【序章完】ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~

阿弥陀乃トンマージ

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序章

第6話(2)お母さんといっしょ

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「わりとすんなり中に入れたわね」

「む……」

 男性が周囲をキョロキョロとする。女性が尋ねる。

「どうしたの?」

「いや、この建物、電気はわずかだが生きている……」

「ということは……」

「まだ誰かが残っている……?」

「そう……」

 女性が手にしていた端末を周囲に向ける。男性が尋ねる。

「何をしている?」

「記録をしておかないと、この研究所だった場所で何が行われていたか……」

「……この暗さじゃよく分からんだろう」

「一応よ」

 女性は撮影しながら先を進む。男性が止める。

「お、おい、まだ進むのか? 誰かが残っている可能性があるんだぞ」

「好都合よ」

「好都合?」

「ええ、なんらかの手がかりを得られるかもしれないでしょ?」

「おいおいまさか接触するつもりか?」

「向こう次第では」

「そ、それは止めておいた方が良いと思うぞ」

「どうしてよ?」

「どうしてもだ」

「? まあいいわ、先に進むわよ」

「おい……!」

「ギャラ……」

 女性が左手の親指と人差し指で丸をつくる。男性がため息をつきながら後頭部を掻く。

「はあ……しょうがないな」

「分かればよろしい」

 女性が笑顔を浮かべ、先に進む。男性がそれに続く。しばらく歩くと女性がはたと立ち止まる。男性が首を傾げる。

「どうした?」

「見て」

「あれは……」

 女性が指を差す。ほぼ真っ暗なこの建物の中では明るい部類に入る明るさの部屋が突き当たりに見える。女性が呟く。

「どうやらビンゴかしら……」

「まさかとは思うが……」

「あの部屋に入るわよ」

「ちょ、ちょっと待て……!」

 男性が思わず女性の肩を掴む。

「なによ?」

「さすがにヤバいだろ、何かあったらどうする?」

「何かあったらお願いね」

 女性がウインクする。男性が戸惑う。

「お、お願いって……」

「その為にあなたを雇ったのよ。ギャラの分しっかり働いてよ」

 女性が男性の手を払いのけ、部屋に進む。男性が首を左右に振りながら続く。

「まったく……」

「……失礼しま~す」

 女性が小声で呟きながらドアを開け、部屋に入る。明るいと言っても他に比べての話である。薄暗い。女性が部屋をゆっくりと見渡す。うめき声が聞こえる。

「う……」

「うう……」

「!」

 女性が声のした方に目を向ける。金髪で水色の病衣のようなものを着た少年とピンク色のそれを着た少女が仰向けになって倒れている。女性が駆け寄る。男性が止める。

「おい、よせ……!」

「君たち、大丈夫⁉」

「う、う……」

「う、うう……」

 女性の呼びかけに反応し、少年たちがゆっくりと目を開き、女性の方に目を向ける。少年少女はそっくりな顔立ちをしている。どうやら双子のようだ。

「……」

「………」

 二人は綺麗な青い瞳で女性をしばらく見つめる。女性が戸惑い気味に再度尋ねる。

「だ、大丈夫?」

「お、お……」

「お、おお……」

「お?」

「「お母さん」」

「はっ⁉」

「へえ……結構大きいお子さんがいらっしゃるんだな」

「そんなわけないでしょ!」

 女性が男性に向かって声を上げる。男性が首をすくめる。

「冗談だよ」

「冗談を言っている場合じゃないのよ!」

「どうする?」

「……予定変更よ」

「え?」

「この子たちを連れてここから出るわ」

「冗談だろ?」

「冗談を言っている場合じゃないのよ」

「え……」

「あなたはこっちの少年をお願い。私はこの女の子を……軽いわね」

 女性が少女を抱き抱える。男性が側頭部を抑える。

「マジか?」

「マジよ」

「……よっと」

 男性が少年を持ち上げ、肩に担ぐ。

「そこまでよ」

「‼」

 艶のある黒髪をおさげにして右肩に垂らした中性的な人物が笑いながら女性たちに銃口を向ける。切れ長の目が印象的で、整った顔立ちをしている。

「その子たちを置いていってもらえるかしら?」

「誰?」

「その質問に答える必要はないわ」

「ならばあなたに従う義務もないわ」

「あらら……それなら大人しくなってもらうしかないわね」

 中性的な人物が銃の引き金に指をかける。女性が男性に対して声を荒げる。

「なんとかして!」

「ざっくりした指示だな!」

「⁉」

 男性が少年を抱えながら素早く銃を放ち、中性的な人物の銃を落とす。次の瞬間、緑色の液体まみれになった人のかたちをしたものたちが隣の部屋からなだれ込んでくる。

「こ、今度は何よ⁉」

「こ、これは……⁉」

 女性と男性が揃って驚く。
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