ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第7話(3)財宝探し

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「……ねえ、例えば穴を掘ることが得意なモンスターはいないのかい?」

「いきなり何を言い出すかと思えば……」

「そうか……」



 エリーの反応にオリビアは鼻の頭を擦る。エリーはひと呼吸置いてから話す。



「いますよ、一応はね……」

「なんだよ、いるのかい」

「ええ」

「じゃあ、その子にちょっとお願いしてさ……」

「この大きな山を片っ端から掘って掘って掘りまくれと? さすがにそれは無理強いが過ぎると言うものでありんす……」



 エリーが周囲に向かって両手を大きく広げる。それを受けてオリビアはヴァネッサと目を合わせて微笑み合う。



「ふっ……」

「ふふっ……」

「……なんでありんすか?」

「いや、ヴァネッサの言った通り、優しいんだなと思って」

「ええ、エリーさんは意外と優しい方なんです」

「意外と?」

「実は……と言った方が良いかもしれません」



 そう言ってヴァネッサとオリビアが再度微笑み合う。エリーが声を上げる。



「魔族が優しいとかそういう笑えない冗談はやめておくんなんし!」

「は~い……」

「はいはい……」

「はいは伸ばさない! はいは一回で十分!」



 エリーが注意する。ヴァネッサは肩をすくめ、オリビアは顎をさすりながら頷く。



「……」

「キョウ殿……」

「アヤカ、どうした?」

「この財宝探し、なかなか骨が折れそうですよ」

「それは山に入る前からなんとなく思っていた……ウララは?」



 俺は周囲を見渡して尋ねる。アヤカが答える。



「まもなく戻ってきますよ……」

「え?」

「お待たせしたでござる……」

「うわっ⁉」



 いきなり背後にショッキングピンクの忍者が現れたので、俺は大げさに驚く。アヤカはそれには構わず、ウララに尋ねる。



「……どうだった?」

「……目ぼしいところは掘り尽くされていて、探索し尽くされたようでござるな」

「そうした連中は皆諦めたのか?」

「いいえ。現在は別のところに集結しつつあるでござる」

「集結だと? 何か他に目星を付けているのか?」

「……池でござる」

「池だと?」

「ええ、いくつかある内に、それなりに深い池があって、その池の底に財宝が眠っているのではないかと……」

「ふむ……池さらいとなってくると、なかなか難儀だな……」



 アヤカが顎に手を添える。俺は自らの裸体を指し示しながら口を開く。



「俺なら、どれくらい濡れたって別に構わないぞ」

「……潜水のご経験は?」

「……無いな」

「ええ、そうでしょうとも」

「……財宝狙いに随分と本気だな」

「いけませんか?」

「あるかどうかも分からないんだぞ? あくまでも噂話の範疇だ」

「火のない所になんとやら……と言うでしょう」

「ふむ……」



 俺は両手の親指を立て、両方の人差し指を差して、前に突き出す。そんな俺の様子を見て、アヤカが首を傾げる。



「キョウ殿? なにをしているのですか……?」

「ちょっと静かにしていてくれ……」



「【特殊スキル:お宝ゲッツ!を発動しました】」



「………」

「……あっちだ」



 俺はある方角を指差す。ウララが驚く。



「! 池とは真逆の方向でござるよ⁉」

「ウララ、ここは俺を信じてくれ」

「し、しかし……!」

「向かうとしよう」

「ア、アヤカ殿⁉」

「我々はキョウ殿に従うのが基本的な方針だ」

「……ありがとう」



 俺はアヤカに礼を言い、先頭を歩き出す。アヤカたちが俺の後に続く。

 恐らく、どんな迷宮でもお宝を見つけ出すことの出来るチートスキルなんだろう。ダウジングのつもりでポーズを取ってみたら、まさかダンディな方だとは思わなかったが。なにやら鼓動とは別のリズムが俺の体を揺らす。徐々にそのリズムが激しくなる。お宝に近づいているということだろう。俺はある洞窟の前で立ち止まる。アヤカが問う。



「……こちらですか?」

「そのようだな」

「いいや、ここは見ての通りの浅い洞窟で、既に調べ尽くされているようでござるよ」

「この洞窟の地面を掘るでありんすか? これくらいなら……」

「いや、地中も完全に掘り返されているでござる」

「むう……」



 ウララの言葉にエリーが黙る。

「キョウ殿……」

「いや、確かにこの辺のはずなんだよ、アヤカ。俺を信じてくれ」

「分かりました、それでは周囲を含めて……!」

「おやおや~? まさかこんなところに先客がいるとは……」



 立派な鎧を着た金髪の男と、その男を取り囲むように並ぶ4人の男女が現れる。



「……なんだ?」

「それはこっちの台詞だ。まさかこの場所を特定するとはな……」

「……冒険者のパーティーの類か」

「冒険者ね……まあ、今はそれでも良い。この地の財宝を得て、ここから俺たちの成功譚が華々しく始まるんだ。勇……」

「まあ、そんなことはどうでもいい……」

「むっ……」



 俺に言葉を遮られて金髪の男は露骨に不機嫌な顔を見せる。俺は提案する。



「ここにたどり着いたのは俺たちだけだ。お宝は山分けというのはどうだ……?」

「や、山分け⁉」

「ああ、ここで争っても仕方のないことだからな……」

「ふっ、ふふふっ……ふはははっ!」

「どうした?」

「お、お前らみたいなどこの馬の骨とも知れないような連中と財宝を山分けなんて馬鹿なことをするはずが無いだろう⁉」

「……ではどうする?」

「知れたこと……お前らを始末してから、この辺りをゆっくりと調べさせてもらう!」

「むう……!」

「お前ら、さっさとやってしまえ!」

「……!」



 金髪の男が号令を出す。金髪の男を取り囲んでいた4人が統制の取れた動きを見せる。アヤカが俺に問う。



「……いかがいたしますか?」

「……任せる。程々にな」

「はっ……!」

「……がはっ‼」



 アヤカの素早い刀による攻撃で、相手の剣士は剣を抜く前に倒れる。



「! はああっ!」

「へえ、格闘家か……接近戦は避けた方が無難だね……」

「!」

「銃弾より速い拳はそうは見ないからね……安心しな、急所は外しておいたから」



「! くっ!」

「『ポイズンスネーク』……適当に締め落として差し上げなんし……」

「‼」

「賢者さまなら、戦いを挑む相手をもっと慎重に見極めるべきでありんしたな……」



「‼ ちっ! ……あれっ⁉」

「探し物はこちらでござるか?」

「! つ、杖を返せ!」

「そうはいきません……! はあっ! えいっ!」

「⁉」

「杖が無ければ魔法を使えないというのでは、この先が思いやられるでござるよ……」



 オリビアとエリーとウララが、相手の格闘家、賢者、魔法使いをそれぞれ打倒する。



「なっ……」

「み、皆さんを連れて、撤退した方が賢明かと思いますが……」

「ふっ、ふざけるなよ!」

「あっ……」



 ヴァネッサの優しい言葉に対し、金髪の男はかえって逆上し、鞘から剣を抜く。



「く、食らえ!」

「! ええい!」

「ぼはっ⁉」

「あっ、し、死んでいないですよね……? だ、大丈夫かな?」



 ヴァネッサの拳を受け、金髪の男は後方に思いっきり吹き飛ばされる。
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