【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
40 / 50
第1集

第10話(3)エキサイティング、ダイナミック

しおりを挟む
                  ♢

「ザビーネ先生、本日はどうぞよろしくお願いします」

「どうぞよろしくお願いします」

「ふむ。よろしく……しかし、先生というのは少々面映ゆいな」

 ザビーネがやや恥ずかしそうにする。

「早速ですが、打ち合わせの方を始めさせて頂きます」

「ああ、よろしく頼む」

「原稿を拝読させて頂きました」

「そうか」

「ですが、これはなんというか……」

「うむ?」

「その……ジャンルは何になるのでしょうか?」

「『歓迎系』だな」

「か、歓迎系?」

「ああ」

 戸惑う男性に対し、ザビーネは自信満々に頷く。

「い、いわゆる『追放系』ではなく?」

「ああ、その真逆だな」

「ふ、ふむ……そうですか……」

「何か気になることでもあっただろうか?」

「い、いや、何と言いますか……君はどう思った?」

 男性は隣の女性に尋ねる。女性はやや間を空けてから答える。

「……一般世間とはだいぶかけ離れているかなと思いました」

「そ、そうか? まあ、舞台は騎士団なわけだしな……」

「そうは言ってもです。限度というものがあります」

「げ、限度?」

「ええ、毎回仕事後に皆で食事を囲んでいますね?」

「あ、ああ……」

「これがありえません」

「あ、ありえない⁉」

 ザビーネが驚く。

「ええ、強制的に飲みの場などに連れて行くのは『アルハラ』に繋がる恐れがあります」

「ア、アルハラ?」

「『コンプライアンス』的にもよろしくないかと」

「コ、コンプライアンス?」

「こういった点が読者から忌避されるかもしれません」

「き、忌避⁉ そ、そこまでか⁉」

「はい、そこまでです」

「し、しかしだな……若者がメインだから、彼らの飲酒シーンなどは書いていないし、基本同じ寮で暮らすのだ。食事などで顔を合わせるのは致し方無いだろう?」

「そこら辺が重荷に感じるというか……」

「それではどうすれば良いのだ?」

 ザビーネの問いに男性が口を開く。

「……『非干渉系』で行きましょう」

「非干渉系?」

「ええ、個人のプライバシーが尊重される昨今。騎士団とてそれは例外ではないはずです」

「例外だ! 個人主義者だらけの騎士団など聞いたこともないぞ!」

 ザビーネが立ち上がって声を上げる。

「まあ、その辺はフィクションということで折り合いをつけて頂いて……」

「折り合いって……」

「ザビーネ先生ならば、そういった騎士団の若者たちを主役に据えて、面白く、かつエキサイティングなストーリーをお書きになれるはずです。お願いします!」

「う、う~ん……個人主義者がそうそうエキサイティングするだろうか……?」

 揃って丁寧に頭を下げてくる男女にザビーネは困惑する。

                  ♢

「クラウディア先生、本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「ふむ、先生か……悪くない響きだな」

 クラウディアがいかにも悪そうな笑みを浮かべる。男性が戸惑いながら話し始める。

「さ、早速ですが、打ち合わせの方を進めさせて頂きます」

「うむ、頼む」

「原稿を拝読させて頂きました」

「そうか」

「内容なのですが……これは……いわゆる一つの……」

「ん?」

「えっと……何と言いましょうか……」

「どうした?」

 言い淀む男性に対し、クラウディアが首を傾げる。

「その……おい、頼む」

 尚も言い淀む男性は隣の女性に話の続きを促す。女性は若干呆れながらも、クラウディアに対しては真面目な顔つきで話す。

「これは『魔族の裏話』というようなコンセプトですね?」

「まあ、ざっくりと言うとそうなるな」

「ふむ……」

 女性が顎に手を当てる。クラウディアが尋ねる。

「なにか気になることがあるのか?」

「気になること……そうですね」

「遠慮なく言ってくれ」

「……遠慮なく?」

「ああ、そうだ」

「良いのですか?」

「構わん」

「それでは、この魔族の裏話ですが……」

「うむ……」

「少々内容がマニアックではないかなと……」

「そ、そうか?」

「ええ、そうです」

「魔族の我ならではの視点だからな、そこが良いと思うのだが……」

「ユニークな視点であるということは認めます。しかし……」

「しかし?」

「読者のニーズとは乖離しています」

「なっ⁉」

 黙っていた男性が口を開く。

「読者の多くが求めているのは単純明快なストーリー!」

「単純明快……それならば……」

「あ、お考えがあれば、どうぞ!」

 男性がクラウディアを促す。

「魔族が勇者を倒すというのは?」

「あ~それも悪くないのですが……そこに一捻り」

「ひ、一捻り?」

「魔族の方が魔王を倒すというお話です」

「そ、そのような話を我に書けと⁉」

 クラウディアが思わず立ち上がる。男性はやや慌てながらも自らの考えを述べる。

「世間が好むのは下克上のストーリー! その点魔族のクラウディア先生なら、魔王の倒し方をある意味よくご存知なはず……シンプルかつダイナミックでありながらも、『その手があったか!』と読者が膝を打つお話がお書きになれるはずです。お願いします!」

「た、単純明快とか言ってなかったか……?」

 揃って丁寧に頭を下げてくる男女にクラウディアは戸惑う。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

処理中です...