ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第9話(3)悪い足癖

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「よくやったぜ、イチロー!」

「さて、どんどん行くぜ……」

「ちょ、ちょっと待て!」

「ああん?」

「ここは下がれ!」

「……なんでだよ?」

「お前も自分で言っていただろうが! これはあくまでも肩慣らしだ、他に譲れ」

「だからなんでお前に従わねえといけねえんだよ……」

「何度も言わせんな! この場で俺の言うことはあの御方の言葉だと思え!」

「ちっ……」



 イチローが舌打ちをしながら下がる。ジャックが顎をさする。



「ったく……」

「な、なんだか揉めているみたいですね……」



 ヴァネッサがジャックたちの様子を見ながら呟く。



「ああ、そのようだねえ、今の内に一気に決めさせてもらおうか……!」



 オリビアが拳銃を取り出し、素早く発砲する。



「!」

「なにっ……⁉」

「オ、オリビアさんの銃弾が……⁉」



 オリビアとヴァネッサが揃って驚く。オリビアの放った銃弾が撃ち落とされたからである。ジャックが額に流れる汗を拭いながら笑う。



「へ、へへっ、ロクな挨拶も無しにいきなり発砲してくるとは、焦らせやがってよ……」

「発砲音はしなかった……一体どうやった?」



 オリビアが首を傾げる。ジャックが問う。



「なんだ、気になるか?」

「そりゃあね……」

「おい、ジロー、前に出ろ!」

「……」



 ジャックの呼びかけに応じ、ジローと呼ばれた小柄な男性が前にゆっくりと進み出る。



「お、おい、なにか返事をしろよ」

「そんな義務はない……」

「ぎ、義務っていうか、ちゃんと聞いているのか気になるだろうが」

「こうして前に出たのが答えだ。お前の目は節穴なのか?」

「! な、なにを……!」

「……それよりもなにか一言無いのか?」

「ああ?」

「今、守ってやっただろう」

「あ、ああ……よくやったな」

「……そこは『ありがとうございます』だろう?」

「なっ⁉ 今の俺はあの御方の代理のようなものだ、頭を下げるわきゃねえだろう!」

「ふん、まあいい。うるさいからちょっと黙っていろ。さっさと終わらせてやる……」

「くっ……」



 ジローの言葉を受けてジャックは黙る。オリビアが目を細めて呟く。



「この小柄な男が銃弾を撃ち落としたのか? 丸腰じゃないか……」

「銃使いのエルフとは随分と珍しいな。厄介そうなお前から始末する……」

「‼」

「……!」

「ぐっ⁉」



 再び拳銃を発砲しようとしたオリビアだったが、その手に、短い矢が刺さる。



「なかなかの早撃ちのようだが、それでも遅いな……」

「ど、どこから矢を……?」

「それを知る必要はない……!」

「うぐっ⁉」



 オリビアの左腕に矢が刺さる。ジローが感心したように呟く。



「心臓を狙ったが、わずかにかわしたか……しぶといな」

「あ、足のつま先に矢を仕込んでいるのか……」

「ほう、気がついたか……」

「キ、キックの要領で足を振れば、矢が放たれる……極端に言えば、構えや予備動作もほとんど必要としない……確かに早撃ちだ……」

「鋭い洞察力だな、それなりの狙撃手だということが分かる……」

「はははっ! どうだ! これが、『弓脚のジロー』だ!」

「わざわざ洞察を補強してやるな……」



 ジローがジャックを睨み付ける。ジャックがわずかに怯む。



「む、むう……」

「くそっ……」

「今度こそとどめだ……」

「待てよ、ジロー……エルフは美形だ。あの御方に献上すれば覚えもめでたいぜ?」

「イチロー……単にお前が楽しみたいだけだろうが」

「へっ、バレたか……」

「まあいい……膝でも射抜いて動きを完全に封じるとするか……」

「オ、オリビアさん! 危ない!」



 ヴァネッサが足をドタバタとさせて、大きな土煙を起こす。ジローとオリビアの間の視界が遮られる。ジローが舌打ちする。



「ちっ、ゴブリンめ、小癪な真似を……」

「も、もらいました!」

「ふん!」

「ぐはっ⁉」



 横から勢いよく飛びかかったヴァネッサだったが、ジローの強烈な回し蹴りを食らう。その脇腹には矢が刺さっている。



「かかとからも矢が出るようになっているんだよ……!」

「ぐ、ぐうっ……!」



 ヴァネッサが後ろに吹っ飛ばされ、オリビアは膝をつく。
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