令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
5 / 51
第一章

第1話(4) 2000円札オンリー

しおりを挟む
「くっ!」

 強盗の一人がバッグを持って走って逃げ出そうとする。平成が叫ぶ。

「待て!」

「そう言われて待つ馬鹿がいるかよ!」

「しょうがねえな……『両替』!」

「⁉」

 平成が両手を強盗に向かいかざす。令和が首を傾げる。強盗も思わず立ち止まる。

「へ、平成さん?」

「な、何をしやがった? 心なしかバッグが重くなったぞ?」

「中身の札束を全て『二千円札』に替えてやったぜ!」

「ど、どんな能力⁉」

「じ、地味な嫌がらせしやがって!」

「どうだ!」

 平成は胸を張る。

「か、考えてみれば金であることには変わりはねえ!」

 強盗は再び走り出す。平成は戸惑う。

「そ、そんな! 通用しないだと⁉」

「どうして通用すると思ったんですか! その能力!」

「ちっ! それならばこれだ! 『バカの壁』!」

「どわっ!」

 平成が再び両手をかざすと、強盗の走り去ろうとした先に壁が発生し、強盗がそれにぶつかって転倒する。

「よしっ!」

「ぐっ……な、なんで壁がこんなところに……」

「ちょっと待て! この脇から抜けられるぞ!」

 残っていたもう一人の強盗が壁と街並みのビルの間のわずかなスペースをすり抜けようとする。令和が驚く。

「平成さん⁉ これは⁉」

「……そこまで幅広い壁を生成することは出来ない……」

「それじゃ『バカな壁』じゃないですか!」

「ほお、言い得て妙だな」

 平成は感心する。令和は声を上げる。

「感心している場合ではないですよ!」

 令和が走りだす。平成が叫ぶ。

「どうするつもりだ⁉」

「壁の隙間から追いかけます!」

「待て! 待ち伏せをされている可能性があるぞ!」

「ではどうすれば!」

「こうするんだよ! 『崩壊』!」

「⁉」

「なっ⁉」

 令和も逃げようとした強盗も驚いた。壁があっという間に崩壊し、強盗と令和の間に障害物がなにも無くなったからである。

「逃がしませんよ!」

「ぐはっ……!」

 一瞬で間合いを詰めた令和が刀の柄を強盗の腹部に突き立て、強盗を無力化する。

「これで本当に片付きましたね……」

「まだだ!」

「なっ⁉」

 まだ残っていた強盗、しかも一番大柄な強盗が令和に思い切り殴りかかる。令和はなんとか受け止めるが、勢いを殺しきれず、後方に飛ばされ、地面に転がる。

「令和ちゃん、無事か⁉」

「受け身を取ったのでなんとか……」

「ちっ、うざってえ連中だな……どうせ捕まるんだ。せめてどちらか始末するか?」

「くっ……」

 大柄な強盗が令和に迫る。令和は二刀を構えながら後ずさりする。

「へっ、ビビッてんのか? ヒヨっこ時代が……」

「待て、デカいの! 俺が相手だ!」

 平成が叫び、大柄な強盗がゆっくりと振り返り、不敵な笑みを浮かべる。

「……てめえの攻撃手段なんざ読めている……どうせボールを投げるか、蹴るかだろう? 接近戦も油断さえしなければ……!」

 そう言いながら、大柄な強盗が目を丸くする。平成がやや大きめなボールを両手に持っていたからである。

「あ、バレた?」

 大柄な強盗は思わず噴き出す。

「また馬鹿の一つ覚えかよ! そんなボール遊びで何が出来る!」

「こうするんだよ!」

「む⁉」

 平成がボールを思い切り地面に叩き付け、大柄な強盗の頭のちょうど真上にくるまで弾ませたのである。

「『エアウォーク』!」

「ああん⁉」

 平成がまるで空中を歩くような飛躍を見せ、空中のボールを掴んでみせたのである。大柄な強盗も令和も驚く。

「『スラムダンク』‼」

「がふっ!」

 両手でボールを掴んだ平成はそのまま勢いよく落下し、大柄な強盗の脳天にボールを強烈に叩き込んだ。大柄な強盗はフラフラとなって、やがて倒れ込んだ。

「へっ、どうだ! おっと!」

 平成は着地を失敗して、尻餅をついてしまう。令和がそこに無言で近づく。

「……」

「い、いや~最後の最後でカッコ付かねえな……」

 平成は後頭部を照れ臭さそうにさする。令和が口を開く。

「……あのエアウォークは……」

「え?」

「アメリカのレジェンドバスケットボールプレーヤーが見せた、いわば『神業』です。どうしてそれを日本の一時代に過ぎない平成さんが出来たのですか?」

「ああ、それか……答えはこれだ」

 平成は両手と尻をついたまま自分の両足を大袈裟に上げる。令和が首を捻る。

「……靴ですか?」

「ご名答。これは今言ったレジェンドの名を冠したバスケットシューズ、通称『バッシュ』でね……あの選手のプレーに熱狂したものはこぞって買い求めたもんだよ……もちろん日本においてもそれは例外ではなかった……スポーツだけでなく、普段のファッションとしてのスニーカーで履いている人も多かったな……」

 立ち上がった平成は何故か遠い目をする。令和はため息をつく。

「思い出話、もとい、ご説明頂きありがたいのですが……」

「あれ? 俺、思い出を語っちゃってた? ノスタルジッちゃってた?」

「……それで高く飛べるのはどういう理屈ですか?」

「……あのレジェンドと同じシューズだぜ? それは誰だって飛べるだろうよ」

「いや、飛べないですよ、普通は! ……!」

 そこに警官隊の応援が駆け付け、強盗たちを確保していく。平成は苦笑する。

「とりあえず解決か……それにしても令和ちゃんにはすっかり助けられちまったな、見ているだけでいいからとか言いながら……カッコ悪りいなあ」

「国の内外にも天地にも『平和』が『達成』される……」

「ん?」

「一応成し遂げられましたね……これからよろしくお願いします、平成さん」

「おっ? 少しは見直してくれた感じ?」

 令和と平成は握手を交わす。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...