ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第8話(4)己に関して

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「ふう……」



 俺は一息つく。ここはサウナルームだ。この国の軍の保養施設が、俺たちが訪れた街の近くにあり、財宝を得た俺たちはそこに滞在することに決めた。利用料を支払えば――元軍人であるアヤカの口添えも大きかったが――施設をほとんど自由に利用出来るのだ。

 俺はこの世界に転移してきてから初めて、サウナというものを堪能している。流れ出る大量の汗とともに、疲れも抜けていくようだ……。まあ、ぶっちゃけてしまうと、多く所持しているチートスキルの中に、疲労回復、もしくは軽減用のスキルも恐らくはあるんだろう。確認していないから分からないが。ただ、スキルを使うというのもなんだか味気ない。こういう場所で疲労を取るというのが、なんだか人間味がある。いや、今の俺はゲーム世界の住人なのだから、果たして人間だと言って良いのだろうか、なんとも曖昧なところがあるが……。まあ、難しいことを考えるのは止めにしておこう。



「今の俺は、『レジェンドオブインフィニティ』のキョウだ。それ以外にない……キョウとして、今後どのように振る舞っていくべきかを考えよう……」



 俺は腕を組む。まあ、ゲーム世界に転生……こういう機会は滅多にあるものではない――いや、しょっちゅうあっても困るのだが――せっかくだから自由に生きるのが一番だ。だがしかし、自由に生きると言っても、何らかの行動指針というものは必要だろう。行き当たりばったりというのはあまり良くない。それで上手くいくとは到底思えないからな。



「まあ、俺一人だったのなら、そういうのもありだったかもしれないが……」



 俺は少し斜め上方に視線を向ける。そう、今の俺には『仲間』のような存在がいるのだ。はっきり仲間だと断言しないのは、「え、違いますけど……」とか言われたら恥ずかしいからだ。そんなことは恐らくないとは思うのだが。一応、保険をかけておくに越したことはないだろう。俺は保険をかけた上で呟く。



「……彼女たちは俺のことを慕ってくれているようだしな……」



 そう、なんて言ったって、どうやらナニかがあったみたいだからな、彼女たち、それぞれと……。決まって俺の意識が無い時なのだが……。元の世界でのそういった経験が圧倒的に少ない為――自分で言っていて悲しくなるのだが――少なくとも好ましくは思っていないと、そういう関係性には発展しないはずだ。俺のことを好意的に思って集まっているメンバーについて思いをはせる。



「ふむ……」



 アヤカ……剣の達人だ。この国きっての名家の出身らしいが、それらを捨てて、俺についてきてくれた。冷静な判断力の持ち主で頼りになる。少々融通が利かないが……。

 エリー……魔族の者だ。モンスターを使役出来る。あくまでも俺の予想でしかないが、かなり強力なモンスターをまだまだ隠し持っているのではないだろうか? それを隠している? まあ、手の内は容易に見せない方が良いから、エリーのスタンスは間違ってはいない。少し、相手を侮りがちなのが玉に瑕だな……。

 オリビア……エルフだ。しかし、銃を使うのが好きなようだ。変わったエルフもいるものだ。お前がエルフの何を知っているんだと言われたら、それまでなのだが……。俺に対して、好意や興味関心があるというよりは、金になりそうだから一緒についてきているという節がある……。まあ、そういう行動原理のやつが一人くらいいても良いだろう……。

 ヴァネッサ……ゴブリンだ。大柄で、力も強い。ああいうゴブリンもいるのだな……。まあ、ゴブリンについて詳しいわけではないのだが……。少しおとなしめだが、内側の芯はとてもまっすぐだと思う。純粋さを感じる。パーティーメンバーには、彼女のような者が居ても良い。見聞を広めることで、その純粋さが失われてしまうのは惜しいが、逆に得られるものもあるだろう。彼女自身はもちろん、俺たちにとっても……。

 ウララ……忍者だ。ぽっちゃりしているが。ただ、『人は見かけによらない』という言葉を彼女によって実感させられている……。隠密行動や諜報活動は今後も大いに助けになるはずだ。ショッキングピンクの忍者服は流石にどうかと思うが……。それも自由だ。

 イオ……ライオンの獣人だ。ネコの獣人だと思い込まされて育ったらしい。そんなことがあるんだな……。心の奥底に眠っているであろう野性味を解放してくれれば、きっと俺たちの助けになるはずだ……。暴走しないように気を付けなければならないがな……。



「……彼女たちとともに旅を続ける! それが目下の行動指針かな……。良いのかな、これで? しかし、なかなかこれだ!というのも思い付かないからな……」



 俺は腕を組んでうんうんと頷く。



                  ♢

「……財宝はまんまと奪われてしまいました。イオまでも奴らになびいてしまい……しかし、奴らは必ずや障害になります! まずは『山王』様、御自らの出馬で奴らの排除を! このジャック、お供つかまつります!」



 とある山奥で、ジャックが片膝をついて首を垂れる。
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