40 / 50
第一幕
第10話(3)初心を取り戻す
しおりを挟む
♢
「というわけで修行だね!」
「ああ……」
「ええ……」
ロビンの明るさに対し、瑠璃と鶯は暗い声色で答える。
「ちょっと、ちょっと! 二人とも、テンション低くない~?」
「だってそれは……」
「無理もないわよ……」
「なにが無理もないの?」
ロビンの問いに鶯が首を傾げる。
「修行と言われても一体何をすれば良いのか……」
「そう、それよ」
瑠璃がうんうんと頷く。
「そりゃあ決まっているでしょう!」
「ロビン、分かるの?」
「修行って言ったら、山よ!」
「……」
「………」
「え? 分からない? 山よ?」
「えっと……」
「や・ま」
「いや、一文字ずつ言わなくても分かるから……」
瑠璃が手をゆっくりと左右に振る。
「ああそう」
「ええ」
「それならば話は早いわ」
「話がまず見えないのよ」
「なによ?」
「山でどうするの?」
「山ごもりよ」
「山ごもり?」
「そうよ」
「……何をするのよ?」
「ひたすら滝に打たれて……」
「ひたすら?」
「そう、ひたすら」
「……アンタ、そういうの一番苦手じゃないの」
瑠璃が冷ややかな視線を向ける。
「む……」
「……まあ、いいわ、他には何をするつもりなの?」
「他に?」
「ええ、まさかずっと滝に打たれていたら風邪をひいちゃうだけだし」
「ふふっ、よくぞ聞いてくれました!」
「あんまり聞きたくはないけど……」
「それはあれだよ、薪割り!」
「薪割り?」
「うん、斧でこうやって……」
ロビンが振りかぶってみせる。
「……アンタ、今まで生きてて斧なんかまともに使ったことないでしょ? それで薪割りなんか出来るわけがないじゃないの」
「むう……コ、コツさえ掴めば!」
「三日間しかないのよ? コツを掴む前に三日間が終わってしまうわ」
「そんなのやってみなくちゃ分かんないじゃん!」
「……仮に出来たとしてなにをするの?」
「薪を使って火起こしだよ!」
「アンタ火起こしのやり方分かるの?」
「むう……」
「大体火を起こして何をするの?」
「りょ、料理を作ったりするのに必要じゃん!」
「アンタ料理出来ないでしょ」
「むぐ……」
「そもそもとして……」
瑠璃が周囲を見回す。
「な、なに?」
「この辺に目ぼしい山が見当たらないじゃない」
「あ、あれとか!」
ロビンが指を差す。瑠璃がため息交じりで答える。
「あれは山じゃなくて丘でしょ」
「む、むう……」
「アンタの修行ごっこは出来そうにないわね……」
「う、うわーん! 鶯姉、瑠璃姉がいじめるよー!」
ロビンが鶯に抱き着く。鶯がロビンの頭を撫でる。
「あらあら、よしよし……」
「鶯姉、甘やかさないで」
「いや、そういうつもりではなかったのだけど……」
鶯がロビンを離す。瑠璃が尋ねる。
「鶯姉はなにか思い付かない? 修行の方法……」
「う、う~ん……瑠璃は何か思いついた?」
「あの丘の坂道……」
「ええ、あるわね……」
「あそこをダッシュするっていうのはどう?」
「わ、わりとシンプルね……」
鶯が戸惑う。瑠璃が腕を組む。
「こういうのはシンプルイズベストよ」
「確かにそれはそうかもしれないわね」
「え~しんどいのは嫌だよ」
ロビンがうんざりしたような顔になる。瑠璃が呆れた視線を向ける。
「滝に打たれたいとかなんとか言ってなかった?」
「それとこれとは話が別だよ~」
「アンタねえ……」
「……まあ、どうせなら楽しみながらのが良いかなと思うわ」
鶯が口を開く。瑠璃が首を捻る。
「楽しみながら? 例えば?」
「アタシたちのスキルはそれぞれ、【演奏】、【歌唱】、【舞踊】でしょう?」
「ええ、そうね」
「これは音に関係するスキルと言っても良いわ」
「ああ、そうとも言えるわね……」
「気兼ねなく音を出せる丘の上は修行場所になかなか良いんじゃないかしら?」
「ふむ、そういう考え方もあるわね……」
瑠璃がふむふむと頷く。ロビンが再び鶯に抱き着く。
「さすが鶯姉! 話が分かる~!」
「……瑠璃はどうかしら?」
「……なにがスキルアップに繋がるか分からないから……とにかくひたすら、歌ってみて、演奏してみて、踊ってみて……音を出してみるしかないわね。こうして考えてみると、何のことはないわ。ただ初心に帰るだけのことね」
「おおっ、確かに……」
「ふふっ、まさか異世界で初心を取り戻すとはね……」
瑠璃の言葉にロビンは頷き、鶯が微笑む。
「というわけで修行だね!」
「ああ……」
「ええ……」
ロビンの明るさに対し、瑠璃と鶯は暗い声色で答える。
「ちょっと、ちょっと! 二人とも、テンション低くない~?」
「だってそれは……」
「無理もないわよ……」
「なにが無理もないの?」
ロビンの問いに鶯が首を傾げる。
「修行と言われても一体何をすれば良いのか……」
「そう、それよ」
瑠璃がうんうんと頷く。
「そりゃあ決まっているでしょう!」
「ロビン、分かるの?」
「修行って言ったら、山よ!」
「……」
「………」
「え? 分からない? 山よ?」
「えっと……」
「や・ま」
「いや、一文字ずつ言わなくても分かるから……」
瑠璃が手をゆっくりと左右に振る。
「ああそう」
「ええ」
「それならば話は早いわ」
「話がまず見えないのよ」
「なによ?」
「山でどうするの?」
「山ごもりよ」
「山ごもり?」
「そうよ」
「……何をするのよ?」
「ひたすら滝に打たれて……」
「ひたすら?」
「そう、ひたすら」
「……アンタ、そういうの一番苦手じゃないの」
瑠璃が冷ややかな視線を向ける。
「む……」
「……まあ、いいわ、他には何をするつもりなの?」
「他に?」
「ええ、まさかずっと滝に打たれていたら風邪をひいちゃうだけだし」
「ふふっ、よくぞ聞いてくれました!」
「あんまり聞きたくはないけど……」
「それはあれだよ、薪割り!」
「薪割り?」
「うん、斧でこうやって……」
ロビンが振りかぶってみせる。
「……アンタ、今まで生きてて斧なんかまともに使ったことないでしょ? それで薪割りなんか出来るわけがないじゃないの」
「むう……コ、コツさえ掴めば!」
「三日間しかないのよ? コツを掴む前に三日間が終わってしまうわ」
「そんなのやってみなくちゃ分かんないじゃん!」
「……仮に出来たとしてなにをするの?」
「薪を使って火起こしだよ!」
「アンタ火起こしのやり方分かるの?」
「むう……」
「大体火を起こして何をするの?」
「りょ、料理を作ったりするのに必要じゃん!」
「アンタ料理出来ないでしょ」
「むぐ……」
「そもそもとして……」
瑠璃が周囲を見回す。
「な、なに?」
「この辺に目ぼしい山が見当たらないじゃない」
「あ、あれとか!」
ロビンが指を差す。瑠璃がため息交じりで答える。
「あれは山じゃなくて丘でしょ」
「む、むう……」
「アンタの修行ごっこは出来そうにないわね……」
「う、うわーん! 鶯姉、瑠璃姉がいじめるよー!」
ロビンが鶯に抱き着く。鶯がロビンの頭を撫でる。
「あらあら、よしよし……」
「鶯姉、甘やかさないで」
「いや、そういうつもりではなかったのだけど……」
鶯がロビンを離す。瑠璃が尋ねる。
「鶯姉はなにか思い付かない? 修行の方法……」
「う、う~ん……瑠璃は何か思いついた?」
「あの丘の坂道……」
「ええ、あるわね……」
「あそこをダッシュするっていうのはどう?」
「わ、わりとシンプルね……」
鶯が戸惑う。瑠璃が腕を組む。
「こういうのはシンプルイズベストよ」
「確かにそれはそうかもしれないわね」
「え~しんどいのは嫌だよ」
ロビンがうんざりしたような顔になる。瑠璃が呆れた視線を向ける。
「滝に打たれたいとかなんとか言ってなかった?」
「それとこれとは話が別だよ~」
「アンタねえ……」
「……まあ、どうせなら楽しみながらのが良いかなと思うわ」
鶯が口を開く。瑠璃が首を捻る。
「楽しみながら? 例えば?」
「アタシたちのスキルはそれぞれ、【演奏】、【歌唱】、【舞踊】でしょう?」
「ええ、そうね」
「これは音に関係するスキルと言っても良いわ」
「ああ、そうとも言えるわね……」
「気兼ねなく音を出せる丘の上は修行場所になかなか良いんじゃないかしら?」
「ふむ、そういう考え方もあるわね……」
瑠璃がふむふむと頷く。ロビンが再び鶯に抱き着く。
「さすが鶯姉! 話が分かる~!」
「……瑠璃はどうかしら?」
「……なにがスキルアップに繋がるか分からないから……とにかくひたすら、歌ってみて、演奏してみて、踊ってみて……音を出してみるしかないわね。こうして考えてみると、何のことはないわ。ただ初心に帰るだけのことね」
「おおっ、確かに……」
「ふふっ、まさか異世界で初心を取り戻すとはね……」
瑠璃の言葉にロビンは頷き、鶯が微笑む。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる