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第二章
第2レース(1)オーナーの意向
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2
「そうですか」
瑞穂が頷く。炎仁が戸惑いながら瑞穂に尋ねる。
「い、良いんですか⁉」
「なにが?」
「だ、だって、次って今週末ですよね?」
「そうなるわね」
「そ、それって……いわゆる連闘ってやつじゃないですか?」
「まあ、そういうことになるかしら」
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫もなにも、お前がスタート直後に落竜したろうが」
「うぐっ⁉」
環太郎の言葉に炎仁はギクリとする。
「お陰様でほとんど疲れは残ってねえよ」
「は、ははっ……」
環太郎の皮肉に炎仁は苦笑する。環太郎が瑞穂に問う。
「竜主さんのお考えはどうだい?」
「特に異論はありません」
「よし、決まりだ。小僧、そのつもりでいろ」
環太郎が炎仁に告げる。炎仁は困惑する。
「えっ、い、良いんですか?」
「……何がだよ?」
「い、いや、俺が続けて騎乗しても……」
「あれだけの素質を持ったドラゴンだ。本音を言っちまえば、お前みたいなペーペーには任せたくはねえよ」
「や、やっぱり……」
「なんだ、降りたいのか?」
「い、いえ!」
環太郎の問いに対し、炎仁は激しく首を振る。
「ならせいぜい頑張れや」
「は、はい……」
「……ボーっと突っ立ってねえで、スタートの練習でもしてこい!」
「は、はい!」
炎仁が慌てて部屋から出ていく。環太郎がため息をつく。
「乗り替わり出来るもんならさせてえよ……」
「ふふっ……」
「なにがおかしい?」
環太郎が瑞穂に問う。
「口ではそんなことを言いながらも、彼に続けてチャンスをあげて優しいなと思いまして。新人がせっかく任されたドラゴンを取り上げられたりしたら、モチベーションを低下させてしまう恐れもありますから」
「ふん……」
環太郎が酒を一口飲む。瑞穂が笑顔で続ける。
「まあ、乗り替わりさせたくても出来ないですよね。このところ、トップクラス、またはそれに準ずるジョッキー達から、先生は敬遠されていますし」
「むぐっ⁉」
「ちなみにわたくしも敬遠している側になります」
「お、お前さんはキツいこと言いやがるな⁉」
「そうですか?」
「そうだよ、新人の頃のかわいげはどこ行きやがった?」
「最近、実家の経営にも本格的に携わるようになって、少しシビアになりましたかね?」
瑞穂は首を傾げる。環太郎が笑う。
「はっ、経営者目線ってやつか」
「大げさな気もしますが、それに近いかもしれません」
瑞穂は腕を組んで頷く。環太郎が再びため息をつく。
「お前さんあたりに頼めるもんなら頼みてえんだがな……」
「わたくしはオーナーサイドの人間ですから、あのドラゴンには乗れませんよ」
「んなことは分かっているよ」
「そして、あのグレンノイグニース号に最優先に騎乗するのは、紅蓮炎仁君というのが、わたくしからのオーダーです」
「オーナー様の意向は無視出来ねえからな……しかし、本当に良いのか?」
「彼はイグニースを孵化の頃から世話しています。イグニースも彼によく懐いている。ベテランのジョッキーでもなかなか構築しにくい『人竜一体』という関係性を紅蓮君は築き上げています。その辺はお気づきではありませんか?」
「まあ、それくらいは察しているよ……」
瑞穂の問いかけに環太郎が頷く。
「そういう点を踏まえても、ジョッキーとしてイグニースのポテンシャルを引き出せるのは彼以上の存在はいないと思います」
「随分と評価するな、あの小僧を。そうだ、ちょっとあいつにアドバイスしてやってくれよ」
「お断りします。わたくしも一応現役のジョッキー、敵に塩を送るような真似はしません」
「シ、シビアだねえ……」
環太郎が瑞穂の答えに苦笑する。
「そうですか」
瑞穂が頷く。炎仁が戸惑いながら瑞穂に尋ねる。
「い、良いんですか⁉」
「なにが?」
「だ、だって、次って今週末ですよね?」
「そうなるわね」
「そ、それって……いわゆる連闘ってやつじゃないですか?」
「まあ、そういうことになるかしら」
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫もなにも、お前がスタート直後に落竜したろうが」
「うぐっ⁉」
環太郎の言葉に炎仁はギクリとする。
「お陰様でほとんど疲れは残ってねえよ」
「は、ははっ……」
環太郎の皮肉に炎仁は苦笑する。環太郎が瑞穂に問う。
「竜主さんのお考えはどうだい?」
「特に異論はありません」
「よし、決まりだ。小僧、そのつもりでいろ」
環太郎が炎仁に告げる。炎仁は困惑する。
「えっ、い、良いんですか?」
「……何がだよ?」
「い、いや、俺が続けて騎乗しても……」
「あれだけの素質を持ったドラゴンだ。本音を言っちまえば、お前みたいなペーペーには任せたくはねえよ」
「や、やっぱり……」
「なんだ、降りたいのか?」
「い、いえ!」
環太郎の問いに対し、炎仁は激しく首を振る。
「ならせいぜい頑張れや」
「は、はい……」
「……ボーっと突っ立ってねえで、スタートの練習でもしてこい!」
「は、はい!」
炎仁が慌てて部屋から出ていく。環太郎がため息をつく。
「乗り替わり出来るもんならさせてえよ……」
「ふふっ……」
「なにがおかしい?」
環太郎が瑞穂に問う。
「口ではそんなことを言いながらも、彼に続けてチャンスをあげて優しいなと思いまして。新人がせっかく任されたドラゴンを取り上げられたりしたら、モチベーションを低下させてしまう恐れもありますから」
「ふん……」
環太郎が酒を一口飲む。瑞穂が笑顔で続ける。
「まあ、乗り替わりさせたくても出来ないですよね。このところ、トップクラス、またはそれに準ずるジョッキー達から、先生は敬遠されていますし」
「むぐっ⁉」
「ちなみにわたくしも敬遠している側になります」
「お、お前さんはキツいこと言いやがるな⁉」
「そうですか?」
「そうだよ、新人の頃のかわいげはどこ行きやがった?」
「最近、実家の経営にも本格的に携わるようになって、少しシビアになりましたかね?」
瑞穂は首を傾げる。環太郎が笑う。
「はっ、経営者目線ってやつか」
「大げさな気もしますが、それに近いかもしれません」
瑞穂は腕を組んで頷く。環太郎が再びため息をつく。
「お前さんあたりに頼めるもんなら頼みてえんだがな……」
「わたくしはオーナーサイドの人間ですから、あのドラゴンには乗れませんよ」
「んなことは分かっているよ」
「そして、あのグレンノイグニース号に最優先に騎乗するのは、紅蓮炎仁君というのが、わたくしからのオーダーです」
「オーナー様の意向は無視出来ねえからな……しかし、本当に良いのか?」
「彼はイグニースを孵化の頃から世話しています。イグニースも彼によく懐いている。ベテランのジョッキーでもなかなか構築しにくい『人竜一体』という関係性を紅蓮君は築き上げています。その辺はお気づきではありませんか?」
「まあ、それくらいは察しているよ……」
瑞穂の問いかけに環太郎が頷く。
「そういう点を踏まえても、ジョッキーとしてイグニースのポテンシャルを引き出せるのは彼以上の存在はいないと思います」
「随分と評価するな、あの小僧を。そうだ、ちょっとあいつにアドバイスしてやってくれよ」
「お断りします。わたくしも一応現役のジョッキー、敵に塩を送るような真似はしません」
「シ、シビアだねえ……」
環太郎が瑞穂の答えに苦笑する。
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