令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第2話(1) 影の薄い旧石器くん

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「挨拶回りですか?」

 令和が首を傾げる。課長が頷く。

「ああ、昨日は色々とバタバタとしていたからね……改めて挨拶をしてきたまえ」

「既に各課には顔を出しましたが……」

「おっ、流石だね。ただ、時代の先輩方には会ったかい?」

「……そう言われると、どなたにもお会いしていませんね」

 令和の言葉に課長は苦笑する。

「みんな自由だからね……時管局に顔を出すことの方が少ないんだ」

「そ、それで機能しているのですか?」

「まあ、一応はね」

 戸惑い気味の令和の問いに課長が肩を竦める。

「どこに行けばよろしいのでしょうか?」

「僕はどうしても外せない用事があってね……彼と一緒にいってくれ」

 課長が平成のデスクに視線を向ける。平成は思いっ切り居眠りをかましている。

「……平成さん」

「……んあ? なんだ令和ちゃんか……」

「起きて下さい」

「う~ん、後5ディケイド……」

「50年も待てませんよ、スケール感バグり過ぎです……随分と眠そうですね」

「……ああ、寝ずに『もも鉄』やっていたからな」

「『太ももが鉄のように硬い男てつじ』ですか?」

「い、いや、それは知らないな……『桃太郎電鉄』だ……」

「ああ、そっちの『桃鉄』ですか……」

「そっちのってなんだよ、他にあんのかよ……」

「しかし、寝不足になるまでやるとは……」

 令和が呆れる。平成が眠い目をこすりながら尋ねる。

「で? 何の用だい?」

「時代の先輩方に挨拶回りをしてこいと課長に言われました」

「ああ、そういやさっきそういう話をしていたな……」

「ついてきてもらえますか?」

「……回る順番は俺が決めていいか?」

「ええ、構いません」

「よし……それじゃあ行こうか」

 平成は伸びをしてから立ち上がる。

「えっと……大体川沿いにいるんだが……」

「なんですか、そのアバウトな情報……」

「まだまだ分かっていないことの方が多いからな」

「ど、どういうことですか……? ん?」

 川沿いを歩いている平成と令和の近くに、彫りの深い南方系の顔立ちをして、上半身は華奢だが、下半身はがっしりしている小柄な体格の男性が立っている。その男は平成に気づき、手を振ってきた。しかし、平成は気付かない。

「なかなか神出鬼没なところがある時代の先輩だからな~」

「あ、あの平成さん……?」

「ここにいないなら、あちらの方へ行ってみるか……」

 尚もその男は手を振っている。なんならちょっとずつ近づいてきている。令和が首を捻りながら平成に尋ねる。

「へ、平成さん?」

「う~ん、あちらの方にも見当たらないな……よし! 次の時代に行ってみるか!」

「おい! 無視すんなよ!」

「うわあっ⁉」

 男が急に大声を出したことに驚いた平成は尻もちをついた。令和は呆れる。

「気が付いていなかったのですか?」

 平成は尻についた砂を払いながら立ち上がり、キリっとした顔で告げる。

「いやいや……お久しぶりです」

「白々しいんだよ!」

 男が声を上げる。令和は首を傾げる。

「平成さん、ひょっとしてこちらが……」

「ああ、『時管局古代課』所属の……」

「『旧石器(きゅうせっき)』だ、よろしくな!」

「『令和』と申します。よろしくお願いします」

 令和は丁寧に頭を下げる。

「お、お前さんが噂の新たな時代か~」

「平成さんのご案内で先輩方皆様にご挨拶に回っております」

「そうかい、そりゃあなかなか大変だろう?」

「いえ、まだ最初ですから……」

「え? 俺を最初に選んでくれたのかい? 嬉しいね~」

「それはそうですよ、なんといっても日本史における重要な発見である『岩宿遺跡(いわじゅくいせき)』で有名な旧石器さんにまずはご挨拶をと……そうですよね、平成さん?」

「……」

 令和の問いに平成は黙っている。令和が問う。

「何か違う理由があるのですか?」

「……こう言っちゃなんだがな、旧石器さんは今ひとつ影が薄いんだよな……」

「ええ?」

「存在が確認されたのも昭和の初期から中期にかけてだし、その始まりについては様々な意見があるが、最古で12万年まで遡れる可能性があるのに、遺跡などが見つかるのは4万年前以内のものだけなんだ」

「そ、それでも十分凄いことだと思いますが……」

「でもなんていうか……影が薄いよな~って、うおっ!」

 平成の鼻先に旧石器が槍を突き付ける。

「誰のせいで影が薄くなったと思っている……!」

「す、すみません! うちの『ゴットハンド』がほんとすみません!」

「ゴットハンド……ああ、聞いたことがあります」

 令和が神妙な面持ちで頷く。旧石器は槍を肩に担ぎ、苦笑を浮かべる。

「お陰でいわゆる後期のみの旧石器時代って扱いだ。前・中期の旧石器時代は日本史にはなかった考えが圧倒的だ……『国際旧石器連盟』では肩身が狭いよ……」

「国際旧石器連盟なんてものがあるのですね……それにしても平成さん」

 令和は冷ややかな視線を向ける。

「ん?」

「なにか特別な能力でも使いましたか? 私の目には旧石器さんのお体にモザイク処理がされているように映るのですが……」

「旧石器さんはどんな服を着ていたかよく分かっていないからな。配慮してみたぜ」

「だ、だからって、全身モザイクって! これでは旧石器さんが何やら卑猥な恰好をしているみたいでしょう!」

「おい、なんてことしてんだよ、平成! ちゃんとシカの毛皮を着ているよ!」

「え~? そうなんですか?」

「そうなんだよ! 氷河時代とも言われるくらい寒いんだから服は着るよ!」

「肝心の衣服がこちらでは確認されていないんでね……」

「動物の皮を加工するのに使った痕跡がある石器があるだろう⁉」

 旧石器の言葉に令和が頷く。

「掻器(そうき)ですね。皮をなめした痕が多く見られます」

「ほら見ろ! 後輩の方が分かってんじゃねえか!」

「……それでもまだちょっぴり半信半疑ですね~」

「お前な! とにかく全身をちゃんと見ろ!」

 旧石器が声を上げる。
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