24 / 50
第一章
第6話(3)愛の国の姫
しおりを挟む
「……誰だ?」
タイヘイが首を傾げる。
「カ、カンナ様だ! カンナ様が来て下さったぞ!」
「これで勝てる!」
兵たちが大いに沸き立つ。
「カンナ様だと?」
「あなたたち……」
「!」
カンナと呼ばれた女の声に兵たちのざわめきが止む。
「わたくしに二度も同じことを言わせないで下さい……」
「は、はい!」
「お、お前ら、落ち着け!」
兵の部隊長らしき者たちが部下らに声をかける。カンナは頷く。
「そう……乱れた隊列を戻して、負傷兵は回収しなさい……」
「し、しかし、こやつはどうしますか?」
兵の一人がタイヘイを指差しながら、カンナに問う。
「わたくしが相手をします……」
「! き、危険です! 三将を倒した男ですよ!」
「……それは見ておりました」
「それではなおさら!」
「これ以上の戦力の損耗は出来る限り避けたいところです……」
「は、はあ……」
「ここでこの方を倒します」
「は、はっ!」
カンナの言葉に兵が敬礼する。タイヘイが口を開く。
「おい、カンナちゃんよ~」
「ちゃ、ちゃんだと⁉ カンナ様だ!」
兵の言葉を無視して、タイヘイが問いかけを続ける。
「お前さん、偉いやつか?」
「ええ」
「ひ、否定しないんだな……」
「否定する理由がありませんから……」
「っていうことはもしかして……」
「……」
「人の国の軍団長かなにか?」
「ふっ……」
タイヘイの言葉にカンナは笑う。タイヘイがややムッとする。
「なにがおかしいんだよ」
「いや、随分と的外れなことをおっしゃるものだと思いまして……」
「違うのか?」
「ええ、違いますね」
「そうか、それなら……」
「え?」
「悪いことは言わねえ、ここから撤退してくれ」
「……なんですって?」
「俺たちにとっては、ここら辺に新しい国を造るっていう挨拶代わりも兼ねてやってきたんだよ。だが、あくまでも目的はお前らの軍勢を追い払うってのが主な目的だ」
「ふむ……」
カンナが俯く。
「理解してもらえたか?」
カンナが頭を上げる。
「……国を造るということは三つの条件が必須です」
「む……」
「あなた……えっと……」
「タイヘイだ」
「タイヘイさん、その条件はご存知ですか?」
「え?」
「まず一つ目、『領土』です」
「領土? ああ、それなら心配いらねえ」
「ほう?」
「この緩衝地帯を丸々、俺たちの領土ということにさせてもらう!」
「そういうわけには!」
「……少し下がっていて下さい……」
「は、はあ……」
カンナの言葉に従い、兵が下がる。
「……この緩衝地帯が丸々、あなたたちの土地になるということですね」
「ああ、そうだ!」
「それならば、国を名乗ってもおかしくないほどの広さですね……」
カンナはいつの間にか取り出した、四国の地図に目を通しながら呟く。
「そうだろう!」
「もう二つ、条件があります」
カンナが右手の指を二本立てる。タイヘイが面喰らう。
「むう……」
「二つ目は『国民』です」
「国民?」
「土地があっても住む者がいなければ、国とは言えません」
「国民は大勢いるぜ!」
「ほう……」
「四国のどの国にも馴染めなかった、お前らの言う“はみ出し者たち”が肩を寄せ合って助け合いながら暮らしている!」
「ふむ……」
「これでいいか?」
「三つ目は……」
「まだあんのか?」
「『主権』です」
「主権?」
「自分たちの国の政治を、自分たちで決める権利です。つまり他の国からの支配はうけないということです」
「ああ、そういうことに関してなら、皆覚悟は決まっている! っていうか、他の国の連中からのちょっかいにうんざりしているんだよ!」
「そうですか……」
「これで文句はねえな!」
「いえ……」
「なんでだよ! 領土、国民、主権が揃っているんだぜ!」
「……周辺国の理解や承認を得なければなりません。そういったことに関しては?」
「……これからだよ」
カンナの問いにタイヘイはバツの悪そうな顔をする。
「……考えの相違があったとはいえ、いきなりわたくしたちの軍勢に殴り込んできたのはいささかマズかったのではないでしょうか?」
「ぐっ……」
「これでは平和的な話し合いなど望むべくもありません……」
「……なにが言いたい?」
「タイヘイ殿、あなたたちの目論見はのっけから破綻しているのです」
「あ~! お前さんじゃあ、全然話にならねえ! もっと偉いやつと話をつけりゃあ良いだろうが!」
「……いますよ」
「は?」
「わたくしが人の国……通称『愛の国』の姫、カンナです」
タイヘイが首を傾げる。
「カ、カンナ様だ! カンナ様が来て下さったぞ!」
「これで勝てる!」
兵たちが大いに沸き立つ。
「カンナ様だと?」
「あなたたち……」
「!」
カンナと呼ばれた女の声に兵たちのざわめきが止む。
「わたくしに二度も同じことを言わせないで下さい……」
「は、はい!」
「お、お前ら、落ち着け!」
兵の部隊長らしき者たちが部下らに声をかける。カンナは頷く。
「そう……乱れた隊列を戻して、負傷兵は回収しなさい……」
「し、しかし、こやつはどうしますか?」
兵の一人がタイヘイを指差しながら、カンナに問う。
「わたくしが相手をします……」
「! き、危険です! 三将を倒した男ですよ!」
「……それは見ておりました」
「それではなおさら!」
「これ以上の戦力の損耗は出来る限り避けたいところです……」
「は、はあ……」
「ここでこの方を倒します」
「は、はっ!」
カンナの言葉に兵が敬礼する。タイヘイが口を開く。
「おい、カンナちゃんよ~」
「ちゃ、ちゃんだと⁉ カンナ様だ!」
兵の言葉を無視して、タイヘイが問いかけを続ける。
「お前さん、偉いやつか?」
「ええ」
「ひ、否定しないんだな……」
「否定する理由がありませんから……」
「っていうことはもしかして……」
「……」
「人の国の軍団長かなにか?」
「ふっ……」
タイヘイの言葉にカンナは笑う。タイヘイがややムッとする。
「なにがおかしいんだよ」
「いや、随分と的外れなことをおっしゃるものだと思いまして……」
「違うのか?」
「ええ、違いますね」
「そうか、それなら……」
「え?」
「悪いことは言わねえ、ここから撤退してくれ」
「……なんですって?」
「俺たちにとっては、ここら辺に新しい国を造るっていう挨拶代わりも兼ねてやってきたんだよ。だが、あくまでも目的はお前らの軍勢を追い払うってのが主な目的だ」
「ふむ……」
カンナが俯く。
「理解してもらえたか?」
カンナが頭を上げる。
「……国を造るということは三つの条件が必須です」
「む……」
「あなた……えっと……」
「タイヘイだ」
「タイヘイさん、その条件はご存知ですか?」
「え?」
「まず一つ目、『領土』です」
「領土? ああ、それなら心配いらねえ」
「ほう?」
「この緩衝地帯を丸々、俺たちの領土ということにさせてもらう!」
「そういうわけには!」
「……少し下がっていて下さい……」
「は、はあ……」
カンナの言葉に従い、兵が下がる。
「……この緩衝地帯が丸々、あなたたちの土地になるということですね」
「ああ、そうだ!」
「それならば、国を名乗ってもおかしくないほどの広さですね……」
カンナはいつの間にか取り出した、四国の地図に目を通しながら呟く。
「そうだろう!」
「もう二つ、条件があります」
カンナが右手の指を二本立てる。タイヘイが面喰らう。
「むう……」
「二つ目は『国民』です」
「国民?」
「土地があっても住む者がいなければ、国とは言えません」
「国民は大勢いるぜ!」
「ほう……」
「四国のどの国にも馴染めなかった、お前らの言う“はみ出し者たち”が肩を寄せ合って助け合いながら暮らしている!」
「ふむ……」
「これでいいか?」
「三つ目は……」
「まだあんのか?」
「『主権』です」
「主権?」
「自分たちの国の政治を、自分たちで決める権利です。つまり他の国からの支配はうけないということです」
「ああ、そういうことに関してなら、皆覚悟は決まっている! っていうか、他の国の連中からのちょっかいにうんざりしているんだよ!」
「そうですか……」
「これで文句はねえな!」
「いえ……」
「なんでだよ! 領土、国民、主権が揃っているんだぜ!」
「……周辺国の理解や承認を得なければなりません。そういったことに関しては?」
「……これからだよ」
カンナの問いにタイヘイはバツの悪そうな顔をする。
「……考えの相違があったとはいえ、いきなりわたくしたちの軍勢に殴り込んできたのはいささかマズかったのではないでしょうか?」
「ぐっ……」
「これでは平和的な話し合いなど望むべくもありません……」
「……なにが言いたい?」
「タイヘイ殿、あなたたちの目論見はのっけから破綻しているのです」
「あ~! お前さんじゃあ、全然話にならねえ! もっと偉いやつと話をつけりゃあ良いだろうが!」
「……いますよ」
「は?」
「わたくしが人の国……通称『愛の国』の姫、カンナです」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる