上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

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第二章

第18話(3) 合コンらしきもの開宴

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「合コンって言われてもな……」

 私服姿の勇次が駅前で後頭部を掻く。

「合コンをする振りをしているで良いって又左は言っていたけど……」

「相手は誰だよ?」

「さあ?」

 勇次の問いに愛は首を傾げる。

「大体こいつをどう誤魔化せば良いんだ……」

 勇次は自身の背中に担いだ金棒入りのケースを見て首を捻る。

「う~ん、楽器というしかないんじゃない?」

「お待たせしたにゃ」

「あっ、又左……って三尋⁉」

 又左とともに三尋が現れる。愛が尋ねる。

「他にも参加するって言っていた隊員って黒駆君のことだったの?」

「ああ、そうだ」

「お前……合コン経験あんのか?」

「当たり前だ、俺くらいになるとさりげなく合コンに潜入するなど容易いことだ」

「さりげなくても駄目なんじゃ……」

 どうだと言わんばかりにそれなりに長い髪をかき上げる三尋に愛は小声で突っ込む。

「っていうことは、他に女の子がもう一人か?」

「そうよね、男二人女一人の組み合わせっていうのもちょっと不自然だし……」

 勇次と愛が周囲を見回す。又左が口を開く。

「カラオケ店の前で待ち合わせしているにゃ」

「……時間もちょうど良いな、そこに向かおう」

 三尋が促し、勇次たちはカラオケ店の前につく。その場所には三人の男女と白い犬がいた。

「やっと来たか……」

 勇次たちの姿を見て、白い犬が口を開く。勇次は驚く。

「い、犬がしゃべった⁉」

「勇次君、落ち着いて。武枝隊の尚右(なおすけ)さんよ。一度会っているはずだわ」

「そ、そう言われると……」

「……今更そんなことで驚くとは、どっかの馬鹿猫と似て、上杉山隊は間抜けが多いようだ」

「……聞き捨てならにゃいにゃ」

 尚右に対し、又左が詰め寄る。尚右がため息交じりで答える。

「本当のことを言ったまでだが?」

「阿保犬が偉そうに!」

「あ~! ちょ、ちょっと、又左、ストップ! こんなところで争っている場合じゃないでしょ⁉ な、尚右さん、今回は武枝隊との合同任務なのですね?」

 愛が又左と尚右の間に割って入り、話を進める。

「そうだ。我が隊の管轄でも被害が出ているからな。幸い命までには至っていないが……」

「ということは、こちらは武枝隊の皆さんですね。初めまして、よろしくお願いします」

「うおーい、ちょっと待て! 一度会っているじゃないか!」

 短い茶髪の男性が声を上げる。愛が首を傾げる。

「え?」

「武枝隊の仁藤正人(にとうまさと)だ!」

「仁藤さん……?」

「まさか忘れたのか⁉ 対抗戦で君の妙な術でぼこぼこにされただろう⁉」

「えっと……ごめんなさい」

「謝られた! マジで忘れている……!」

「仁藤、あんまり馬鹿騒ぎをするな。他の二人も挨拶くらいしておけ」

「……どうも」

 長めの黒い前髪を顔の両側に垂らし、後ろ髪は短めのポニーテール風にまとめ、口元を赤布で覆っている中性的な雰囲気の女性が軽く頭を下げる。愛が顔を覗き込む。

「あなたはどこかでお会いしたような……って、あ、貴女⁉」

 愛は中性的な女性の陰に隠れている女を指差す。そこには赤色が主体のパンキッシュな服装に身を包み、顔の至る所に大小様々な赤色のピアスをつけた小柄な赤髪の女がいた。

「ど、どうも……」

「や、山牙恋夏(やまがれんか)! どうしてここに⁉」

「姉さん……た、隊長に言われたから……」

「よくも私と勇次君の前に顔を出せたわね⁉」

「た、対抗戦のことか……その節は申し訳ない……」

「そうよ! 私も勇次君も貴女に殺されかけたんだから!」

「よせ、愛。操られていたんだから仕方がないだろう。俺は気にしていない」

「……そうね、あの者に操られていたのよね。声を荒げてしまってごめんなさい」

 勇次の言葉で落ち着きを取り戻した愛が恋夏に頭を下げる。恋夏が戸惑い気味に頷く。

「い、いや、アタシもマジでごめん……」

「挨拶は済んだな……頃合いだ。後はお前らに任せるぞ」

 尚右が声をかけ、仁藤が頷き、皆を促す。

「よし、入店しよう。男三人、女三人の合コンって設定だ」

 六人は店に入り、広めの部屋に通される。勇次が三尋に尋ねる。

「で? どうすれば良いんだ?」

「あくまでも囮捜査だ。純粋にカラオケを楽しんでいる若者を装えば良い……」

「よし! じゃあ、一曲目は俺が行くぜ! ~~♪」

 仁藤が手際よく入力し、歌を歌い始める。勇次が呟く。

「のっけからテンション高いな……」

「~~♪ ……俺の歌どうだった⁉ 愛ちゃん?」

「え、えっと……すみません、選曲に集中していて全然聞いてなかったです。ごめんなさい」

「か、完全スルー⁉」

 愛の言葉に仁藤が愕然とする。カラオケがしばらく進むと、注文していた飲食物が届く。

「……これを飲み食いするのが合コンなのか?」

「ちょっと違うな……俺の知っている合コンとは互いの魂をぶつけ合うものだ……」

「お前に聞いた俺がアホだったよ……」

 三尋のよく分からない回答に勇次は呆れながらポテトを頬張る。仁藤が口を開く。

「こういう時は王様ゲームをやってさらに盛り上げるんだよ!」

「王様ゲームってなんだ?」

「知らないのか? くじで「王様」役を決め、「王様」が参加者の持つくじの番号を指定して命令を下し、「王様」以外の参加者はそれに従わなければならないというゲームだ!」

「す、すごいゲームだな……」

「こんなこともあろうかと思ってくじを用意してきたぞ!」

「準備が良すぎませんか?」

 愛が冷ややかな視線を仁藤に向ける。

「と、とにかく、やってみようじゃないか! さあ、くじを引け! ……引いたな? さあ、『王様だーれだ?』……俺だ! ふふっ! 命令は……『1番が3番にキスをする!』だ」

「それでは自分がおいしくないだろう……」

「し、しまった!」

 三尋の呟きに仁藤が再び愕然とする。

「い、1番、アタシだ……」

「3番、お、俺だ……」

 山牙と勇次がおずおずと手を上げる。山牙が立ち上がって勇次に近づく。

「じゃ、じゃあ、勇次君、失礼します……」

「お、おう……」

「ま、待った! 破廉恥だわ!」

 愛が慌てて立ち上がって叫ぶ。三尋が落ち着かせるように語りかける。

「曲江さん、王様ゲームで王様の命令は絶対だ……」

「そ、そんなこと言っても! ⁉」

 突如として店内の照明が暗くなる。ここまで無言だった女性が口を開く。

「どうやら囮に引っかかってくれたようだ……」
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