ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第4話(4)ご立派なもの

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「くう……」

「むう……」



 アヤカもエリーも両腕を狙撃されたようだ。それぞれ一発の銃弾で、両腕をまとめて射抜かれた。どちらも両腕が使えなければ――大体の者がそうではあるが――戦闘行動をまともにとることは困難だ。たった二発の銃弾で二人をほとんど無力化するとは……。



「……!」

「おっと!」



 銃声がしたとほぼ同時に、俺は飛んでくる銃弾をかわした。



「【特殊スキル:ヤマ勘を発動しました】」



 ヤマ勘かよ。そこは『緊急回避』とかじゃないのかよ……まあ、それはいい。どうやら連射は出来ないようだ。あるいはかわされたことに驚いているのかもしれない。とにかく次弾が撃たれる前に狙撃手がどこにいるかを見つけ出さなければならないな……。



「……」



「【特殊スキル:……を発動しました】」



 俺は一瞬考えた後、すぐに動き出す。高く飛んで、空中を歩いてみせる。



「【特殊スキル:空中歩行を発動しました】」



「なっ⁉」

「! 見つけたぞ! そこだな!」



 俺が空中を歩いたことに驚いた声が聞こえた。やはり高い樹の上に潜んでいたか。俺はそいつを掴んで下に思い切り放り投げる。



「うおおっ⁉」



 狙撃手は着ていた服を大きく広げ、パラシュートのように降下して、着地した。



「随分とまあ、器用な真似を……」

「……何故だ?」

「ん?」



「【特殊スキル:たんぽぽの綿毛を発動しました】」



 狙撃手が地上に緩やかに着地した俺に問う。ってか、なんともまたメルヘンチックなスキル名だな……。まあ、それも今はどうでもいいか。



「どうしてアタイの場所が分かった?」

「それは……」

「いや……銃弾の入射角度、銃声の聞こえた方角、この空間でもっとも狙撃行動に適する位置、その諸々の条件をあの一瞬で分析、判断して、即行動に移したのか……恰好から単なる変態だと思ってすっかり油断してしまったよ……」

「……匂いで判断した」

「はあっ⁉」

「あっ、知らない女の匂いがするなって思って……」

「単なる変態だったー‼」



 狙撃手ががっくりと両膝をつく。俺は鼻の頭をポリポリと擦る。特殊スキル『超嗅覚』を発動させたのだ。ちなみに樹液の匂いもこれで感知した。さっきは森の声を聞いたとか自分でも訳の分からんことを言ったけど――でも、木々の揺らめきとか、わずかな物音を聞いた方がなんか格好いいじゃん?――嗅覚が発動してしまったのだからしょうがない。



「さっきの食堂にいた女だな?」

「ふん……」



 狙撃手はゆっくりと立ち上がる。真緑色のローブを身に纏っている。そう、食堂で俺たちにこの北の森の情報を伝えてきた者だ。アヤカと同じくらい……俺よりはわずかに背が低いが、スラっとした体型をしている。狙撃手は銃を構える。



「やめておけよ、姿が見えているスナイパーなんて間抜けと紙一重だぜ?」

「ほぼ全裸の間抜けにだけは言われたくない……!」

「うぐっ……」



「【特殊スキル:スローモーションを発動しました】」



 狙撃手が銃を発砲するが、スローモーションによって、銃弾はゆっくりとしか、俺には見えない。俺はデコピンで銃弾を跳ね返す。銃弾は綺麗に元の銃口におさまり、派手な暴発を引き起こす。狙撃手が驚きの声を上げる。



「うわっ⁉」



 爆風で狙撃手が被っていたフードがめくれる。尖った長い耳、ミディアムボブの金髪、透き通るような白い肌、類まれなる美貌……あれだ、エルフだ。



「エ、エルフのスナイパーとは……」



 俺も思わず驚きの声をもらす。エルフは片膝をつく。



「ちいっ……!」



 エルフは舌打ちをしながら、懐から拳銃を取り出して、こちらに対して向けてくる。先ほどまでの銃身が長いのは狙撃用のライフルだったか。俺はエルフをなだめる。



「やめておけ、どうせ同じことだ」

「やってみなくちゃ分からないだろうが! どのみち、姿どころか顔まで見られちまったんだ! いよいよここでアンタらを仕留めなくちゃならん!」

「ガセネタを掴ませて、俺たちをおびき寄せたのか……」

「そうだよ!」

「何のためにだ!」

「色々と目立っているアンタらを消せって言う奴らから依頼されてね!」

「なっ……」



 俺はまたもや驚く。まさか自分たちが暗殺のターゲットになるとは……。ある意味、異例のスピード出世じゃないか? いや、喜んでいる場合ではないな……。



「隙有り!」



 エルフが拳銃を連射する。綺麗なエルフには、出来る限り手荒な真似はしたくないな……どうする? あれをやってみるか……。



「ふっ……」



 俺は左手の指の間に四発の銃弾を挟み、それを見せつける。エルフが驚く。



「よ、四発すべてを受け止めた⁉」

「こういうことも出来るぜ……!」



「【特殊スキル:ちょっとした手品を発動しました】」



 俺は右手の指の間にも四発の銃弾を挟む。



「じゅ、銃弾が増えた⁉ い、いや、それに何の意味がある⁉」

「まあ、増やした意味はそんなに無いか……せっかくだからな!」

「むっ……⁉」



 俺が両手を振るうと、銃弾がエルフの服を貫く。襟や裾などに八か所の穴が開く。



「……当てようと思えば、体に当てられた。これ以上の抵抗は無意味だ」

「ま、参ったよ……」



 エルフは拳銃を投げ捨てて、両手を挙げる。



「うむ、ちょっと待っていろ……」

「?」



 俺はうずくまっているアヤカとエリーの所に近寄り、手をかざす。



「【特殊スキル:癒しの手かざしを発動しました】」



「た、助かりました、キョウ殿……」

「あ、ありがとうでありんす、キョウ様……」

「なっ……⁉」



 怪我から回復して、何事もなかったかのように立ち上がったアヤカとエリーの様子を見て、エルフは大いに驚く。



「どうかしたのか?」

「い、いや、どうやらとんでもないやつに喧嘩を売っちまったようだね……」

「というか、撃っちゃったでありんす……」

「……覚悟はいいか?」

「ちょ、ちょっと待て……ん⁉」



 エルフに襲いかかろうとするエリーとアヤカを止めようとした次の瞬間、巨大な木の形をした禍々しい雰囲気を纏ったモンスターが現れる。エリーが声を上げる。



「『エビルウッズ』でありんす! この地域にいるとは……!」

「レアモンスター! ま、まさか、本当にいたとは……⁉」



 驚くエルフに対し、エビルウッズが猛然と迫る。俺が叫ぶ。



「危ない! はああっ‼」



「【特殊スキル:顔から火が出るを発動しました】」



 俺は顔をゴシゴシと擦り、火をおこす。エルフがさらに驚く。



「は、発火した⁉」



 顔が火に包まれた俺はそのまま突っ込み、エビルウッズを燃やす。エビルウッズはすぐさま灰と化す。火をすぐに消した俺は後頭部を抑えながら呟く。



「あまりスマートではない倒し方だったかな。いやはや恥ずかしい……」

「もっと恥ずかしかるべきところがあるような気がするけど……」

「……君の名前は?」

「え? アタイはオリビア……」

「オリビアか、良い名前だ。どうだろう、俺たちとともに来ないか?」

「ええっ⁉」

「俺たちの始末に失敗したとなれば、君が狙われることになるだろう。どうせなら、俺たちと行動を共にすれば良い、どうかな、オリビアさん?」

「……オリビアで良いよ、分かった、一緒に行こう」



 オリビアと名乗った女性が拳銃を拾う。俺はアヤカたちに問う。



「二人とも、それで良いよな?」

「まあ、キョウ殿が決めたことなら……」

「それに従うだけでありんす……」

「よし、決まりだ……おっ、良かった。エビルウッズの燃えカスがわずかに残っているな、これを持ち帰れば、組合からも報酬が出るだろう。それじゃあ、街に戻ろうか」



 俺たちは街に戻った。読み通り、エビルウッズの燃えカスを渡すと、多額の報酬が出た。やった、金だ! 金が手に入ったのなら……豪遊だ! 俺たちは街の酒場で飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをする。オリビアが声をかけてくる。



「ねえ、アンタのこと、キョウって呼んでもいいかな?」

「あ、ああ、それは別に構わないが……」

「……本当にアタイを連れていっても良いの?」

「あの銃の腕前を見たら、手放すのが惜しい。ともに来てくれるのならば心強い」

「ふ~ん……」

「オリビアは嫌か? それならば無理強いはしないが……」

「いいや、アンタらについていくよ。さっきもキョウが言ったように、依頼者に狙われることになるだろうからね」

「その依頼者についてなんだが……」

「どうせ下っ端だろうから、いわゆる黒幕までにはたどり着けないと思うよ」

「そうか、まあ、それはそうだろうな……」

「まあ、たとえ知っていても言わないよ。一応プロだからね」

「ふむ、なかなか意識が高いな……うん……」

「どうしたの? ほっぺたを抑えちゃって……」

「いや、さっきの発火の影響なのか、顔が火照ってきてな……」

「それは大変だ……この酒場は馴染みだから上の部屋を借りられるよ、少し休もう」

「そ、そうだな……うん……? な、なんだか無性に眠くなってきた……はっ!」



 翌朝、俺はベッドの上で目が覚める。それを確認したオリビアが俺に告げる。



「なかなかご立派な銃を持っているね。ますます興味が湧いてきたよ……」



 オリビアが俺の股間を見て、顔を赤らめながら呟く。またまたナニかあったんだろうか。何故毎度毎度眠っているときに……相変わらず損した気分だ。
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