令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第8話(1) 千年の京、平安さん

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                  8

「……課長はなんと言っていましたか?」

 令和が戻ってきた平成に尋ねる。

「なにが?」

「なにがって、鹿さんの暴れたことについてですよ」

 平成は肩をすくめる。

「ああ……それの原因についてはこちらで調べるってさ」

「こちらってどちらですか?」

「さあね、特殊な調査チームでもいるんじゃないのか?」

「適当ですね……」

「その辺りについてはあまり勝手な行動はしない方がいい」

「そうは言いましても、気になりますよ」

「気持ちは分かるが、こちらはこちらの予定を進めろとのことだ」

「……挨拶まわりですか」

 令和がうんざりしたように呟く。

「それも大事なことだ」

「分かってはいるつもりですが……」

「分かっているなら結構、報告書は出したな?」

「ええ、それはもちろん」

「俺の大事なところが道鏡なみになったっていうのはぼやかしたかい?」

「……そんなことを報告するわけないでしょう」

「それならいいんだ」

 令和がため息をつくと、あることを思い出す。

「そういえば、なにやら平成さん宛に荷物が届いていましたよ」

「え?」

「そこのテーブルの上にとりあえず置いてもらいましたが……段ボールにはなにか文字が書かれていますね」

「ああ、『Shosoin』な」

「正倉院⁉ そんな『Amazon』みたいな……」

「購入すると、宝物のレプリカを送ってくれるんだ」

「そ、そんなシステムが……なにを頼んだのですか?」

「琵琶と『木画紫檀基局(もくがしたんのききょく)』だよ」

「これは碁盤ですか? 何の為に?」

「これで碁を打ったら、それだけで強そうに見えないかなって……」

「形から入り過ぎでしょう……」

「令和ちゃんも何か貰っていなかったか?」

「和同開珎で購入させて頂きましたよ、木簡を」

「そんなの買ってどうする気だよ?」

「文字を書くと、願いが叶うという点に興味を持ちました」

「あの時期……735~737年は天然痘が流行して、藤原不比等の四人の男子で、時の権力者たちである『藤原四子』もあっけなく亡くなってしまったんだよな」

 平成の言葉に令和は頷く。

「ええ、一説によると、その天然痘によって、当時の日本の総人口の25~30%、100~150万人が亡くなってしまったそうです」

「それは大変なことだな……」

「疫病の流行だけでなく、大きな政変や権力闘争が相次ぎ、8世紀前半の日本はかなり不安定な状況でした……時の天皇、『聖武天皇(しょうむてんのう)』は740年から4年半で遷都を5回繰り返します」

「5回⁉ そんなことをしている場合かよ……自分自身が不安定じゃねえか」

 平成が呆れた顔になる。令和は静かに呟く。

「そんな中でも聖武天皇は一つの考えに至ります……仏教によって国家の安定を図ろうと」

「御仏の教えか」

「はい、いわゆる『鎮護国家思想(ちんごこっかしそう)』です。大仏建立もそうした考えの一環です」

「鎮護……俺みたいにあれを大きくするのに通じるな」

「通じません」

「冗談だよ」

「小学生でも言わないような冗談はやめてください」

 令和は心底呆れた声で呟く。平成は謝る。

「悪かったよ。それで、令和ちゃんもそういう不思議な力にすがりたいと……」

「そうですね、色々と事情がありまして……」

「令和ちゃんも大変だからな」

「先輩方に比べれば……まあ比べるものでもないですが……」

「天平さんみたいに木簡を上手く使えるとは限らないぜ?」

「そこは修練を重ねるしかありませんね」

「弥生ちゃんからもらった勾玉みたいになりそうだけどな……」

「あちらはもう少しでコツを掴めそうな気がするのです」

「まあいいや、そろそろ準備は出来たな」

「はい」

「それじゃあ行くぞ」

 平成と令和は部屋を出る。

「これは……」

 令和が周りを見回す。平成が笑う。

「見事な街並みだろう?」

「都市の全体が四角形かつ左右対称で、街路が碁盤の目状に整然と直交するように設けられています。ここはひょっとして……」

「千年王城、『平安京(へいあんきょう)』だ」

「ここが平安京……」

「794年にここに遷都し、そこから約1100年の長きに渡って、日本の首都であり続けた」

「ふむ……平城京と似ている部分がありますね」

「平城京同様に唐の長安をモデルにしたからな」

「この中央を南北に走る朱雀大路も大きいですね……」

「ああ、道幅約84mだ」

「そんなにですか」

「まあ、そんなわけで歩くのも一苦労だ。ヘイ!『牛車(ぎっしゃ)!』」

 平成が片手を挙げて牛車を停めようとする。令和が驚く。

「そ、そんなタクシー感覚で⁉」

「……停まらないな」

「それはそうでしょう、上流階級の方しか利用出来なかったと聞いていますよ」

「ケチ臭いこと言うなよ!」

「私に言われても!」

「……往来の真ん中でそないな大声で話して……はしなたないどすえ」

「⁉」

 平成たちが振り向くと一台の大きな牛車が停まっていた。その牛車は屋形の表面を絹の色糸で覆い、金銅のか文を所々に飾っている。屋形の簾がゆっくりと上がり、雅やかな装束に身を包み、黒く長い髪をなびかせた女性が顔を覗かせる。

「平成はん、お迎えにあがりました」

「あ、これはわざわざすみません……」

「平成はんは大層な大物ですから……動きものんびりとしてはる……」

「大物ですか、いやあ~よく言われます!」

「皮肉を言われているような……こちらは?」

「ああ、時管局古代課の……」

「『平安(へいあん)』です、どうぞよろしゅう……」

 平安と名乗った女性は優雅に頭を下げる。
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