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第一章
第3話(2)将棋バトル
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「……」
「………」
リビングのソファーで竜子がスマホとにらめっこし、それを太郎が横から覗いている。
「あれからしばらく経ったけど……すっかり大人しくなったわね……」
「ああ、助かったよ……」
ママに話しかけられ、パパは笑顔を見せる。
「助かった?」
「そう」
「それはお財布的に?」
「それもあるけれど……精神的にさ」
パパが胸に手を当てる。
「精神的に?」
ママが首を捻る。
「うん……将棋道場ってなんだか独特な雰囲気があるから……緊張しちゃうんだよね。あれをほぼ毎日味わえとか言われたら……」
「こっちの身がもたないって?」
「そういうこと」
パパが苦笑交じりに首をすくめる。
「……その道場の雰囲気に呑まれなかった竜子ちゃんはすごいわね」
「本当だよね」
「これは……」
「え?」
「ひょっとすると、ひょっとするかも……」
ママが顎に手を当てる。
「い、いや、それはさすがに……」
「さすがに?」
「親バカが過ぎるんじゃないかな?」
パパが苦笑する。
「あら、分からないじゃない。伊吹さんの娘さん相手にもいい勝負したんでしょ?」
「ああ、あれはね……」
「あれは?」
「いわゆるビギナーズラックみたいなものだったんじゃないかな?」
「ビギナーズラック?」
「うん」
パパが頷く。
「どうして?」
「いや、将棋バトルを始めてから、対局を何局か見たけれど……」
「けれど?」
「全部負けていたよ……」
パパが小声で呟く。
「あら、そうなの?」
ママが意外そうにする。
「うん……」
「人気ゲームだけあって強い人が集まっているのね……」
「まあ、それもあるとは思うけれど……」
「なに?」
「単純に棋力不足なんだと思うよ」
「きりょく?」
「ああ、将棋の力のことだよ」
「ふ~ん……」
「そんなに甘くはないってことだよ……」
「……対戦相手が大人なんじゃないの?」
「それもあり得るけれど、基本的には初心者は初心者同士でマッチングするようになっているからね……」
「あ、そう……」
「そうだよ」
「そのわりには……」
「うん?」
「熱中しているようだけれど……」
ママが竜子の様子を伺う。
「それは……確かにそうだね」
パパが竜子の方を見ながら同意する。
「負けているのに楽しいのかしら?」
「う~ん……なんにせよ」
パパがママの方に視線を戻す。
「なんにせよ?」
「打ち込めるものが出来たのは良いことなんじゃないかな」
「……ちょっとお手洗いに行ってくるのじゃ」
竜子がソファーから離れる。
「マ、ママ!」
太郎がスマホを持ってママたちの方に寄ってくる。
「どうかしたの?」
「ついでにパパ!」
「つ、ついでって⁉」
「こ、これ見て!」
太郎がスマホの画面をママたちに見せる。
「! こ、これは⁉ ……どういうこと?」
「あ、あらら!」
「い、いや、リアクションおかしいから!」
首を傾げるママに太郎とパパが思わずズッコケる。
「だって分からないんだもの」
「将棋バトル初段だよ!」
太郎が声を上げる。
「こ、この短期間でもう初段に達するとは……」
パパが口元を抑える。
「それってすごいの?」
「将棋バトル初段ってことは、現実でも大体アマチュア初段くらいの実力はあるっていうことだよ」
「へえ……」
ママが感心する。
「で、でも、最初は負けっぱなしだったじゃないか……ちょっと貸してごらん……こ、この通算成績は⁉ 大幅に勝ち越している⁉」
「う、うん……」
「どういうことだい、太郎?」
「さ、最初は色々な戦法とかを手当たり次第に試していたみたいで……しばらくしたら、『ふむ、大体分かったのじゃ……』とか言って、そこから怒涛の如く勝ち始めて……」
「なっ……」
「……ひょっとするんじゃないの?」
唖然とするパパを見ながら、ママが笑みを浮かべる。
「………」
リビングのソファーで竜子がスマホとにらめっこし、それを太郎が横から覗いている。
「あれからしばらく経ったけど……すっかり大人しくなったわね……」
「ああ、助かったよ……」
ママに話しかけられ、パパは笑顔を見せる。
「助かった?」
「そう」
「それはお財布的に?」
「それもあるけれど……精神的にさ」
パパが胸に手を当てる。
「精神的に?」
ママが首を捻る。
「うん……将棋道場ってなんだか独特な雰囲気があるから……緊張しちゃうんだよね。あれをほぼ毎日味わえとか言われたら……」
「こっちの身がもたないって?」
「そういうこと」
パパが苦笑交じりに首をすくめる。
「……その道場の雰囲気に呑まれなかった竜子ちゃんはすごいわね」
「本当だよね」
「これは……」
「え?」
「ひょっとすると、ひょっとするかも……」
ママが顎に手を当てる。
「い、いや、それはさすがに……」
「さすがに?」
「親バカが過ぎるんじゃないかな?」
パパが苦笑する。
「あら、分からないじゃない。伊吹さんの娘さん相手にもいい勝負したんでしょ?」
「ああ、あれはね……」
「あれは?」
「いわゆるビギナーズラックみたいなものだったんじゃないかな?」
「ビギナーズラック?」
「うん」
パパが頷く。
「どうして?」
「いや、将棋バトルを始めてから、対局を何局か見たけれど……」
「けれど?」
「全部負けていたよ……」
パパが小声で呟く。
「あら、そうなの?」
ママが意外そうにする。
「うん……」
「人気ゲームだけあって強い人が集まっているのね……」
「まあ、それもあるとは思うけれど……」
「なに?」
「単純に棋力不足なんだと思うよ」
「きりょく?」
「ああ、将棋の力のことだよ」
「ふ~ん……」
「そんなに甘くはないってことだよ……」
「……対戦相手が大人なんじゃないの?」
「それもあり得るけれど、基本的には初心者は初心者同士でマッチングするようになっているからね……」
「あ、そう……」
「そうだよ」
「そのわりには……」
「うん?」
「熱中しているようだけれど……」
ママが竜子の様子を伺う。
「それは……確かにそうだね」
パパが竜子の方を見ながら同意する。
「負けているのに楽しいのかしら?」
「う~ん……なんにせよ」
パパがママの方に視線を戻す。
「なんにせよ?」
「打ち込めるものが出来たのは良いことなんじゃないかな」
「……ちょっとお手洗いに行ってくるのじゃ」
竜子がソファーから離れる。
「マ、ママ!」
太郎がスマホを持ってママたちの方に寄ってくる。
「どうかしたの?」
「ついでにパパ!」
「つ、ついでって⁉」
「こ、これ見て!」
太郎がスマホの画面をママたちに見せる。
「! こ、これは⁉ ……どういうこと?」
「あ、あらら!」
「い、いや、リアクションおかしいから!」
首を傾げるママに太郎とパパが思わずズッコケる。
「だって分からないんだもの」
「将棋バトル初段だよ!」
太郎が声を上げる。
「こ、この短期間でもう初段に達するとは……」
パパが口元を抑える。
「それってすごいの?」
「将棋バトル初段ってことは、現実でも大体アマチュア初段くらいの実力はあるっていうことだよ」
「へえ……」
ママが感心する。
「で、でも、最初は負けっぱなしだったじゃないか……ちょっと貸してごらん……こ、この通算成績は⁉ 大幅に勝ち越している⁉」
「う、うん……」
「どういうことだい、太郎?」
「さ、最初は色々な戦法とかを手当たり次第に試していたみたいで……しばらくしたら、『ふむ、大体分かったのじゃ……』とか言って、そこから怒涛の如く勝ち始めて……」
「なっ……」
「……ひょっとするんじゃないの?」
唖然とするパパを見ながら、ママが笑みを浮かべる。
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