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第1章
第8話(2)衣に関して
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「……ふむ」
「あ、あの……オリビアさん?」
「なんだい?」
「なにをしているのですか?」
「なにをしているって……またおかしなことを聞くねえ、ヴァネッサ」
「お、おかしなことですか?」
「ここは服屋さんだよ」
オリビアが両手を広げる。ヴァネッサが珍しそうに呟く。
「服屋さん……」
「……まさか、服屋を知らないのかい?」
「え、ええ……」
「今まで服はどうしていたのさ?」
「は、母や祖母などに編んでもらいました……」
「へえ……ゴブリンにも結構手先が器用なのがいるんだねえ?」
「ま、まあ……」
「世界っていうのはやっぱり広いねえ……」
「じゅ、銃を扱うエルフさんというのもなかなか珍しいかと……」
「……」
「す、すみません……」
目を丸くするオリビアに対し、ヴァネッサが謝る。オリビアが笑う。
「ははっ、まあ、そう言われるとそうだね、それはお互い様か」
「こ、この服屋さん?でなにを?」
「新しいローブでも買おうかなっと……」
「あ、新しいローブですか」
「お気に入りのローブは銃弾で穴だらけだし――それはある意味自業自得なんだけど――この替えのローブももういつ買ったのかも思い出せないからねえ……」
「お、思い出せない?」
「うん、多分……ざっと五百年くらい前かな?」
「ご、五百年前⁉」
ヴァネッサが驚く。オリビアがそのリアクションを見て、笑みを浮かべながら話す。
「ははっ、冗談だよ。さすがにそこまでのヴィンテージもんじゃない」
「エ、エルフの方々は長命と聞きますから、あり得ない話ではないかと……」
「さすがに物持ちが良すぎだろう」
「……確かに臭いはあまりしませんね」
「え? 臭う? マメに洗っているつもりなんだけど……」
オリビアが自らの腕の臭いを嗅ぐ。ヴァネッサが笑う。
「ふふっ、冗談です」
「冗談かよ! おいおい、焦らせないでよ」
「そういうの気にされるんですね」
「そりゃあ、アタイも一応はうら若き乙女だからね」
「乙女……?」
「そこはせめてうら若きに反応してよ……」
首を傾げるヴァネッサに対し、オリビアが悲し気に目を細める。
「す、すみません……!」
「いや、マジで謝らないでよ、余計に悲しくなるからさ……」
「は、はあ……」
「……まあいいや。とにかくこのローブもそれなりに古いってのは間違いない。センスがちょっと今っぽくないなって気になっていたんだよ」
「あ、ああ、確かに……ダ、ダサいですよね……」
「ダ、ダサい⁉」
「は、はい……」
「またまた冗談を……」
「いえ、本心からの言葉です」
「ストレートな物言いだな! っていうか、そう思っていたのなら早く言ってよ! い、いいや、言わなくていい!」
「ど、どっちなんですか?」
「ヴァネッサ、君はまず『オブラートに包む』という言葉を覚えた方が良いよ」
「はあ……」
「君よりちょっとだけ長く生きている者からのアドバイスだ」
オリビアがウインクする。ヴァネッサが首を傾げる。
「……ちょっとだけ?」
「だから、そういうところだよ!」
「ご、ごめんなさい、世間知らずで……」
「……まあいいさ、段々と覚えていけば良い……」
申し訳なさそうにするヴァネッサにオリビアが声をかける。
「……それにしても……」
「どうかしたのかい?」
「い、いえ、ゴブリンの私を見ても、ここの方々は怯えたりはしていませんね……」
「ヴァネッサが根は優しいゴブリンだと見抜いているんじゃないのかい? 客商売はそういう観察眼が養われるからね」
「で、でも、邪悪なエルフであるオリビアさんのことを見ても、なにも反応しないのは……節穴なんじゃないですか?」
「誰が邪悪だ。勝手にダークエルフにするなよ」
「す、すみません、半分冗談です」
「半分は本気ってこと⁉ ……まあ、正直に言えばこれだよ、これ」
オリビアが右手の人差し指と親指で小さい丸を作る。ヴァネッサが首を捻る。
「これ?」
「金だよ、金。世の中っていうのはね、金を持っている奴のことはそうそう無下には扱わないもんなんだ。覚えておきな」
「そ、そうなんですか……」
「しかし、ここはなかなか品揃えが良い。あっ、ヴァネッサ……下着は着けている?」
「! い、いえ、そういうのは……」
ヴァネッサが少し恥ずかしそうにする。オリビアが悪そうな笑みを浮かべる。
「せっかくだ。買った方が良いよ。サイズなどを測ってもらえば、合うように仕立ててくれるだろう。この中からどれか気に入ったものを選びな」
「え……じゃ、じゃあ、これを……」
「⁉ け、結構大胆なものを迷いなく選ぶね……お姉さん、ちょっと驚いちゃったよ」
ヴァネッサが指し示した下着を見て、オリビアはやや困惑する。
「あ、あの……オリビアさん?」
「なんだい?」
「なにをしているのですか?」
「なにをしているって……またおかしなことを聞くねえ、ヴァネッサ」
「お、おかしなことですか?」
「ここは服屋さんだよ」
オリビアが両手を広げる。ヴァネッサが珍しそうに呟く。
「服屋さん……」
「……まさか、服屋を知らないのかい?」
「え、ええ……」
「今まで服はどうしていたのさ?」
「は、母や祖母などに編んでもらいました……」
「へえ……ゴブリンにも結構手先が器用なのがいるんだねえ?」
「ま、まあ……」
「世界っていうのはやっぱり広いねえ……」
「じゅ、銃を扱うエルフさんというのもなかなか珍しいかと……」
「……」
「す、すみません……」
目を丸くするオリビアに対し、ヴァネッサが謝る。オリビアが笑う。
「ははっ、まあ、そう言われるとそうだね、それはお互い様か」
「こ、この服屋さん?でなにを?」
「新しいローブでも買おうかなっと……」
「あ、新しいローブですか」
「お気に入りのローブは銃弾で穴だらけだし――それはある意味自業自得なんだけど――この替えのローブももういつ買ったのかも思い出せないからねえ……」
「お、思い出せない?」
「うん、多分……ざっと五百年くらい前かな?」
「ご、五百年前⁉」
ヴァネッサが驚く。オリビアがそのリアクションを見て、笑みを浮かべながら話す。
「ははっ、冗談だよ。さすがにそこまでのヴィンテージもんじゃない」
「エ、エルフの方々は長命と聞きますから、あり得ない話ではないかと……」
「さすがに物持ちが良すぎだろう」
「……確かに臭いはあまりしませんね」
「え? 臭う? マメに洗っているつもりなんだけど……」
オリビアが自らの腕の臭いを嗅ぐ。ヴァネッサが笑う。
「ふふっ、冗談です」
「冗談かよ! おいおい、焦らせないでよ」
「そういうの気にされるんですね」
「そりゃあ、アタイも一応はうら若き乙女だからね」
「乙女……?」
「そこはせめてうら若きに反応してよ……」
首を傾げるヴァネッサに対し、オリビアが悲し気に目を細める。
「す、すみません……!」
「いや、マジで謝らないでよ、余計に悲しくなるからさ……」
「は、はあ……」
「……まあいいや。とにかくこのローブもそれなりに古いってのは間違いない。センスがちょっと今っぽくないなって気になっていたんだよ」
「あ、ああ、確かに……ダ、ダサいですよね……」
「ダ、ダサい⁉」
「は、はい……」
「またまた冗談を……」
「いえ、本心からの言葉です」
「ストレートな物言いだな! っていうか、そう思っていたのなら早く言ってよ! い、いいや、言わなくていい!」
「ど、どっちなんですか?」
「ヴァネッサ、君はまず『オブラートに包む』という言葉を覚えた方が良いよ」
「はあ……」
「君よりちょっとだけ長く生きている者からのアドバイスだ」
オリビアがウインクする。ヴァネッサが首を傾げる。
「……ちょっとだけ?」
「だから、そういうところだよ!」
「ご、ごめんなさい、世間知らずで……」
「……まあいいさ、段々と覚えていけば良い……」
申し訳なさそうにするヴァネッサにオリビアが声をかける。
「……それにしても……」
「どうかしたのかい?」
「い、いえ、ゴブリンの私を見ても、ここの方々は怯えたりはしていませんね……」
「ヴァネッサが根は優しいゴブリンだと見抜いているんじゃないのかい? 客商売はそういう観察眼が養われるからね」
「で、でも、邪悪なエルフであるオリビアさんのことを見ても、なにも反応しないのは……節穴なんじゃないですか?」
「誰が邪悪だ。勝手にダークエルフにするなよ」
「す、すみません、半分冗談です」
「半分は本気ってこと⁉ ……まあ、正直に言えばこれだよ、これ」
オリビアが右手の人差し指と親指で小さい丸を作る。ヴァネッサが首を捻る。
「これ?」
「金だよ、金。世の中っていうのはね、金を持っている奴のことはそうそう無下には扱わないもんなんだ。覚えておきな」
「そ、そうなんですか……」
「しかし、ここはなかなか品揃えが良い。あっ、ヴァネッサ……下着は着けている?」
「! い、いえ、そういうのは……」
ヴァネッサが少し恥ずかしそうにする。オリビアが悪そうな笑みを浮かべる。
「せっかくだ。買った方が良いよ。サイズなどを測ってもらえば、合うように仕立ててくれるだろう。この中からどれか気に入ったものを選びな」
「え……じゃ、じゃあ、これを……」
「⁉ け、結構大胆なものを迷いなく選ぶね……お姉さん、ちょっと驚いちゃったよ」
ヴァネッサが指し示した下着を見て、オリビアはやや困惑する。
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