう歌唱力……」

「ジュリーの再来とはわてのことやで」

「ジュリーって誰?」

「……ジェネレーションギャップやね……」

 無双は軽く頭を抑える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」 幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。 迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。 ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。 これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。 しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。 奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。 現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。 異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー 様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。 その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。 幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。 それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【百合】Liebe

南條 綾
キャラ文芸
人と一線引いた少女のお話 あの時あなたを助けた時から気になった。 あなたにあって私の景色が色が付いた

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...