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第一章
第5話(1) サプライズ転校生
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伍
「ったく、たまの休みかと思ったら、学校に行けとはね……」
「……」
「っていうか、退学とかになっていなかったのかって感じだけどな」
「……」
「そういや、親に妖絶講のこと全然聞かれないんだけどなんでだろうな?」
「……」
「おい、なんか反応しろよ」
「……前にも言ったように、私に話しかけないでもらえますか。破廉恥の方と同類だと思われたくありませんので」
勇次に対し、前を歩く愛が立ち止まって振り返り、冷たい返事をする。二人は今、同じ高校へ通学している途中である。家が近所の為、当然の如く通学路も同じになる。
「破廉恥の方って……」
「だって、そうでしょう? やれ同衾や、やれ股ぐら探検隊だとかなんとか言っていたら、今度は夫婦の契りを交わすなんて……これが破廉恥でなくてなんなんですか?」
「夫婦云々は億葉が勝手に言っていることであってな……」
「億葉……呼び捨てとは随分と親しくなられたようで」
愛がプイっと前を向き、再び歩き出す。
「なに怒ってんだよ」
「怒ってなどいません!」
「いや、怒っているだろ」
「別に!」
「ムキになっている時点で……」
「怒ってないったら‼」
そこに通りがかった自転車に乗った少年が勇次たちに声を掛ける。
「いよ~お二人さん、久々に痴話喧嘩かい!」
「違う」
「違うわよ!」
愛は叫んで、スタスタと歩いていってしまう。自転車の少年が首を竦める。
「ありゃ、マジで機嫌が悪い系? タイミング不味かったかな?」
「いや、気にすんな、健一……」
勇次が頭を掻きながら呟く。健一と言われた少年は改めて勇次に声を掛ける。
「っていうか、久々だな、勇次。風邪は治ったのか?」
「え?」
「半月近くも休むなんて、随分拗らせたな~」
「あ~そういう欠席理由になってんのか……」
「ん?」
「い、いや、何でもない。それより俺らも早く行こう」
勇次は首を振って歩き出す。
「っていうか、勇次お前さ、俺が送ったメッセージくらい返せよな。それくらい出来ただろ? 未読無視は結構傷付くぜ~」
「あ、ああ、それは悪かった。ちょっとスマホの調子が悪くてな……」
「気の無い男に対する女子の言い訳か!」
「色々バタバタしていてな……」
「風邪なのに出歩いていたのかよ! そりゃ長引くわ」
「ちょっと殺されかけたりしてな……」
「お、穏やかな話じゃねえな、そんなにヤバい病気だったのか?」
「冗談だ」
「なんだよ、冗談かよ~」
健一は笑って勇次の肩を小突く。勇次もふっと笑う。この少年は山田健一と言って、勇次と愛とは小学校から一緒の間柄である。特に勇次とは気兼ねなく話すことが出来る、数少ない友人である。
「曲江もなんか怒っていたな、痴話喧嘩の内容は?」
「なんだ、痴話喧嘩って……幼馴染同士の単なる口論だ」
「待って、今なんて言った? 〇〇〇同士の所、もう一回言ってくれ」
「なんだよ……幼馴染同士って言ったんだよ」
「あ~」
健一が頭を抱える。
「勇次、お前よお、俺らはもう高二だぜ?」
「そんなことは知っている」
「そろそろさ、ほら、進展させないと!」
健一の言わんとしていることを勇次がようやく理解して、顔を赤らめる。
「い、いや、俺と愛はそんなんじゃなくてだな……」
「はい、出た! 『そんなんじゃない』! じゃあ他に『どんなん』があるの? もしかして『あんなん』があるの? それとも『こんなん』があるの?」
「健一、少し落ち着け……」
「これが落ち着いていられるか! お前らとはガキのころから約10年の古い知り合いだ。是非とも良い感じに落ち着いて欲しいと思っているんだよ!」
「その気持ちはありがたいが……」
「何か問題があるのか?」
「うん……問題だらけだな」
勇次の頭の中には自分に愛情たっぷりのキャラ弁を作ってくれる千景、栄養たっぷりのスペシャルドリンクを作ってくれる万夜、実験要素たっぷりのよく分からない怪しげな実験品を作ってくれる億葉たちの顔が次々と浮かぶ。
「まさか、他の女か⁉」
妙に鋭い健一の追及に内心舌打ちした勇次は無理やり話題を変える。
「そ、そういや、部活の方はどうなんだ?」
一瞬間が開いたが、健一が笑顔で答える。
「それなんだけどよ、今度の大会レギュラー取れそうなんだよ!」
「おお! そりゃ良かったな、おめでとう」
「……勇次も野球部戻ってこないか?」
「え?」
「投手のお前が戻ってきてくれたら凄い戦力アップになる! 県大会も良い所狙える!」
「い、いや、悪いけど俺は野球辞めたんだ……他にやることが出来てな……」
「他って、お姉さんのことか?」
「……」
「わ、悪い。変なこと言っちまった」
「いや、良い。それより俺と同時期に辞めたキャッチャーのアイツにもう一回声を掛けてみたらどうだ?」
「え? そんな奴居たか?」
「いや、居ただろ、俺とバッテリー組んでいた……名前は思い出せないが」
「おいおい、マジの幽霊部員でも見たんじゃねえの⁉」
「はは、笑えねえな……」
今度は健一が話題を変える。
「そう言えばさ、ウチのクラス、今日転校生が来るらしいぞ!」
「え? こんな時期にか?」
「ああ。そして喜べ、すげえ美人らしいぞ!」
「誰の情報だ、それ?」
「安藤、アイツこういうことは耳聡いからな~」
「そうか」
勇次は足早に校舎に入る。
「なんだよ、興味ないのかよ」
(それよりも眠い……保健室で休むとするか)
朝のHR、担任の後ろを歩く制服姿の美少女を見て、クラスが騒然となる。男子生徒のみならず、女子生徒もその美貌に目を奪われる。担任に促され、美少女が自己紹介する。
「はじめまして、上杉山御剣と言います」
「「⁉」」
あまりの驚きに勇次と愛は思わず立ち上がってしまった。
「ったく、たまの休みかと思ったら、学校に行けとはね……」
「……」
「っていうか、退学とかになっていなかったのかって感じだけどな」
「……」
「そういや、親に妖絶講のこと全然聞かれないんだけどなんでだろうな?」
「……」
「おい、なんか反応しろよ」
「……前にも言ったように、私に話しかけないでもらえますか。破廉恥の方と同類だと思われたくありませんので」
勇次に対し、前を歩く愛が立ち止まって振り返り、冷たい返事をする。二人は今、同じ高校へ通学している途中である。家が近所の為、当然の如く通学路も同じになる。
「破廉恥の方って……」
「だって、そうでしょう? やれ同衾や、やれ股ぐら探検隊だとかなんとか言っていたら、今度は夫婦の契りを交わすなんて……これが破廉恥でなくてなんなんですか?」
「夫婦云々は億葉が勝手に言っていることであってな……」
「億葉……呼び捨てとは随分と親しくなられたようで」
愛がプイっと前を向き、再び歩き出す。
「なに怒ってんだよ」
「怒ってなどいません!」
「いや、怒っているだろ」
「別に!」
「ムキになっている時点で……」
「怒ってないったら‼」
そこに通りがかった自転車に乗った少年が勇次たちに声を掛ける。
「いよ~お二人さん、久々に痴話喧嘩かい!」
「違う」
「違うわよ!」
愛は叫んで、スタスタと歩いていってしまう。自転車の少年が首を竦める。
「ありゃ、マジで機嫌が悪い系? タイミング不味かったかな?」
「いや、気にすんな、健一……」
勇次が頭を掻きながら呟く。健一と言われた少年は改めて勇次に声を掛ける。
「っていうか、久々だな、勇次。風邪は治ったのか?」
「え?」
「半月近くも休むなんて、随分拗らせたな~」
「あ~そういう欠席理由になってんのか……」
「ん?」
「い、いや、何でもない。それより俺らも早く行こう」
勇次は首を振って歩き出す。
「っていうか、勇次お前さ、俺が送ったメッセージくらい返せよな。それくらい出来ただろ? 未読無視は結構傷付くぜ~」
「あ、ああ、それは悪かった。ちょっとスマホの調子が悪くてな……」
「気の無い男に対する女子の言い訳か!」
「色々バタバタしていてな……」
「風邪なのに出歩いていたのかよ! そりゃ長引くわ」
「ちょっと殺されかけたりしてな……」
「お、穏やかな話じゃねえな、そんなにヤバい病気だったのか?」
「冗談だ」
「なんだよ、冗談かよ~」
健一は笑って勇次の肩を小突く。勇次もふっと笑う。この少年は山田健一と言って、勇次と愛とは小学校から一緒の間柄である。特に勇次とは気兼ねなく話すことが出来る、数少ない友人である。
「曲江もなんか怒っていたな、痴話喧嘩の内容は?」
「なんだ、痴話喧嘩って……幼馴染同士の単なる口論だ」
「待って、今なんて言った? 〇〇〇同士の所、もう一回言ってくれ」
「なんだよ……幼馴染同士って言ったんだよ」
「あ~」
健一が頭を抱える。
「勇次、お前よお、俺らはもう高二だぜ?」
「そんなことは知っている」
「そろそろさ、ほら、進展させないと!」
健一の言わんとしていることを勇次がようやく理解して、顔を赤らめる。
「い、いや、俺と愛はそんなんじゃなくてだな……」
「はい、出た! 『そんなんじゃない』! じゃあ他に『どんなん』があるの? もしかして『あんなん』があるの? それとも『こんなん』があるの?」
「健一、少し落ち着け……」
「これが落ち着いていられるか! お前らとはガキのころから約10年の古い知り合いだ。是非とも良い感じに落ち着いて欲しいと思っているんだよ!」
「その気持ちはありがたいが……」
「何か問題があるのか?」
「うん……問題だらけだな」
勇次の頭の中には自分に愛情たっぷりのキャラ弁を作ってくれる千景、栄養たっぷりのスペシャルドリンクを作ってくれる万夜、実験要素たっぷりのよく分からない怪しげな実験品を作ってくれる億葉たちの顔が次々と浮かぶ。
「まさか、他の女か⁉」
妙に鋭い健一の追及に内心舌打ちした勇次は無理やり話題を変える。
「そ、そういや、部活の方はどうなんだ?」
一瞬間が開いたが、健一が笑顔で答える。
「それなんだけどよ、今度の大会レギュラー取れそうなんだよ!」
「おお! そりゃ良かったな、おめでとう」
「……勇次も野球部戻ってこないか?」
「え?」
「投手のお前が戻ってきてくれたら凄い戦力アップになる! 県大会も良い所狙える!」
「い、いや、悪いけど俺は野球辞めたんだ……他にやることが出来てな……」
「他って、お姉さんのことか?」
「……」
「わ、悪い。変なこと言っちまった」
「いや、良い。それより俺と同時期に辞めたキャッチャーのアイツにもう一回声を掛けてみたらどうだ?」
「え? そんな奴居たか?」
「いや、居ただろ、俺とバッテリー組んでいた……名前は思い出せないが」
「おいおい、マジの幽霊部員でも見たんじゃねえの⁉」
「はは、笑えねえな……」
今度は健一が話題を変える。
「そう言えばさ、ウチのクラス、今日転校生が来るらしいぞ!」
「え? こんな時期にか?」
「ああ。そして喜べ、すげえ美人らしいぞ!」
「誰の情報だ、それ?」
「安藤、アイツこういうことは耳聡いからな~」
「そうか」
勇次は足早に校舎に入る。
「なんだよ、興味ないのかよ」
(それよりも眠い……保健室で休むとするか)
朝のHR、担任の後ろを歩く制服姿の美少女を見て、クラスが騒然となる。男子生徒のみならず、女子生徒もその美貌に目を奪われる。担任に促され、美少女が自己紹介する。
「はじめまして、上杉山御剣と言います」
「「⁉」」
あまりの驚きに勇次と愛は思わず立ち上がってしまった。
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