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第1集
第6話(4)騎士団の内部事情
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「どうかしたのか?」
ザビーネさんが頭を抑える私に尋ねる。
「い、いえ、なんでもありません」
私は手を左右に振る。
「自分としては会心の出来と言っていい原稿だったのだが……」
ザビーネさんが俯く。
「基礎がなっていないところにどれだけ積み重ねても、点数は百点満点には届きません」
「むう……言ってくれるな……」
「率直に申し上げたまでです」
「基礎がなっていない、私の場合はリアリティの欠如か」
「そういうことです」
「リアリティを得るにはどうすれば良い?」
「それはもちろん、実際にパーティーから追放されるのが一番だとは思いますが……」
「そ、そういうわけにはいかん!」
ザビーネさんが声を上げる。
「そうでしょうね、栄えある騎士団の団員が、その辺のパーティーから追放されるだなんて……騎士団の威光に関わります」
「分かっているじゃないか」
「では、逆はいかがでしょう?」
「逆?」
「パーティーにこだわらず、ご自分の部隊から、使えない者を追い出すというのは……」
「そ、そんなことが出来るわけがないだろう!」
「そうですか?」
「ああ! 皆私が選抜させてもらった、優秀な隊員たちだ! 追放する理由がない!」
「ならば理由を作るのは?」
「え?」
「騎士団の活動費を横領したなどとでっち上げて……」
「そんな正義にもとるようなことが出来るか!」
ザビーネさんが立ち上がって勢いよく剣を抜く。私は慌てる。
「も、もちろん、今のは例えばの話でございます……」
「ふん……」
ザビーネさんは剣を納めて座る。
「う~ん、やはり追放系は厳しいかと……」
「ダメか……」
ザビーネさんが肩を落とす。私は腕を組んで首を捻る。
「う~ん……」
「……邪魔をした」
「はい?」
「私には文章を書く才能は無かったようだ……原稿は適当に処分しておいてくれ」
ザビーネさんは再び立ち上がると、部屋から出て行こうとする。
「ちょっとお待ち下さい!」
「!」
私はザビーネさんを呼び止める。
「話は戻りますが、ザビーネさんは追放系のお話を書くのをお辞めになった方が良いと申し上げているのです」
「む……」
「ここは違う話を書いてみるのがいかがでしょうか」
「違う話?」
「そうです」
「ジャンルの違う話ということか?」
「そういう考え方もありですね」
「それならば却下だ」
「何故ですか?」
「言ったように私は子供の頃から騎士団に身を置いている。この半生は戦いの歴史だ。戦いの経験を少しでも還元できればと思って、今回の話を書いた」
「それが追放物ですか」
「そうだ、パーティーと騎士団、立場こそ違えど、強力なモンスター討伐に赴くなど共通点は案外と多い。そして……」
「そして?」
「これは半ば伝説と化している話だが、なんらかの事情で騎士団を退団した者が凄腕の傭兵となって活躍した話もある」
「ほう……それは考えようによっては追放系のお話ですね」
「そうだろう?」
ザビーネさんが笑みを浮かべる。
「しかし……」
「なんだ?」
ザビーネさんが首を傾げる。
「……その手の伝説・伝承はこの国の各地に残っているのでは?」
「あ、ああ、そうだろうな……」
「それではよほど面白くかつ上手く、そういったエピソードに肉付けしていかないと、ただの伝承の再生産または紹介になってしまいますね」
「むう……」
「やはり追放系は一旦見直すことにしましょう」
「ではどうするのだ!」
ザビーネさんが声を荒げる。私が答える。
「ここは発想の転換です」
「発想の転換だと?」
「そうです」
「例えば?」
「『追放系』ならぬ『歓迎系』!」
「か、歓迎系だと⁉」
私の発言にザビーネさんが目を丸くする。
「はい」
私は頷く。ザビーネさんが尋ねてくる。
「それは一体どういうものなのだ?」
「う~ん……」
首を捻る私にザビーネさんが呆れる。
「き、決めていないのか?」
「決めていないというか、今まで誰も書いてないようなお話ですからね……」
「誰も書いてないようなお話?」
「例えばですが、騎士団に入団し、周囲から大きな期待を寄せられ、先輩団員たちから大いに歓迎される少年の話……」
「む!」
「そういう話ならばかなりのリアリティをもって書けるのではないでしょうか?」
「た、確かにそれはあるかもしれん……」
ザビーネさんが腕を組んで頷く。
「もちろん、そこはある程度の嘘を混ぜてもらって構わないのですが、騎士団の内部事情などを書いてみるのも面白いのではないでしょうか?」
「内部事情?」
「ええ、友情、時には対立……あるいは……」
「あるいは?」
「恋愛とか……」
「は、破廉恥だな!」
ザビーネさんが顔をこれでもかというくらいに真っ赤にする。
「……まあ、今のは一例です。騎士団寮での若人たちの青春模様……興味をひく題材です」
「う、うむ……まあ、その方向性でひとつ挑戦してみるとしよう……」
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。打ち合わせはなんとかどうにかこうにかうまくいったようだ。
ザビーネさんが頭を抑える私に尋ねる。
「い、いえ、なんでもありません」
私は手を左右に振る。
「自分としては会心の出来と言っていい原稿だったのだが……」
ザビーネさんが俯く。
「基礎がなっていないところにどれだけ積み重ねても、点数は百点満点には届きません」
「むう……言ってくれるな……」
「率直に申し上げたまでです」
「基礎がなっていない、私の場合はリアリティの欠如か」
「そういうことです」
「リアリティを得るにはどうすれば良い?」
「それはもちろん、実際にパーティーから追放されるのが一番だとは思いますが……」
「そ、そういうわけにはいかん!」
ザビーネさんが声を上げる。
「そうでしょうね、栄えある騎士団の団員が、その辺のパーティーから追放されるだなんて……騎士団の威光に関わります」
「分かっているじゃないか」
「では、逆はいかがでしょう?」
「逆?」
「パーティーにこだわらず、ご自分の部隊から、使えない者を追い出すというのは……」
「そ、そんなことが出来るわけがないだろう!」
「そうですか?」
「ああ! 皆私が選抜させてもらった、優秀な隊員たちだ! 追放する理由がない!」
「ならば理由を作るのは?」
「え?」
「騎士団の活動費を横領したなどとでっち上げて……」
「そんな正義にもとるようなことが出来るか!」
ザビーネさんが立ち上がって勢いよく剣を抜く。私は慌てる。
「も、もちろん、今のは例えばの話でございます……」
「ふん……」
ザビーネさんは剣を納めて座る。
「う~ん、やはり追放系は厳しいかと……」
「ダメか……」
ザビーネさんが肩を落とす。私は腕を組んで首を捻る。
「う~ん……」
「……邪魔をした」
「はい?」
「私には文章を書く才能は無かったようだ……原稿は適当に処分しておいてくれ」
ザビーネさんは再び立ち上がると、部屋から出て行こうとする。
「ちょっとお待ち下さい!」
「!」
私はザビーネさんを呼び止める。
「話は戻りますが、ザビーネさんは追放系のお話を書くのをお辞めになった方が良いと申し上げているのです」
「む……」
「ここは違う話を書いてみるのがいかがでしょうか」
「違う話?」
「そうです」
「ジャンルの違う話ということか?」
「そういう考え方もありですね」
「それならば却下だ」
「何故ですか?」
「言ったように私は子供の頃から騎士団に身を置いている。この半生は戦いの歴史だ。戦いの経験を少しでも還元できればと思って、今回の話を書いた」
「それが追放物ですか」
「そうだ、パーティーと騎士団、立場こそ違えど、強力なモンスター討伐に赴くなど共通点は案外と多い。そして……」
「そして?」
「これは半ば伝説と化している話だが、なんらかの事情で騎士団を退団した者が凄腕の傭兵となって活躍した話もある」
「ほう……それは考えようによっては追放系のお話ですね」
「そうだろう?」
ザビーネさんが笑みを浮かべる。
「しかし……」
「なんだ?」
ザビーネさんが首を傾げる。
「……その手の伝説・伝承はこの国の各地に残っているのでは?」
「あ、ああ、そうだろうな……」
「それではよほど面白くかつ上手く、そういったエピソードに肉付けしていかないと、ただの伝承の再生産または紹介になってしまいますね」
「むう……」
「やはり追放系は一旦見直すことにしましょう」
「ではどうするのだ!」
ザビーネさんが声を荒げる。私が答える。
「ここは発想の転換です」
「発想の転換だと?」
「そうです」
「例えば?」
「『追放系』ならぬ『歓迎系』!」
「か、歓迎系だと⁉」
私の発言にザビーネさんが目を丸くする。
「はい」
私は頷く。ザビーネさんが尋ねてくる。
「それは一体どういうものなのだ?」
「う~ん……」
首を捻る私にザビーネさんが呆れる。
「き、決めていないのか?」
「決めていないというか、今まで誰も書いてないようなお話ですからね……」
「誰も書いてないようなお話?」
「例えばですが、騎士団に入団し、周囲から大きな期待を寄せられ、先輩団員たちから大いに歓迎される少年の話……」
「む!」
「そういう話ならばかなりのリアリティをもって書けるのではないでしょうか?」
「た、確かにそれはあるかもしれん……」
ザビーネさんが腕を組んで頷く。
「もちろん、そこはある程度の嘘を混ぜてもらって構わないのですが、騎士団の内部事情などを書いてみるのも面白いのではないでしょうか?」
「内部事情?」
「ええ、友情、時には対立……あるいは……」
「あるいは?」
「恋愛とか……」
「は、破廉恥だな!」
ザビーネさんが顔をこれでもかというくらいに真っ赤にする。
「……まあ、今のは一例です。騎士団寮での若人たちの青春模様……興味をひく題材です」
「う、うむ……まあ、その方向性でひとつ挑戦してみるとしよう……」
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。打ち合わせはなんとかどうにかこうにかうまくいったようだ。
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