上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
18 / 123
第一章

第5話(1) サプライズ転校生

しおりを挟む
                伍

「ったく、たまの休みかと思ったら、学校に行けとはね……」

「……」

「っていうか、退学とかになっていなかったのかって感じだけどな」

「……」

「そういや、親に妖絶講のこと全然聞かれないんだけどなんでだろうな?」

「……」

「おい、なんか反応しろよ」

「……前にも言ったように、私に話しかけないでもらえますか。破廉恥の方と同類だと思われたくありませんので」

 勇次に対し、前を歩く愛が立ち止まって振り返り、冷たい返事をする。二人は今、同じ高校へ通学している途中である。家が近所の為、当然の如く通学路も同じになる。

「破廉恥の方って……」

「だって、そうでしょう? やれ同衾や、やれ股ぐら探検隊だとかなんとか言っていたら、今度は夫婦の契りを交わすなんて……これが破廉恥でなくてなんなんですか?」

「夫婦云々は億葉が勝手に言っていることであってな……」

「億葉……呼び捨てとは随分と親しくなられたようで」

 愛がプイっと前を向き、再び歩き出す。

「なに怒ってんだよ」

「怒ってなどいません!」

「いや、怒っているだろ」

「別に!」

「ムキになっている時点で……」

「怒ってないったら‼」

 そこに通りがかった自転車に乗った少年が勇次たちに声を掛ける。

「いよ~お二人さん、久々に痴話喧嘩かい!」

「違う」

「違うわよ!」

 愛は叫んで、スタスタと歩いていってしまう。自転車の少年が首を竦める。

「ありゃ、マジで機嫌が悪い系? タイミング不味かったかな?」

「いや、気にすんな、健一……」

 勇次が頭を掻きながら呟く。健一と言われた少年は改めて勇次に声を掛ける。

「っていうか、久々だな、勇次。風邪は治ったのか?」

「え?」

「半月近くも休むなんて、随分拗らせたな~」

「あ~そういう欠席理由になってんのか……」

「ん?」

「い、いや、何でもない。それより俺らも早く行こう」

 勇次は首を振って歩き出す。

「っていうか、勇次お前さ、俺が送ったメッセージくらい返せよな。それくらい出来ただろ? 未読無視は結構傷付くぜ~」

「あ、ああ、それは悪かった。ちょっとスマホの調子が悪くてな……」

「気の無い男に対する女子の言い訳か!」

「色々バタバタしていてな……」

「風邪なのに出歩いていたのかよ! そりゃ長引くわ」

「ちょっと殺されかけたりしてな……」

「お、穏やかな話じゃねえな、そんなにヤバい病気だったのか?」

「冗談だ」

「なんだよ、冗談かよ~」

 健一は笑って勇次の肩を小突く。勇次もふっと笑う。この少年は山田健一と言って、勇次と愛とは小学校から一緒の間柄である。特に勇次とは気兼ねなく話すことが出来る、数少ない友人である。

「曲江もなんか怒っていたな、痴話喧嘩の内容は?」

「なんだ、痴話喧嘩って……幼馴染同士の単なる口論だ」

「待って、今なんて言った? 〇〇〇同士の所、もう一回言ってくれ」

「なんだよ……幼馴染同士って言ったんだよ」

「あ~」

 健一が頭を抱える。

「勇次、お前よお、俺らはもう高二だぜ?」

「そんなことは知っている」

「そろそろさ、ほら、進展させないと!」

 健一の言わんとしていることを勇次がようやく理解して、顔を赤らめる。

「い、いや、俺と愛はそんなんじゃなくてだな……」

「はい、出た! 『そんなんじゃない』! じゃあ他に『どんなん』があるの? もしかして『あんなん』があるの? それとも『こんなん』があるの?」

「健一、少し落ち着け……」

「これが落ち着いていられるか! お前らとはガキのころから約10年の古い知り合いだ。是非とも良い感じに落ち着いて欲しいと思っているんだよ!」

「その気持ちはありがたいが……」

「何か問題があるのか?」

「うん……問題だらけだな」

 勇次の頭の中には自分に愛情たっぷりのキャラ弁を作ってくれる千景、栄養たっぷりのスペシャルドリンクを作ってくれる万夜、実験要素たっぷりのよく分からない怪しげな実験品を作ってくれる億葉たちの顔が次々と浮かぶ。

「まさか、他の女か⁉」

 妙に鋭い健一の追及に内心舌打ちした勇次は無理やり話題を変える。

「そ、そういや、部活の方はどうなんだ?」

 一瞬間が開いたが、健一が笑顔で答える。

「それなんだけどよ、今度の大会レギュラー取れそうなんだよ!」

「おお! そりゃ良かったな、おめでとう」

「……勇次も野球部戻ってこないか?」

「え?」

「投手のお前が戻ってきてくれたら凄い戦力アップになる! 県大会も良い所狙える!」

「い、いや、悪いけど俺は野球辞めたんだ……他にやることが出来てな……」

「他って、お姉さんのことか?」

「……」

「わ、悪い。変なこと言っちまった」

「いや、良い。それより俺と同時期に辞めたキャッチャーのアイツにもう一回声を掛けてみたらどうだ?」

「え? そんな奴居たか?」

「いや、居ただろ、俺とバッテリー組んでいた……名前は思い出せないが」

「おいおい、マジの幽霊部員でも見たんじゃねえの⁉」

「はは、笑えねえな……」

 今度は健一が話題を変える。

「そう言えばさ、ウチのクラス、今日転校生が来るらしいぞ!」

「え? こんな時期にか?」

「ああ。そして喜べ、すげえ美人らしいぞ!」

「誰の情報だ、それ?」

「安藤、アイツこういうことは耳聡いからな~」

「そうか」

 勇次は足早に校舎に入る。

「なんだよ、興味ないのかよ」

(それよりも眠い……保健室で休むとするか)

 朝のHR、担任の後ろを歩く制服姿の美少女を見て、クラスが騒然となる。男子生徒のみならず、女子生徒もその美貌に目を奪われる。担任に促され、美少女が自己紹介する。

「はじめまして、上杉山御剣と言います」

「「⁉」」

 あまりの驚きに勇次と愛は思わず立ち上がってしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...