ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第5話(4)成り行きでの共闘

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「と、とにかく、少し落ち着いて話し合おう……」

「その手には乗りません!」



 女ゴブリンが俺に視線を戻すと、俺との距離をあっという間に詰めてくる。俺が驚く。



「くっ!」

「遅いですよ!」

「むうっ!」

「!」



 女ゴブリンが拳を振るって俺に打撃を食らわせたが、反対に攻撃を食らってしまう。女ゴブリンは何が起こったのか理解出来ずに、自らの体を抑えてその場にしゃがみ込む。



「【特殊スキル:倍返しカウンターを発動しました】」



「まあ、とりあえず少し落ち着け……」

「くうっ!」

「おっと!」

「‼」



 手を差し伸べようと屈んだ俺に対し、女ゴブリンは体勢を立て直して、回し蹴りを食らわせようとする。鋭い蹴りだったか、俺はそれを弾いてみせる。女ゴブリンはよろめく。



「【特殊スキル:バリアを発動しました】」



「だからちょっと冷静になれ……」

「くっ……だったら、これならば!」

「うおっとっと!」

「⁉」



 女ゴブリンはなおも俺の伸ばした腕をガシッと掴んで、投げ飛ばそうと試みたが、俺の異常なほど柔らかくなった体に戸惑う。逆に俺が女ゴブリンの首を絞める。



「【特殊スキル:軟体化を発動しました】」



「このまま絞め落とすぞ……無駄な抵抗はやめておけ……」

「ぐうっ……」



 俺の脅しにも屈さず、女ゴブリンは大きい体をジタバタとさせる。俺は戸惑う。



「ご、強情だな……ん?」

「ど、どうやら形勢不利だ! ズ、ズラかるぞ……!」



 ゴブリンに扮した男が仲間を起こし、その場から離れようとする。



「しまった! 逃げられる! あっ!」

「ふ、ふん!」

「ちっ、絞めを緩めてしまった!」

「あっ……眼鏡が……!」



 俺から離れようとした際、女ゴブリンが眼鏡を落とす。男たちが逃げの体勢に入る。



「い、今のうちに……」

「うん……? ゴ、ゴブリンじゃない! ゴブリンの振りをした人間!」

「ええっ⁉」



 女ゴブリンが逃げようとする男たちを見つめて、ゴブリンのなりすましだと看破する。いや、眼鏡をかけていた意味よ……。



「そ、そうか、ゴブリンの振りをして、この辺で悪さを働いていたんですね!」

「理解が恐ろしく速いな!」



 俺はまたもや驚く。男たちが慌てて逃げる。



「に、逃げるぞ!」

「くっ! ま、待ちなさい!」

「待つやつはいねえよ!」

「ああっ!」

「ふん!」

「ぎゃああ⁉」



 男たちの悲鳴を上げて倒れ込む。甲冑を着た男たちがそれを一瞥して呟く。



「ふん、所詮はこの程度か……我々、『ゴブリンキラーズ』の敵ではないな……」

「ゴ、ゴブリンキラーズ⁉」

「む……まだ一匹残っているな……さっさと始末するか……」



 銀色の甲冑を着た男たちが、見るからに重々しい甲冑をカチカチと鳴らしながら、こちらに近づいてくる。この国の文化圏のそれとは異なる甲冑だ。よそからやってきた傭兵のようなものであろうか。女ゴブリンが慌てて声を上げる。



「ま、待ってください! わたしたち、この地域のゴブリンは争いを好みません!」

「黙れ! 遠く西方にあった我々の故郷は貴様らゴブリンの襲撃によって滅ぼされた……あの時誓ったのだ、貴様らゴブリンは全て駆逐すると! やや大型だな……包囲しろ!」



 甲冑を着た男が敵意をこれでもかとむき出しにしてくる。女ゴブリンもそれを肌で感じ取って困惑する。五人の男たちが統率のよく取れた動きで女ゴブリンを素早く包囲する。



「おい、とにかく眼鏡をかけろ」



 俺は眼鏡を拾って、女ゴブリンに渡す。女ゴブリンは戸惑い気味にそれを受け取る。



「あ、ありがとうございます……」

「連中、重そうな甲冑を着ても素早い動きだ……これはなかなかの手練れだぞ」

「そ、それはなんとなくですが、分かります……」

「成り行きだが……手助けさせてもらう。君が悪いゴブリンではないというのは戦ってみて分かった……俺はキョウ、君は?」

「ヴァ、ヴァネッサです……」

「そうか、ヴァネッサ……ちょっと待っていろ……」



「【特殊スキル:癒しの手かざしを発動しました】」



 俺がアヤカ、エリー、オリビアを回復させる。三人はゆっくりと立ち上がる。



「詳しい説明は後だ。俺たちはあの女ゴブリン……ヴァネッサと協力し、あの甲冑を着た男たち、『ゴブリンキラーズ』とやらを退けるぞ」

「……」



 三人は黙って頷き、甲冑を着た男たちに向き直る。男が苛立ちながら叫ぶ。



「……なんだかよく分からんが、貴様らも邪魔をするというのなら、容赦はせんぞ!」

「……両端から攻めてきます!」

「はあっ!」

「えいっ!」



 ヴァネッサの指示で、アヤカとエリーが甲冑を着た男たちを素早く打倒する。



「中央の男性の隣の男性、甲冑がきつそうです! はみ出たお肉を狙って!」

「了解!」



 またもヴァネッサの指示で、オリビアが甲冑を着た男の脇腹を撃つ。男はうずくまる。



「崩れたところを一気呵成に叩きます!」

「おおっ!」



 俺とヴァネッサが残りの甲冑を着た男たちを豪快に殴り倒す。



「がはあっ⁉」

「的確な指示だったぞ、ヴァネッサ……」



 その後、アヤカの報告と口利きもあり、この地域のゴブリンに危険性はないと判断。ゴブリンの集落と街の間で話し合いがもたれ、めでたく平穏が保たれることとなった。俺たちは集落に招かれ、酒宴に参加する。俺はゴブリンたちの勧める酒に酔ってしまった。



「ああ、大変です……隣で少し休みましょう」

「す、すまない、ヴァネッサ……? な、なんだか無性に眠くなってきた……はっ!」



 翌朝、俺はベッドの上で目が覚める。それを確認したヴァネッサが俺に告げる。



「なかなかいい勉強をさせていただきました……」



 ヴァネッサが俺の股間を見て、顔を赤らめながら呟く。またまたまたナニかあったんだろうか。なんで毎度毎度眠っているときに……相変わらず損した気分だ。

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