令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第2話(2) ここをキャンプ地とするぴょん

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「ほう、毛皮で作った衣服ですか……」

 平成が顎に手をやって呟く。

「だからそう言っているだろう!」

「わりとだぶだぶっとしていますね」

「全身を覆う必要がある、肌寒いからな」

「常に半裸で腰巻一枚なイメージでしたよ」

「どんなイメージだよ……まあ、居住地域の環境にもよるだろうが……」

「冬になっても意地でも半ズボンな男子、学校に一人はいたよな?」

「そんなことで同意を求められても困ります……」

 平成からの問いに令和は困惑する。平成は旧石器に尋ねる。

「ブーツも履いているんですね、それも毛皮も用いて作ったんですか?」

「ああ、そうだ。これも防寒対策だ」

「……革靴に素足ってタレントいたよな。あっ、トレンディ俳優だっけか?」

「だから、そのようなことで同意を求めないで下さい……す、素敵な首飾りですね」

 令和は話題を変える。旧石器は首飾りを手に取って笑う。

「へへっ、そうかい? これは琥珀だ」

「琥珀ですか!」

 旧石器の答えに令和は驚く。

「そうだ、それに紐を通している」

「おしゃれですね」

「おしゃれ……かねえ?」

 旧石器が苦笑しながら首を傾げる。

「違うんですか?」

「魔除けのおまじないって意味もあるとか、身分を表す為のものだとか、色々あってな……なんで付けているのか、自分でも忘れちまったよ」

「わ、忘れてしまったのですか……」

 旧石器の言葉に令和は戸惑う。平成が口を開く。

「過酷な生活環境だ、おしゃれを優先したとは考えにくいな……魔除けかあるいは集団の中での身分差を示す為に必要だったんじゃねえかな?」

「きゅ、急にまともなことを言い出しますね……集団ですか?」

「ああ、この辺に俺たちの居住区域がある。案内するぜ」

 旧石器が令和たちを案内する。平成が小声で呟く。

「……思い出した、あのトレンディ俳優はイタリアの会社員に影響を受けたらしい」

「すごくどうでも良い情報ですね……」

 平成の言葉を令和がバッサリと切って捨てる。川の近くの高台に着くと、テントのようなものがいくつかある。旧石器がそれらを指し示す。

「今はここに住んでいる」

「これはテントですか? これもシカの皮を使って……木で組み立てていますね」

「ばらして持ち運ぶのも簡単だからな」

「持ち運ぶ?」

 旧石器の答えに令和が首を傾げる。

「ああ、基本は移動生活だからな。一か所に定住するわけではない」

「そうなのですか……」

「洞窟や岩陰を利用することもよくあるが、大体はこうしたひらけた土地に住居を設営する。川の近くの見晴らしの良い場所にな」

「なるほど、『ここをキャンプ地とする』ってわけだな!」

「そんなローカルバラエティー番組的な考え方ではないと思いますが……」

 両手をポンと叩く平成を令和は醒めた目で見つめる。旧石器が苦笑する。

「水はけの良い土地を選んでいるんだよ」

「へえ、意外と考えているんですね」

「意外とってなんだよ」

「そういえば遺跡がなかなか見つからないと聞きます。神奈川県の『田名向原遺跡(たなむかいはらいせき)』が約2万年前の住居が残っている最古の遺跡だそうですね」

「短期間暮らすだけだから、地面に跡があまり残らないんだよな」

 令和の言葉に旧石器は頷く。平成が周囲を見回して呟く。

「建物跡はあまり残らないが、石器や石の欠片がまとまって出土する場所があるぜ」

「そうなのですか?」

「ああ、そういう場所を『ブロック』という。そういったブロックをはじめ、料理などを行った跡がある『礫群(れきぐん)』が発見されると、その辺りに一つの家族が生活していたんだなってことが分かる」

「な、なるほど……一家族を生活単位としていたんですね」

「ただ、そんなブロックがいくつも集まって、ドーナツ型を形成している『環状ブロック』というものが近年関東地方を中心に百か所以上見つかっている」

「ここもそのような環状ブロックですね……」

「旧石器の人たちが無類のドーナツ好きだったからだそうだ」

「それは嘘ですね」

 平成の言葉を令和が再び切って捨てる。旧石器が口を開く。

「複数の家族がしばらくの間、一緒に暮らすという生活様式が一般化していたな。大体十人ほどの集団を形成し、行動することが多い」

「何故でしょうか?」

「それは……多い食糧を分け合って食べることが多かったからな」

「多い食糧?」

 旧石器の言葉に令和は首を捻る。旧石器は笑いながら自らを指し示して問う。

「俺の体を見て思うことはないか?」

「『ミニモニ。』よりかはちょい大きいかなと思いました」

「なんだよ、ミニモニ。って……」

 平成の答えに旧石器は困惑する。令和が冷静に呟く。

「上半身は華奢ですが、下半身はがっしりとされています……手足も大きい。これは沖縄県の港川採石場で発見された約2万年前の『港川人(みなとかわじん)』の特徴に似ていますね」

 令和の言葉に旧石器は満足気な笑みを浮かべる。

「そうだ、もっと身長の高い奴らもいたみたいだが、2万年前になると、これくらいが平均的な身長になる」

 平成が問う。

「身長の高い連中もいたんですか?」

「色々なルートでこの列島に渡ってきたみたいだからな、ルーツもまた様々だろう」

「色々なルート……」

「①シベリアからサハリンを経由し、北海道に。②朝鮮半島から対馬を経由し、九州に。③大陸から台湾・沖縄を経由し、北上。大きく分けてこの三つが考えられる」

「……なんでこの列島に来たのでしょうか?」

 令和の問いに平成が答える。

「そりゃあ、『ナウマンゾウ』や『オオツノジカ』といった大型動物を追ってきたんだろう。旧石器さんたちは狩猟が得意だからな」

「おっ、分かっているな、意外だ」

「意外ってなんですか……匂いで分かりますよ」

「匂い?」

 旧石器が首を傾げる。平成が胸を張る。

「同じ匂いがするんです……ああ、思い出すなあ『ハンター』として、仲間たちと巨大な竜やモンスターを狩ったあの日々……」

「それってゲーム内の思い出じゃないですか……」

 遠い目をする平成に対し、令和は小声で突っ込みを入れる。旧石器が声を上げる。

「ほう! 平成も狩りには自信があるのか。ただのもやしっ子だと思っていたが」

「え?」

「これからナウマンゾウ討伐に赴くんだが、頭数が足りなかった! お前も来い!」

「ええ⁉ リアル『一狩り行こうぜ』⁉」

 旧石器からの誘いに平成は驚く。
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