ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第5話(2)役人からの依頼

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「ご歓談のところ、失礼いたします……」

「ん?」



 立派な着物を着た男性が声をかけてくる。背後に武装した兵士を二人連れている。身分が高い者だということが分かる。役人かなにかか? その男性がアヤカに視線を向ける。



「中央のアヤカ部隊長ですね?」

「はい、元ですが……」



 アヤカが苦笑交じりに頷く。男性が話を続ける。



「近頃のご活躍の噂も聞き及んでおります」

「ご活躍など……それほど大したことはしておりませんが」

「またまたご謙遜を……」

「いえ、本当のことですから……ちなみにどんな噂を?」

「珍妙な輩を従えて、厄介なモンスターをいくつも討伐されているとか……」

「キョウ様を珍妙? アンタ、灰になりたいのかえ?」

「ひえっ⁉」



 エリーがギロりと睨みを利かす。魔族のマジ睨みに男性が怯える。俺は止める。



「おい、やめろ、エリー……」

「しかし、キョウ様……」

「……っていうか、珍妙イコール俺なのか?」

「……」



 エリーは黙って俺から目を逸らす。おい。アヤカが口を開く。



「……むしろ従っているのは拙者の方なのですが」

「ええ……?」

「まあ、それはいいです。ご用件はなんでしょう?」

「ああ、実はお願いごとがございまして……」

「お願いごとですか?」

「ええ、お聞きいただけますでしょうか?」



 アヤカが俺に視線を向ける。俺は頷く。アヤカが男性に視線を戻す。



「とりあえず聞くだけなら……」

「ありがとうございます……実はモンスター討伐をお願いしたく……」

「モンスター討伐ですか?」

「はい。ここから南にある草原で、行商人などが多数襲われておりまして……」

「ふむ……」

「被害が甚大なのです。それをなんとかして頂きたく……」

「偉そうなお役人様が御自ら民間の者に頼ろうとするとは……この街の軍隊はもしかして弱卒の集まりでありんすか?」

「……」



 エリーの言葉に男性につき従う兵士二人の顔色が変わる。俺はエリーをたしなめる。



「やめろ、エリー……」

「そういうことを言いとうもなりんす」



 エリーがわざとらしく両手を広げる。男性が口を開く。



「……何度か討伐隊を編成して差し向けたのですが、ことごとく壊滅状態に追い込まれ、這う這うの体で逃げ帰ってくるのが精一杯でして……」

「この辺りにそれほどまでに強力なモンスターがいるとは……」

「大型のモンスターかね?」



 顎に手を当てるアヤカの脇からオリビアが口を出す。男性が首を左右に振る。



「いいえ……」

「しかし、仮にも軍隊が敵わないなんて……」

「恐るべき組織力を誇るのです……」

「組織力? それなりに訓練された軍隊を圧倒するほどの? う~ん……」



 オリビアが腕を組んで考える。男性が告げる。



「ゴブリンの群れです……」

「ゴブリン⁉」



 オリビアが驚く。エリーが高笑いする。



「あ~はっはっはっ!」

「お、おい、やめろ、エリー、笑うな……」

「笑いとうもなりんす。どんなものかと思えば、ゴブリン如きに苦戦するとは……」

「例えば大陸の方では、脅威的な強さを誇るゴブリンもいると聞くが?」

「ほう、よくご存知で……。ただ、それは極めて例外に近いケースでありんす。この辺境の地に生息するゴブリンなど、所詮はたかが知れています」



 アヤカの問いにエリーが答える。オリビアが補足する。



「この国のゴブリンはわりと大人しいと聞いたことがあるけどねえ……」

「しかし、現実に襲われておるのです!」

「う~ん……凶暴化でもしたのかな?」

「……他にも腕利きのモンスター狩りがこの街を訪れたでしょう。その者たちは?」

「もちろん、何組かに依頼はしましたが、ゴブリンの組織的な動きに翻弄され、あえなく返り討ちに遭いました……」



 アヤカの質問に男性が顔を俯かせながら答える。アヤカが俺に対して視線を向ける。



「キョウ殿……」

「うむ……困っている人たちを放ってはおけないな……」

「それでは……」

「俺は良いぞ。エリーは?」

「キョウ様の仰せの通りに……」

「オリビアはどうだ?」

「アタイも一向に構わないよ」

「……だそうだ」



 俺はアヤカを見つめる。アヤカが頷き、男性に向かって告げる。



「拙者たちがそのゴブリンの群れの討伐に向かいましょう」

「おお、ありがたい……!」



 かくして、俺たちは街を出て、南に広がる草原へと向かう。



「組織的なゴブリンねえ……」

「ゴブリンって、基本的に群れるものなんじゃないか?」

「統率のしっかりとれたゴブリンっていうのはなかなか珍しいんじゃないかな」



 俺の問いに対し、オリビアが答える。



「へえ、そういうものか」

「そういうものだよ。まあ、世界は広いからね。絶対っていうことはないと思うけど」

「そんな珍しいゴブリンなら、あちきのコレクションに加えるでありんす……」



 エリーが本を取り出して、表紙をトントンと叩く。先頭を歩くアヤカが呟く。



「まもなく、もっとも多く被害に遭った箇所に到着するぞ……!」

「ヒャッハー!」

「おおっ⁉」



 草むらからゴブリンが三匹、勢いよく飛び出してくる。



「ふん!」

「!」

「はあっ!」

「‼」

「そらっ!」

「⁉」



 アヤカとエリーとオリビアがゴブリンたちを一蹴する。ゴブリンたちがあっけなく倒れ込む。エリーとアヤカが揃って退屈そうに呟く。



「モンスターを出すまでものうござりんした……」

「弱すぎて、逆に気配を感じ取れなかったな……」

「統率の取れた動きか……なるほどね」

「オリビア、なにがなるほどなんだ?」

「こいつら……ゴブリンの振りをした人間だよ」

「ええっ⁉」



 俺は倒れている連中の方に視線を向ける。
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