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第1章
第6話(2)ならず者たち
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「……キョウ殿、着きました」
「アヤカ、ここがこの国の東方で一番の街なのか?」
「……まあ、そうですね」
俺の問いにアヤカがやや間を空けてから頷く。オリビアが呟く。
「確かに、人々の往来もなかなかに活発のようだね……しかし……」
「しかし?」
「街の手前での検問はやや厳しかったね」
「ああ、そういえばそうだったな……」
俺は思い出しながら頷く。オリビアがアヤカに問う。
「……これはどういうことかな?」
「……正確に言えば、ここは自治領ということになる」
「自治領だって?」
「ああ、権力を持つ、とある領主一族のな」
「なるほど、それでは中央でのご威光もあまり意味を為さないというわけだ」
「ご威光があるかどうかはともかく……そういうことになる」
「ここに来る選択……ミスったんじゃない?」
オリビアが俺に問いかける。俺は肩をすくめる。
「そうかもしれないな……」
「いや、そうかもしれないなって……」
「性に合わないようなら、すぐにおさらばするさ」
「おい、てめえら……」
「うん?」
俺たちが視線を向けると、ならず者たちがそこには立っていた。
「見ねえ連中だな……組み合わせも妙だ。少し顔貸せや……」
ならず者たちの中心的人物だと思われる巨漢が路地裏に向かって顎をしゃくる。エリーがため息交じりに呟く。
「栄えているかもしれませんが、治安の方はあまりよくなさそうでありんすね……」
「あん……?」
「こんなならず者が絡んでくるとは……」
「だ、誰がならず者だって⁉」
「おや、ご自覚がない? 鏡でも見せんしょうか?」
「お、俺たちは自警団だ! むしろ治安を維持しているんだよ!」
「自警団が何の御用でありんすか?」
「お前らが見るからに怪しいからな。着物のお前はともかく、魔族にエルフにゴブリン……なにをどうしたらそういう組み合わせになる?」
「……教える必要がないでありんす」
「なんだと?」
「まあまあ、強いて言うなら、成り行きだよ」
「だったら、その成り行きを詳しく聞かせてもらおうじゃねえか……」
オリビアの言葉にならず者の中心的人物が笑みを浮かべる。ヴァネッサが困惑する。
「じ、尋問ですか? 自警団の方々にそこまでする権利があるとは思えませんが?」
「うるせえな、俺たちにはあるんだよ!」
「そ、そんな……」
「……」
「さあ、早くこっちに来い!」
「……従う必要はない」
「なにぃ?」
俺の言葉にならず者の中心的人物が顔をしかめる。俺は話を続ける。
「ヴァネッサの言う通り、単なる街の自警団にそこまでする権利などないだろう。俺たちがなにか問題のある行動を取ったというのならば話は別だが」
「むう……」
「そもそもとして……」
「ううん?」
「俺たちは断じて怪しい者などではない」
「い、いや、そういうてめえが一番怪しいんだよ!」
ならず者の中心的人物が俺のことを指差す。
「え?」
「え?じゃねえよ、なんだ、そのふざけた恰好は! 全裸じゃねえか!」
「……じろじろと見るなよ、いやらしいな」
「嫌でも目に入るわ! というか、よく検問を抜けたな、それで!」
それについては俺もそう思う。ただ、ここで退いては駄目だろう。強気だ。
「街に入れたんだから、問題はないということだ。無駄に絡んでくるのはやめてくれ」
「問題大ありだ! 検問の野郎どもの怠慢ぶりは、後々糾弾するとして……俺たちに逆らおうって言うならこちらも考えがある……!」
「考えだと?」
「ああ、お前ら! やっちまえ!」
中心的人物の言葉に従って、ならず者たちが俺たちを取り囲む。アヤカが俺に問う。
「キョウ殿、いかがなさいますか?」
「向かってくるのなら倒すまで……正当防衛だ」
「やってしまっていいんでありんすか?」
「エリー……ほどほどにしろよ」
「かかれ!」
「おおおっ!」
「はあっ!」
「なっ……⁉」
アヤカと交錯した何人かのならず者が倒れる。抜いた刀を鞘に納めたアヤカが呟く。
「安心しろ、峰打ちだ……」
うわっ、人生で出来れば一度は言ってみたいセリフを言っているじゃないかよ、なんか羨ましいな、アヤカ……。
「おおっ!」
「汚らわしい!」
「がはっ⁉」
エリーが自らに向かって迫ってきたならず者をビンタで張り倒す。おお、なんだかああいうのも羨ましいな、違った意味で……。
「おおおっ!」
「街中で発砲はマズいか……よっと!」
「!」
オリビアが拳銃のグリップ部分を器用に使って、ならず者を殴りつける。この程度の相手ならば、近距離戦でも十二分に戦うことが出来るんだな。
「お、お前ら……」
「降参した方が良いんじゃないか?」
「ま、まだ、俺がいる!」
「無理するなよ……」
「う、うるさい! うおおおっ!」
「キョウさん! 危ないです!」
「‼」
「やあっ!」
「⁉」
「あ、やりすぎてしまいました……」
俺に飛びかかってきた中心的人物が、ヴァネッサによって投げ飛ばされ、その巨体を宙に舞わせる。地面に叩きつけられ、苦しそうに呻く。
「う、うう……」
「それなりにタフではあるようだな……」
「く、くそっ……!」
中心的人物が体を起こし、向かってこようとする。
「……そこまでだ」
「なっ⁉」
「……?」
ある人物から声がかかり、中心的人物は動きを止める。俺たちも声をかけてきた人物に対して、視線を向ける。
「アヤカ、ここがこの国の東方で一番の街なのか?」
「……まあ、そうですね」
俺の問いにアヤカがやや間を空けてから頷く。オリビアが呟く。
「確かに、人々の往来もなかなかに活発のようだね……しかし……」
「しかし?」
「街の手前での検問はやや厳しかったね」
「ああ、そういえばそうだったな……」
俺は思い出しながら頷く。オリビアがアヤカに問う。
「……これはどういうことかな?」
「……正確に言えば、ここは自治領ということになる」
「自治領だって?」
「ああ、権力を持つ、とある領主一族のな」
「なるほど、それでは中央でのご威光もあまり意味を為さないというわけだ」
「ご威光があるかどうかはともかく……そういうことになる」
「ここに来る選択……ミスったんじゃない?」
オリビアが俺に問いかける。俺は肩をすくめる。
「そうかもしれないな……」
「いや、そうかもしれないなって……」
「性に合わないようなら、すぐにおさらばするさ」
「おい、てめえら……」
「うん?」
俺たちが視線を向けると、ならず者たちがそこには立っていた。
「見ねえ連中だな……組み合わせも妙だ。少し顔貸せや……」
ならず者たちの中心的人物だと思われる巨漢が路地裏に向かって顎をしゃくる。エリーがため息交じりに呟く。
「栄えているかもしれませんが、治安の方はあまりよくなさそうでありんすね……」
「あん……?」
「こんなならず者が絡んでくるとは……」
「だ、誰がならず者だって⁉」
「おや、ご自覚がない? 鏡でも見せんしょうか?」
「お、俺たちは自警団だ! むしろ治安を維持しているんだよ!」
「自警団が何の御用でありんすか?」
「お前らが見るからに怪しいからな。着物のお前はともかく、魔族にエルフにゴブリン……なにをどうしたらそういう組み合わせになる?」
「……教える必要がないでありんす」
「なんだと?」
「まあまあ、強いて言うなら、成り行きだよ」
「だったら、その成り行きを詳しく聞かせてもらおうじゃねえか……」
オリビアの言葉にならず者の中心的人物が笑みを浮かべる。ヴァネッサが困惑する。
「じ、尋問ですか? 自警団の方々にそこまでする権利があるとは思えませんが?」
「うるせえな、俺たちにはあるんだよ!」
「そ、そんな……」
「……」
「さあ、早くこっちに来い!」
「……従う必要はない」
「なにぃ?」
俺の言葉にならず者の中心的人物が顔をしかめる。俺は話を続ける。
「ヴァネッサの言う通り、単なる街の自警団にそこまでする権利などないだろう。俺たちがなにか問題のある行動を取ったというのならば話は別だが」
「むう……」
「そもそもとして……」
「ううん?」
「俺たちは断じて怪しい者などではない」
「い、いや、そういうてめえが一番怪しいんだよ!」
ならず者の中心的人物が俺のことを指差す。
「え?」
「え?じゃねえよ、なんだ、そのふざけた恰好は! 全裸じゃねえか!」
「……じろじろと見るなよ、いやらしいな」
「嫌でも目に入るわ! というか、よく検問を抜けたな、それで!」
それについては俺もそう思う。ただ、ここで退いては駄目だろう。強気だ。
「街に入れたんだから、問題はないということだ。無駄に絡んでくるのはやめてくれ」
「問題大ありだ! 検問の野郎どもの怠慢ぶりは、後々糾弾するとして……俺たちに逆らおうって言うならこちらも考えがある……!」
「考えだと?」
「ああ、お前ら! やっちまえ!」
中心的人物の言葉に従って、ならず者たちが俺たちを取り囲む。アヤカが俺に問う。
「キョウ殿、いかがなさいますか?」
「向かってくるのなら倒すまで……正当防衛だ」
「やってしまっていいんでありんすか?」
「エリー……ほどほどにしろよ」
「かかれ!」
「おおおっ!」
「はあっ!」
「なっ……⁉」
アヤカと交錯した何人かのならず者が倒れる。抜いた刀を鞘に納めたアヤカが呟く。
「安心しろ、峰打ちだ……」
うわっ、人生で出来れば一度は言ってみたいセリフを言っているじゃないかよ、なんか羨ましいな、アヤカ……。
「おおっ!」
「汚らわしい!」
「がはっ⁉」
エリーが自らに向かって迫ってきたならず者をビンタで張り倒す。おお、なんだかああいうのも羨ましいな、違った意味で……。
「おおおっ!」
「街中で発砲はマズいか……よっと!」
「!」
オリビアが拳銃のグリップ部分を器用に使って、ならず者を殴りつける。この程度の相手ならば、近距離戦でも十二分に戦うことが出来るんだな。
「お、お前ら……」
「降参した方が良いんじゃないか?」
「ま、まだ、俺がいる!」
「無理するなよ……」
「う、うるさい! うおおおっ!」
「キョウさん! 危ないです!」
「‼」
「やあっ!」
「⁉」
「あ、やりすぎてしまいました……」
俺に飛びかかってきた中心的人物が、ヴァネッサによって投げ飛ばされ、その巨体を宙に舞わせる。地面に叩きつけられ、苦しそうに呻く。
「う、うう……」
「それなりにタフではあるようだな……」
「く、くそっ……!」
中心的人物が体を起こし、向かってこようとする。
「……そこまでだ」
「なっ⁉」
「……?」
ある人物から声がかかり、中心的人物は動きを止める。俺たちも声をかけてきた人物に対して、視線を向ける。
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