【序章完】ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~

阿弥陀乃トンマージ

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序章

第6話(1)沖縄のある離島にて

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                  陸

「ふむ……情報の通りね」

 黒髪のポニーテールでTシャツとパンツルックというラフな格好の女性が金網に囲まれた古い建物の前で呟く。

「……気が済んだか?」

 アーミールックを着た茶髪で茶色い瞳をした体格の良い男性が尋ねる。女性が笑う。

「はっ、冗談でしょ?」

「これ以上はマジで危険なんだよ」

「なによ、ビビったの?」

「ああ」

「そこはビビってねえよとか言うところでしょ」

「強がってもしょうがない。そもそも……」

「そもそも?」

「沖縄本島からこの島に向かうと決めてからずっとビビっている」

「なによ、情けないわね」

「なんとでも言ってくれ」

「デカい図体をしているわりに肝っ玉が小さいのね」

「ふん……」

「ナニも小さいんでしょうね」

「おい」

 男性がムッとする。

「なによ」

「言い過ぎだろう」

「なんとでも言えって言ったでしょ」

「限度というものがあるんだよ」

「面倒くさいわね……」

 女性が苦笑しながら周囲を見回す。男性が再び尋ねる。

「なにをキョロキョロしている?」

「探しているのよ」

「なにを?」

「決まっているでしょ、入口よ」

「は? まさか入るつもりか?」

「そうよ」

「マジかよ……」

「マジよ」

「おいおい……」

「ここまで来て金網を見て満足するわけないでしょうが」

「いやいや……それは聞いてないぞ」

「今言ったわ」

「ちょっと待て……」

 男性が首を左右に振る。

「待たないわ」

「勝手にしろ。俺は降りるぞ」

「ギャラの残り半分、支払わないわよ」

「ぐっ……」

「お金、入り用なんでしょう?」

「……別で用意するさ」

「そうやって借金に借金を重ねるから首が回らなくなるのよ」

「む……」

 男性の反応を見て、女性が得意げに笑う。

「ふふっ……」

「なんで知ってやがる?」

「情報が命の商売なもので……」

「ロクな商売じゃないな」

「それはお互い様でしょ」

「ふん……」

「あなたのこと、もっと色々知っているわよ。例えば……」

「例えば?」

「……」

 女性が男性の胸を指差す。男性は首をすくめる。

「スリーサイズは非公表なんだが?」

「違うわよ、バカじゃないの」

「バカとはなんだ、バカとは」

「……あなたのハートよ」

「は? ハート?」

「そう、ハート」

 女性が頷く。男性が首を傾げる。

「……話が見えないな」

「性格って言った方が良いかしら?」

「性格?」

「困っている人を放っておけない……特に女性は」

「ああ、女にはとにかく優しくしておけって言われて育ったからな」

「良いママさんね」

「違う」

「え?」

「これはグランマの教えだ。俺は大のおばあちゃん子でね」

「ふ~ん、まあ、とにかくそういうわけよ」

「待て、どういうわけだ」

「困っている女性がいるでしょう?」

「どこに?」

「あなたの目の前に」

 女性が自分の胸を抑える。

「困っているようには見えないが……」

「絶賛お困り中よ」

「なにをお困ることがあるんだ?」

「この建物の敷地に入る方法が見つからなくて」

 女性が右手の親指を建物の方に向ける。

「……不法侵入の手助けをしろって言うのか?」

「不法ね……それもお互い様じゃない?」

「どういう意味だ?」

「とぼけなくても良いわ。ここがどういう施設だったか、あなたも分かっているでしょう?」

「いや……」

「まさかまったく何も知らないなんて言わせないわよ? 言っておくけど、あなたの素性くらいはとっくに……」

「分かった、分かった」

 男性が両手を控えめに上げる。女性が笑みを浮かべる。

「助けてくれるのね」

「ギャラの為だ」

「そういうことにしておくわ」

「それ以外はない……む」

「どうしたの?」

「あそこの金網が破れているな……あそこから忍び込める」

 男性が指差す。女性がそこに小走りで駆け寄る。

「本当だ。屈んで入れるわね……よっと」

「……」

「どうしたの? あなたもくぐれるくらいの穴よ。ついてきて」

「こんな簡単に入れて良いのか……?」

 男性は小声で呟きながら金網にあいた穴をくぐる。
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