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序章
第7話(4)進撃開始
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「ふむ、ジェニーさんのパワードスーツは江の島の持つ力……神性を借りているんすね」
「担当からはそのような説明を受けたわ」
「思いっきり非科学的っすね! いやあ、神秘的なロマンを感じるっす!」
「白衣を着ている者が抱く感情かしら?」
目を輝かせる凛を見て、ジェニーが苦笑を浮かべる。
「ちっちっちっ……そこに探求心があればいいんすよ」
「そうなの……そういえばゆうきのパワードスーツは横須賀で開発されたのよね?」
「ああ、そうだぜ」
「どうりで、艦船の流れを汲むような作りになっているわね」
「海上ではスイスイと動けて、砲撃力は抜群、これはこれでロマンを感じるっすね~」
「おっ、分かってんな、凛!」
「なんでもロマンを感じているじゃない……」
「あっ、ジェニーさん、嫉妬すか?」
「そんなことで嫉妬しないわよ」
「凛のパワードスーツは……ありゃなんだ?」
「横浜の赤レンガ倉庫をイメージしてみたっす!」
ゆうきの問いに凛が答える。
「そ、そうか……まあ、固そうではあるな……」
「そうでしょう⁉ いや~分かってくれて嬉しいっす!」
「神奈川の各地で新型のパワードスーツの開発が進められていたわけだけど……開発コンセプトなんかはみんなバラバラね……」
「みんな違ってみんな良いじゃねえか!」
「共通の規格を持った方が良かったんじゃないかしら……」
ジェニーはゆうきの言葉を無視して、腕を組む。凛が補足する。
「どの開発が上手くいくか、蓋を開けてみないと分からなかったということもあるし、機密保持の為に、各所間での交流はゼロに近かったからしょうがないっす!」
「出たとこ勝負みたいな感じね……大丈夫かしら、我が南関東州は……」
「……皆、着いたぞ」
凡太が声をかける。荷台から降りたゆうきが伸びをする。
「う~ん、ここはどこだっけ?」
「鎌倉だよ」
「ここに新型パワードスーツの着用者がいるの?」
「ああ、最後の一人だ」
凡太がジェニーの問いに答える。凛が重ねて問う。
「古都鎌倉で新型技術の研究なんて、かなりのロマンっすね! 見当はついてるんすか?」
「ああ、だから必要以上に目立たないように来た」
「軍用ジープで観光地に乗りつけて、降りてきたのが、白い制服を着た男と、長身おかっぱと白衣パーマ……目立ってしょうがないでしょう……」
ジェニーは自らの意識高い格好は棚に上げて、小声で呟く。
「……ここだ」
凡太が建物を指し示す。ジェニーが目を丸くする。
「これは今時珍しいわね、古書店?」
「ああ、そうだ、入るぞ」
凡太を先頭に店に入る。
「いらっしゃいませ……」
店の奥に座り、茶髪のロングヘア―の美人が本を読みながら応対する。凡太が口を開く。
「『年百年中も好きと言って』」
「む!」
美人が露骨に動揺する。凡太が首を傾げる。
「おかしいな、暗号はこれで合っているはずだが……?」
「……探偵小説ならそちらの棚ですよ」
美人は本で顔を隠しながら、棚を指差す。
「いや、生憎読書をしにきたわけじゃない……⁉」
大きな揺れが起こる。凡太たちは店の外に出る。そこには『怪異化』した超巨大なクモの姿があった。怪獣映画に出てきそうなほどの大きさである。ゆうきが声を上げる。
「あ、あれはやべえぞ!」
「三人とも、頼む!」
「『島結』!」
「『艦射』!」
「『土着』!」
三人がそれぞれパワードスーツを装着する。凡太がすぐさま指示を出す。
「ゆうき、砲撃だ! 街の方に近づかせるな!」
「おう!」
「!」
砲撃を喰らって怯んだ蜘蛛だったが、口から糸を出す。
「凛! 糸を切れ!」
「了解っす!」
「‼」
凛が大小様々なレンガを投じ、重さで糸を切ることに成功する。それでも蜘蛛は前進する。
「ジェニー! 光で目を潰せ!」
「分かりましたわ!」
「⁉」
ジェニーが発した強烈な光で蜘蛛は視覚を奪われる。怒った蜘蛛は暴れ出す。
「流石にあの大きさ相手には決定打に欠けますわ!」
「貴女の出番だ!」
凡太が店の外に出てきた美人に声をかける。美人は首をぶんぶんと左右に振る。
「い、いや、私には無理ですよ! ……っていうか、恥ずかしいし!」
「愛する鎌倉がどうなっても良いんですか⁉ 星ノ条(ほしのじょう)まつりさん!」
「う、名前もバレている……ええい、こうなりゃヤケよ! 『仏化』!」
まつりと呼ばれた美人は地面に胡坐座りをして両手を組む。すると、青銅色の光がまつりを包み込み、頭と体をパワードスーツが覆う。それは小さな鎌倉の大仏さんのようであった。
「だ、大仏さん⁉」
「だから嫌なのに! なんでこんなスーツデザインなの⁉ 一気に終わらせる!」
「おおっ⁉」
まつりは巨大化し、蜘蛛の体を拳で貫く。まつりはすぐに元の姿に戻る。
「ああ、恥ずかしい……」
「思った以上の戦力ね、平凡少尉、もとい、凡太隊長」
「! ジェニー……そうだな、まつりさん、南関東州の為に共に頑張っていこう!」
「ええっ、私はただ穏やかに暮らしたいのですが……」
まつりは凡太の呼びかけに対し、心底迷惑そうな表情を浮かべるのであった。
――これはあり得るかもしれない未来の日本の話――
日本は十の道州と二つの特別区に別れた。
十の道州の内の一つ、南関東州は京浜工業地帯の大半と京葉工業地域を抑えていたことが幸いし、工業技術発展の恩恵を受けることが出来た。発展した技術を背景にした高い戦闘力を以って周辺地域と互角に渡り合うことが出来た――イレギュラーもあったが――。
それでも現状を良しとせず、技術力の結晶であるパワードスーツの量産、さらに新型パワードスーツの研究開発に着手し、状況を優勢にする為の準備を着実に進めていた。江の島、横須賀、横浜、そして鎌倉で研究は実を結んだ。
その美人は新型パワードスーツを着る。
その新型パワードスーツは巨大化出来る。
地元の女子大に通う彼女は読書が趣味である。
大きな平和を守るため、小さな平穏を捨てた。
『古都のシン・大仏』
星ノ条(ほしのじょう)まつり
鎌倉から進撃を開始する。
最後に笑うのは誰だ。
「担当からはそのような説明を受けたわ」
「思いっきり非科学的っすね! いやあ、神秘的なロマンを感じるっす!」
「白衣を着ている者が抱く感情かしら?」
目を輝かせる凛を見て、ジェニーが苦笑を浮かべる。
「ちっちっちっ……そこに探求心があればいいんすよ」
「そうなの……そういえばゆうきのパワードスーツは横須賀で開発されたのよね?」
「ああ、そうだぜ」
「どうりで、艦船の流れを汲むような作りになっているわね」
「海上ではスイスイと動けて、砲撃力は抜群、これはこれでロマンを感じるっすね~」
「おっ、分かってんな、凛!」
「なんでもロマンを感じているじゃない……」
「あっ、ジェニーさん、嫉妬すか?」
「そんなことで嫉妬しないわよ」
「凛のパワードスーツは……ありゃなんだ?」
「横浜の赤レンガ倉庫をイメージしてみたっす!」
ゆうきの問いに凛が答える。
「そ、そうか……まあ、固そうではあるな……」
「そうでしょう⁉ いや~分かってくれて嬉しいっす!」
「神奈川の各地で新型のパワードスーツの開発が進められていたわけだけど……開発コンセプトなんかはみんなバラバラね……」
「みんな違ってみんな良いじゃねえか!」
「共通の規格を持った方が良かったんじゃないかしら……」
ジェニーはゆうきの言葉を無視して、腕を組む。凛が補足する。
「どの開発が上手くいくか、蓋を開けてみないと分からなかったということもあるし、機密保持の為に、各所間での交流はゼロに近かったからしょうがないっす!」
「出たとこ勝負みたいな感じね……大丈夫かしら、我が南関東州は……」
「……皆、着いたぞ」
凡太が声をかける。荷台から降りたゆうきが伸びをする。
「う~ん、ここはどこだっけ?」
「鎌倉だよ」
「ここに新型パワードスーツの着用者がいるの?」
「ああ、最後の一人だ」
凡太がジェニーの問いに答える。凛が重ねて問う。
「古都鎌倉で新型技術の研究なんて、かなりのロマンっすね! 見当はついてるんすか?」
「ああ、だから必要以上に目立たないように来た」
「軍用ジープで観光地に乗りつけて、降りてきたのが、白い制服を着た男と、長身おかっぱと白衣パーマ……目立ってしょうがないでしょう……」
ジェニーは自らの意識高い格好は棚に上げて、小声で呟く。
「……ここだ」
凡太が建物を指し示す。ジェニーが目を丸くする。
「これは今時珍しいわね、古書店?」
「ああ、そうだ、入るぞ」
凡太を先頭に店に入る。
「いらっしゃいませ……」
店の奥に座り、茶髪のロングヘア―の美人が本を読みながら応対する。凡太が口を開く。
「『年百年中も好きと言って』」
「む!」
美人が露骨に動揺する。凡太が首を傾げる。
「おかしいな、暗号はこれで合っているはずだが……?」
「……探偵小説ならそちらの棚ですよ」
美人は本で顔を隠しながら、棚を指差す。
「いや、生憎読書をしにきたわけじゃない……⁉」
大きな揺れが起こる。凡太たちは店の外に出る。そこには『怪異化』した超巨大なクモの姿があった。怪獣映画に出てきそうなほどの大きさである。ゆうきが声を上げる。
「あ、あれはやべえぞ!」
「三人とも、頼む!」
「『島結』!」
「『艦射』!」
「『土着』!」
三人がそれぞれパワードスーツを装着する。凡太がすぐさま指示を出す。
「ゆうき、砲撃だ! 街の方に近づかせるな!」
「おう!」
「!」
砲撃を喰らって怯んだ蜘蛛だったが、口から糸を出す。
「凛! 糸を切れ!」
「了解っす!」
「‼」
凛が大小様々なレンガを投じ、重さで糸を切ることに成功する。それでも蜘蛛は前進する。
「ジェニー! 光で目を潰せ!」
「分かりましたわ!」
「⁉」
ジェニーが発した強烈な光で蜘蛛は視覚を奪われる。怒った蜘蛛は暴れ出す。
「流石にあの大きさ相手には決定打に欠けますわ!」
「貴女の出番だ!」
凡太が店の外に出てきた美人に声をかける。美人は首をぶんぶんと左右に振る。
「い、いや、私には無理ですよ! ……っていうか、恥ずかしいし!」
「愛する鎌倉がどうなっても良いんですか⁉ 星ノ条(ほしのじょう)まつりさん!」
「う、名前もバレている……ええい、こうなりゃヤケよ! 『仏化』!」
まつりと呼ばれた美人は地面に胡坐座りをして両手を組む。すると、青銅色の光がまつりを包み込み、頭と体をパワードスーツが覆う。それは小さな鎌倉の大仏さんのようであった。
「だ、大仏さん⁉」
「だから嫌なのに! なんでこんなスーツデザインなの⁉ 一気に終わらせる!」
「おおっ⁉」
まつりは巨大化し、蜘蛛の体を拳で貫く。まつりはすぐに元の姿に戻る。
「ああ、恥ずかしい……」
「思った以上の戦力ね、平凡少尉、もとい、凡太隊長」
「! ジェニー……そうだな、まつりさん、南関東州の為に共に頑張っていこう!」
「ええっ、私はただ穏やかに暮らしたいのですが……」
まつりは凡太の呼びかけに対し、心底迷惑そうな表情を浮かべるのであった。
――これはあり得るかもしれない未来の日本の話――
日本は十の道州と二つの特別区に別れた。
十の道州の内の一つ、南関東州は京浜工業地帯の大半と京葉工業地域を抑えていたことが幸いし、工業技術発展の恩恵を受けることが出来た。発展した技術を背景にした高い戦闘力を以って周辺地域と互角に渡り合うことが出来た――イレギュラーもあったが――。
それでも現状を良しとせず、技術力の結晶であるパワードスーツの量産、さらに新型パワードスーツの研究開発に着手し、状況を優勢にする為の準備を着実に進めていた。江の島、横須賀、横浜、そして鎌倉で研究は実を結んだ。
その美人は新型パワードスーツを着る。
その新型パワードスーツは巨大化出来る。
地元の女子大に通う彼女は読書が趣味である。
大きな平和を守るため、小さな平穏を捨てた。
『古都のシン・大仏』
星ノ条(ほしのじょう)まつり
鎌倉から進撃を開始する。
最後に笑うのは誰だ。
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