上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
79 / 123
第二章

第20話(1) 騒々しい邂逅

しおりを挟む
                  漆

「ふむ……」

 配信終了後、別の部屋に通された御剣は椅子に座って深く頷く。愛が声を上げる。

「いや、ふむ……じゃなくて!」

「ん?」

「いいんですか! 配信なんてさせて⁉」

「プライベートは自由にさせてやりたい」

「理解が良すぎませんか⁉」

「若い感性というのも大事だ」

「そうは言ってもですね……」

 愛が軽く頭を抑える。御剣が首を傾げる。

「言うほど問題はあるか?」

「妖絶士があまり目立ってしまうのは……」

「正直配信というのがよく分からんのだが、そんなに影響があるのか?」

「チャンネル登録者数百万人ですよ⁉ 金の盾です!」

「盾……私は御剣だが」

「なにを張り合っているんですか! そうではなくて!」

「冗談だ」

「と、とにかく、少なくとも数十万人が彼女たちの配信を見ているのです!」

「それは全国でということか?」

「……場合によっては海外にも視聴者がいるかもしれません」

「そうなのか?」

「そうなのです!」

「それは……ちょっと問題かもしれんな」

「ちょっとどころではないと思いますが!」

「まあ、少し落ち着け」

 御剣は愛をなだめる。呼吸を整えた愛が問う。

「……妖絶講の本部からはなにかないのですか?」

「なにかとは?」

「注意勧告とか……」

「今のところは特にないな」

「ええ……」

「それどころかこのことを把握しているのかどうかすらも分からん」

「大丈夫なのですか、それ……」

 愛が不安げな目で御剣を見る。

「まあ、大丈夫じゃないか……勇次はどうした?」

「あれ? さっきの部屋に残っているのかしら?」

「哀たちも遅いな。やはりあちらの部屋で話すか」

 御剣が立ち上がり、愛とともに先ほどの部屋に戻ろうとしてドアの前に立つと、なにやら話し声が聞こえてくる。愛が耳を傾ける。

「へえ……こんな感じになっているんだな……」

「い、いや、そんなにじっくり見られると……」

「なかなかどうしてたくましいですね……」

「あ、あんまり触らないでくれないか? 結構敏感なんだ……」

「そう言われても……ねえ、哀?」

「ああ、愁。こんなものを見せられたら正直たまらないぜ……」

「ふ、二人とも、ちょ、ちょっと待ってくれ……」

「⁉ な、なにを破廉恥なことをやっているのよ⁉」

 愛が勢いよくドアを開けると、ほんのり赤くなった勇次の頭に生えた角を興味深そうにベタベタと触る哀と愁の姿があった。勇次が驚いて尋ねる。

「ど、どうした、愛……?」

「い、いや、それはむしろこっちの台詞よ……」

「二人が鬼の角を見てみたいというから生やしてみたんだ」

「ほう……感情がさほど昂らなくても、角を生やせるようになったのか?」

 御剣が感心したように尋ねる。

「試しにやっていたら出来るようになりました」

「とはいえ、まだまだそんなものではないだろう?」

「そ、そうですね……もっと長く太くなるはずですから……」

「え⁉ もっと長く太くなるのか⁉」

「ますます興味深いですね……」

「もっと大きくしてみせてくれ!」

「なにかお手伝いしましょうか?」

 哀たちがグイっと勇次に近づく。愛が叫ぶ。

「は、破廉恥よ! 勇次君!」

「な、なにがだよ?」

「なんかこう……雰囲気がよ!」

「そんな漠然としたこと言われても……」

 愛の様子に哀と愁が悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「え~どうしたんですか?」

「一体なにを想像されたのでしょうか……」

「う、うるさいわね!」

 愛が恥ずかしそうに声を上げる。

「うぃ~す、邪魔するぜ!」

「別働隊とは、副隊長のわたくしに黙って……」

「万夜殿、ぶつぶつ言ってないで、早く部屋に入って下さい」

「って、ああん⁉」

「こ、これは……⁉」

「むむっ⁉」

 部屋に入ってきた千景と万夜と億葉が勇次たちを見て驚く。

「な、何を抱き合ってやがるんだ⁉」

「い、いや、抱き合ってはいないぞ!」

「それにしては近いですわ!」

「いや、触りたいって言うから……」

「お触りあり! う、うらやましい……じゃなくてけしからんであります!」

「連れてきたんにゃが……マズかったかにゃ?」

「いや、問題ない」

 首を傾げる又左に対し、御剣は頷く。

「姐御! これはどういうことだ!」

「説明を求めます!」

「拙者もお触りしたいであります!」

「落ち着け、お前ら……」

「……どちら様ですか? ひょっとして……」

 愁の問いに御剣は答える。

「察しの通りだ、本隊の隊員たち……『億千万トリオ』だ」

「だからその雑なくくりやめろよ!」

「こちらが『哀愁コンビ』……『哀愁ツインズ』だ」

「いや、言い直しても一緒ですから!」

 御剣のざっくりとした紹介に千景と哀がそれぞれ抗議する。愛が口を開く。

「ちゃんと紹介した方が……」

「そうだな……せっかくだから隊舎の外に出るか」

「え? 外ですか?」

「ああ、さあ、トリオもコンビも私に続け」

「だからその雑なくくりを止めて下さいます⁉」

「ツインズです……」

「お、かわいい双子ちゃん。どこかで見たことがあるでありますな……」

 皆がわいわいと言いながら部屋を出る。

「俺は……どうやらまた忘れられているな……」

 部屋の片隅に一人残された三尋がポツリと呟く。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...