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第1集
第6話(3)ふっわふっわナイト
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「なんというか、文章全体からにじみ出てきています。嘘っぽさが」
私は説明する。
「う、嘘っぽさ……」
「はい」
「そ、それはなにか問題があるのか?」
「え?」
ザビーネさんの問いに私は首を捻る。
「小説とはいわばフィクションだろう?」
「まあ、そうですね」
私は頷く。
「であれば、嘘っぽくても良いのではないか?」
「それは確かにそうかもしれません。ですが……」
「ですが?」
「多少なりともリアリティというものは欲しいです」
「多少なりとも……」
「そうです。読み手、読者はそういうものを敏感に察知します。『ああ、この作者はほぼ想像で書いているな』と……」
「そ、想像の翼をいくらでも広げられるのが、小説の良いところではないのか⁉」
ザビーネさんが両手を広げて声を上げる。
「いくらでもと言っても、限度というものがあります」
「限度?」
「はい。少し本当のこと、あるいは本当っぽいことを混ぜ込んでおかないとおかしなことになってしまいます」
「む……」
「例えば、ザビーネさん……」
「な、なんだ……」
「その剣……」
私はザビーネさんの腰にある剣を指差す。
「こ、これがどうかしたのか?」
「剣というものを扱うのには技術が要りますよね?」
「あ、ああ、剣術だな」
「そう。剣術には基礎となる型というものがありますよね?」
「そ、そうだな……」
「その基礎をベースにして、騎士の方、または勇者や剣士の方はそれぞれの戦い方を見出していくわけではないですか?」
「ま、まあ、概ねそうだな……」
「だけど、基礎がなっていないと戦い方を磨き上げられない……強くはなれない」
「う、うむ……」
「それと同じです」
「お、同じだろうか?」
私の言葉にザビーネさんは腕を組む。
「大体ですけどね」
「だ、大体って……」
「まあ、結局私がなにを言いたいのかというと……」
「む……」
「こちらの原稿には……」
私はザビーネさんの原稿を指差す。
「原稿には?」
「その基礎がなっていないため、ふわふわしています」
「ふ、ふわふわしている⁉」
「はい、もう、ふっわふっわです」
「ふっわふっわ⁉」
ザビーネさんは私の言葉を反芻する。
「申し上げにくいですが……これではとても……」
「……では」
「はい?」
「どうすれば良いのだ⁉」
ザビーネさんが立ち上がる。鎧がカチャカチャと鳴る。
「ちょっと、落ち着いて下さい……」
「これが落ち着いていられようか!」
「そこをなんとか……どうぞお座り下さい」
「……」
私はザビーネさんを座らせる。少し間を空けてから話を再開する。
「問題点を洗い出しながら解決していきましょう」
「洗い出す?」
「はい、まずはこの嘘っぽさがどこから来るのか……」
「ふむ……」
「それが一番難しいのですが……」
私は思わず苦笑を浮かべる。ザビーネさんは再び腕を組む。
「うむ……」
「この小説は……主人公がパーティーをクビになるところから始まりますね」
「ああ、そうだ」
「いわゆる『追放系』というジャンルにカテゴライズされるものですね」
「そうなるな……」
「……ザビーネさん」
私はザビーネさんをじっと見つめる。ザビーネさんが戸惑う。
「な、なんだ……」
「追放されたご経験は?」
「あるわけないだろう!」
「ふっわふっわナイト!」
私はザビーネさんを指差す。ザビーネさんが再度驚く。
「ええっ⁉」
「失礼しました……」
私は人差し指を静かに引っ込める。ザビーネさんが不思議そうに尋ねてくる。
「ふっわふっわナイトとは……?」
「それは忘れて下さい……しかし、問題点が早速ですが明らかになりました」
「ええ……?」
「ザビーネさん、騎士団にはいつから……?」
「十の誕生日を迎えるころには在籍していた。正式な団員になったのは十三の誕生日か」
「……剣術の腕には相当な自信が?」
「当たり前だ。月に一回模擬戦を行うが、ここ数年は負けた記憶が無いな」
「それはすごいですね……そのお若さで部隊長を任せられるということはかなり優秀な頭脳を持っていらっしゃるのではと推察しますが……」
「自慢ではないが、騎士団内にとどまらず、文官たちの養成学校の試験を受けたことがあるが、どの教科もほぼ満点だったな」
「……ここだけの話、部隊長とは具体的にどの部隊を任せられることになるのですか?」
「機密事項なのだが……人の口に戸は立てられぬだろうな。どうせすぐに分かることだろう。王女様の護衛部隊を仰せつかった」
「ハイスペック! 追放云々とは無縁過ぎる!」
私はたまらず天を仰いで声を上げる。ザビーネさんは戸惑う。
「えっ⁉ な、なんだって……」
「いえ、こちらの話です……しかし、あれですね」
「あれとは?」
ザビーネさんが首を傾げる。
「ザビーネさんは追放系を書くのを止めた方がよろしいです」
「そ、そんな! それではどうすれば良いのだ?」
「う~ん、文体はソフトなんですよね……ん?」
その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。またまたまたこの感覚だ。
私は説明する。
「う、嘘っぽさ……」
「はい」
「そ、それはなにか問題があるのか?」
「え?」
ザビーネさんの問いに私は首を捻る。
「小説とはいわばフィクションだろう?」
「まあ、そうですね」
私は頷く。
「であれば、嘘っぽくても良いのではないか?」
「それは確かにそうかもしれません。ですが……」
「ですが?」
「多少なりともリアリティというものは欲しいです」
「多少なりとも……」
「そうです。読み手、読者はそういうものを敏感に察知します。『ああ、この作者はほぼ想像で書いているな』と……」
「そ、想像の翼をいくらでも広げられるのが、小説の良いところではないのか⁉」
ザビーネさんが両手を広げて声を上げる。
「いくらでもと言っても、限度というものがあります」
「限度?」
「はい。少し本当のこと、あるいは本当っぽいことを混ぜ込んでおかないとおかしなことになってしまいます」
「む……」
「例えば、ザビーネさん……」
「な、なんだ……」
「その剣……」
私はザビーネさんの腰にある剣を指差す。
「こ、これがどうかしたのか?」
「剣というものを扱うのには技術が要りますよね?」
「あ、ああ、剣術だな」
「そう。剣術には基礎となる型というものがありますよね?」
「そ、そうだな……」
「その基礎をベースにして、騎士の方、または勇者や剣士の方はそれぞれの戦い方を見出していくわけではないですか?」
「ま、まあ、概ねそうだな……」
「だけど、基礎がなっていないと戦い方を磨き上げられない……強くはなれない」
「う、うむ……」
「それと同じです」
「お、同じだろうか?」
私の言葉にザビーネさんは腕を組む。
「大体ですけどね」
「だ、大体って……」
「まあ、結局私がなにを言いたいのかというと……」
「む……」
「こちらの原稿には……」
私はザビーネさんの原稿を指差す。
「原稿には?」
「その基礎がなっていないため、ふわふわしています」
「ふ、ふわふわしている⁉」
「はい、もう、ふっわふっわです」
「ふっわふっわ⁉」
ザビーネさんは私の言葉を反芻する。
「申し上げにくいですが……これではとても……」
「……では」
「はい?」
「どうすれば良いのだ⁉」
ザビーネさんが立ち上がる。鎧がカチャカチャと鳴る。
「ちょっと、落ち着いて下さい……」
「これが落ち着いていられようか!」
「そこをなんとか……どうぞお座り下さい」
「……」
私はザビーネさんを座らせる。少し間を空けてから話を再開する。
「問題点を洗い出しながら解決していきましょう」
「洗い出す?」
「はい、まずはこの嘘っぽさがどこから来るのか……」
「ふむ……」
「それが一番難しいのですが……」
私は思わず苦笑を浮かべる。ザビーネさんは再び腕を組む。
「うむ……」
「この小説は……主人公がパーティーをクビになるところから始まりますね」
「ああ、そうだ」
「いわゆる『追放系』というジャンルにカテゴライズされるものですね」
「そうなるな……」
「……ザビーネさん」
私はザビーネさんをじっと見つめる。ザビーネさんが戸惑う。
「な、なんだ……」
「追放されたご経験は?」
「あるわけないだろう!」
「ふっわふっわナイト!」
私はザビーネさんを指差す。ザビーネさんが再度驚く。
「ええっ⁉」
「失礼しました……」
私は人差し指を静かに引っ込める。ザビーネさんが不思議そうに尋ねてくる。
「ふっわふっわナイトとは……?」
「それは忘れて下さい……しかし、問題点が早速ですが明らかになりました」
「ええ……?」
「ザビーネさん、騎士団にはいつから……?」
「十の誕生日を迎えるころには在籍していた。正式な団員になったのは十三の誕生日か」
「……剣術の腕には相当な自信が?」
「当たり前だ。月に一回模擬戦を行うが、ここ数年は負けた記憶が無いな」
「それはすごいですね……そのお若さで部隊長を任せられるということはかなり優秀な頭脳を持っていらっしゃるのではと推察しますが……」
「自慢ではないが、騎士団内にとどまらず、文官たちの養成学校の試験を受けたことがあるが、どの教科もほぼ満点だったな」
「……ここだけの話、部隊長とは具体的にどの部隊を任せられることになるのですか?」
「機密事項なのだが……人の口に戸は立てられぬだろうな。どうせすぐに分かることだろう。王女様の護衛部隊を仰せつかった」
「ハイスペック! 追放云々とは無縁過ぎる!」
私はたまらず天を仰いで声を上げる。ザビーネさんは戸惑う。
「えっ⁉ な、なんだって……」
「いえ、こちらの話です……しかし、あれですね」
「あれとは?」
ザビーネさんが首を傾げる。
「ザビーネさんは追放系を書くのを止めた方がよろしいです」
「そ、そんな! それではどうすれば良いのだ?」
「う~ん、文体はソフトなんですよね……ん?」
その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。またまたまたこの感覚だ。
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