【第一章完】からくり始末記~零号と拾参号からの聞書~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
42 / 50
第一章

第11話(1)本丸付近での激戦

しおりを挟む
                  拾壱

「くっ……」

 楽土が顔をしかめる。

「か、囲まれたよ!」

「それは分かっているさ……」

 技師の言葉に藤花が応える。

「おい、おめえら……」

 大樹が侍たちに語りかける。

「な、なんだ⁉」

「やっぱり下がっていろ……お前らじゃあ到底敵う相手じゃねえ……」

「だからそういうわけにも参らんのだ!」

「そうかい、大変だねえ、お侍さんってのは……」

 侍の答えに大樹が苦笑する。

「やあ!」

「ふっ……!」

「!」

 藤花に斬りかかった侍が刀を落とす。腕に針が刺さっていたからだ。

「えい!」

「はっ……!」

「‼」

 藤花に斬りかかった別の侍が膝を抑えてうずくまる。膝に針が刺さっている。

「こ、これは……」

「髪に針を仕込んでいやがる。迂闊に飛び込めば針の餌食だぞ……」

 大樹が冷静に見極める。

「ならば、集団でかかれ!」

「話を聞いてねえな……」

「行け!」

「うおおっ!」

「むん!」

「⁉」

 十人の侍が一斉に斬りかかったが、藤花が十本の爪でそれをことごとく受け止める。

「楽土さん!」

 藤花が声を上げてしゃがみ込む。

「はい!」

「どわあああっ⁉」

 楽土が盾を振り回し、侍たちを吹き飛ばす。

「……ふん!」

「ぐっ……」

「お、おのれ……」

「だからお前らの手に負える相手じゃねえっての……」

 大樹が呆れたように呟く。

「は、はい、そうですかというわけには参らんのだ!」

「どうしてだ?」

「ど、どうしてもなにも……ここがどこだか分かっているのか⁉」

「城」

「そ、そういうことではない!」

「じゃあなんだよ?」

 大樹が首を傾げる。

「ほ、本丸付近だぞ! ここまで踏み込まれて、黙っていられるか!」

「藩の沽券に関わるってか?」

「そうだ!」

「はっ、くだらねえなあ……」

「なんだと⁉」

「あいつらのお目当てはおらなんだ。おらに任せておけば良いんだよ」

「……出来るのか?」

 侍が大樹を見つめる。

「ああ、当然だ。喧嘩を売られたわけだからな。ただで済ますつもりは無えよ」

 大樹が頷く。侍と大樹が見つめ合う。

「……」

「………」

「……分かった、貴様に任せよう」

「最初っからそうすりゃあ良いんだよ」

 大樹が笑って、藤花たちの方に向き直る。藤花が身構える。

「むっ……」

「ああ、大事な確認だ……」

 大樹が侍の方に振り向く。

「なんだ?」

 侍が首を傾げる。

「別にぶっ壊しちまっても良いんだよな?」

「あの眼鏡の女は人だ……あやつ以外の二体は“ある程度は”破壊しても構わん」

「ある程度ね……」

 大樹が笑みを浮かべ、斧を振りかざす。

「ま、まずいぞ、あの斧は⁉」

 技師が慌てる。

「楽土さん‼」

「はい‼」

「ぬっ⁉」

 楽土が猛然と走り、大樹に思い切りぶつかる。

「その程度の体当たりでどうにかなるか!」

「しかし、斧を振ることは出来ないはず!」

「くっ⁉」

「藤花さん!」

「ええ!」

「なっ⁉」

 藤花の両手の手の甲から縄が飛び出る。飛び出た二本の縄が大樹の首に絡まる。

「おおっ⁉」

 技師が驚きの声を上げる。

「首を捩じり切る!」

「ぐうっ……」

「む、むう……か、硬いわね……」

「あと一歩だった……な!」

「ぐはっ⁉」

 大樹が強烈な膝蹴りを楽土のみぞおちに食らわせる。楽土の体がくの字に折れ曲がって、大樹から離れる。

「しゃらくせえ!」

 大樹が斧を振るい、縄を切る。

「し、しまった⁉」

「お遊びはここまでだ……」

 首に残った縄を投げ捨て、大樹が再び藤花たちに向き直る。藤花が叫ぶ。

「楽土さん、こちらへ! 技師さん、牛を走らせて!」

「ええっ⁉ ど、どこに⁉」

 からくり牛に跨りながらも、技師は戸惑う。藤花と楽土もからくり牛に強引に跨る。

「向こうです! 行きますよ!」

「い、いや、こっちは⁉」

「それっ!」

 藤花がからくり牛に塀を乗り越えさせる。その先は崖である。

「う、うわああああっ⁉」

 技師の悲鳴が響く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

影武者の天下盗り

井上シオ
歴史・時代
「影武者が、本物を超えてしまった——」 百姓の男が“信長”を演じ続けた。 やがて彼は、歴史さえ書き換える“もう一人の信長”になる。 貧しい百姓・十兵衛は、織田信長の影武者として拾われた。 戦場で命を賭け、演じ続けた先に待っていたのは――本能寺の変。 炎の中、信長は死に、十兵衛だけが生き残った。 家臣たちは彼を“信長”と信じ、十兵衛もまた“信長として生きる”ことを選ぶ。 偽物だった男が、やがて本物を凌ぐ采配で天下を動かしていく。 「俺が、信長だ」 虚構と真実が交差するとき、“天下を盗る”のは誰か。 時は戦国。 貧しい百姓の青年・十兵衛は、戦火に焼かれた村で家も家族も失い、彷徨っていた。 そんな彼を拾ったのは、天下人・織田信長の家臣団だった。 その驚くべき理由は——「あまりにも、信長様に似ている」から。 歴史そのものを塗り替える——“影武者が本物を超える”成り上がり戦国譚。 (このドラマは史実を基にしたフィクションです)

【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜

旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】 文化文政の江戸・深川。 人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。 暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。 家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、 「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。 常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!? 変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。 鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋…… その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。 涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。 これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

処理中です...