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第二章
第21話(1) 日本海ツーリング
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捌
「うわあ~♪」
サイドカーから見える夏の日本海を目の当たりにして、愛は思わず歓声を上げる。
「へへっ、絶景だろ?」
バイクを運転する千景が笑う。愛が笑顔で頷く。
「はい!」
「そろそろ休憩するか」
千景はバイクを停車させ、二人は降車する。愛は近くにあったベンチに座って海を眺めながら伸びをする。
「う~ん♪」
「飲み物買ってくるか、アイスコーヒーで良いか?」
「あ、はい、お願いします」
千景は自販機へ向かう。愛は再び海に目をやって呟く。
「こういう風景があるんだ……全然知らなかったな」
「……ほらよ」
戻ってきた千景が缶を手渡す。愛はお礼を言う。
「あ、ありがとうございます」
「130円な」
愛の隣に座った千景が手を差し出す。
「え? あ、はい……」
「冗談だよ、それくらいおごりだ」
千景は笑う。
「い、いただきます」
「おう」
「おいしい……」
「またこの景色を眺めながらってのが良いだろ?」
千景が大げさに両手を広げ、目の前の海を指し示す。
「ええ……本当です」
「な?」
頷く愛に対し、千景は得意気な表情を浮かべる。愛が尋ねる。
「こういうところはよく来られるんですか?」
「ちょっと前まではな……最近は色々忙しいからなかなか来れなかったけどよ」
「ああ……」
「他にもいくつかあるけどよ、こういうお気に入りの場所に来てのんびり過ごすのがアタシにとって良い気晴らしになるんだよ」
「よ、良かったんですか?」
「ん? 何が?」
「そんな大事なリフレッシュの機会に私なんかを連れてきて……」
愛の言葉に千景は笑う。
「いや、いつも一人じゃつまんねえじゃん」
「そ、そうですか……」
「なんか最近のお前さん、イライラが溜まってそうだったからな」
「え? わ、分かっちゃいましたか?」
「そりゃ分かるさ。隊舎で鬼みたいな顔してトレーニングしてるんだもんよ」
「お、お恥ずかしい……」
愛が顔を赤らめる。
「悪かったな」
「え?」
「こないだの佐渡へのハネムーンを邪魔しちゃってよ」
「そ、そんな邪魔だなんて……って、ハネムーンじゃないですよ!」
「冗談だよ」
「そ、そりゃあ、ちょうど良いリハーサルくらいには考えてましたけど……」
「いや、ちょうど良いって……」
愛の呟きに千景は苦笑する。
「でも、皆さんとああいった形で外出することは今までなかったことなので、本当に楽しかったですよ。それこそ海水浴とか楽しかったです」
「そうだな」
「でも……ナ、ナンパにはびっくりしましたけど……」
「どこにでもいるんだよな、ああいうチャラい奴ら」
「そ、そうなんですね……」
「アタシらに声をかけてくるのはなかなか良い目の付け所をしていると思うが……それがある意味命取りだったな」
千景が頬杖を突いて笑う。
「私たちはああいったものには慣れていないので、千景さんが追い払ってくれたのは助かりました……ラリアットはやりすぎかなと思いましたが」
「どさくさ紛れに馴れ馴れしく体を触ろうとしやがったからだよ。いくらアタシでもいつもああいう暴力を振るっているわけじゃねえよ」
「はあ……」
「っていうか、姐御よりマシだろう! 連中を砂に埋めて、頭だけ出させて『スイカ割りだ……』とかやろうとしやがったんだぞ!」
「た、確かにそうでしたね。インパクトが強烈過ぎて忘れていました……」
「加減ってものを知らねえんだよ、あの人は……面白かったけどな」
千景は思い出し笑いをする。
「哀さんたちと交流出来たのも良かったです」
「最初は生意気なガキどもだと思ったけど、色々話してみると、どうしてなかなか可愛い奴らだったな。ゲームも上手いしよ」
「千景さん、レースゲームで負けていましたね」
「最近のやつに慣れてなかっただけだ。前のバージョンなら死ぬほどやり込んだから余裕で勝てるさ」
「ふふっ……」
千景の負け惜しみに愛は笑う。千景は真面目な顔つきになる。
「……それで? 目的はなんなんだ?」
「え?」
「最近の鬼気迫る筋トレはストレス発散だけが目的じゃねえんだろう?」
「……分かりますか」
「そりゃあ分かるさ」
「妖絶士としてレベルアップするためには、術をより磨き上げる必要があります。ただ、より高度な術を用いる為の基本的体力、筋力が私には不足している……」
「鍛えないと体が持たねえってことか」
「そういうことです」
千景の言葉に愛は頷く。
「確かに治癒能力を使う際は結構消耗しているからな、鍛えるのは分かる。だけど、式神ってやつか? あれはかなりのレベルに達していると思うけどな」
「いえ、まだまだです……千景さん、あのサイドカーはなんというバイクなのですか?」
愛が振り返ってバイクを指し示す。
「え? あれはアルタイってメーカーの『アップギア』ってやつだよ」
「ふむ……」
「そ、それは、車の形代? そういうのもあるのか?」
「交通安全祈願などで用います。アップギア……お貸し給へ!」
「⁉」
愛が唱えると、バイクが一台出現し、千景が驚く。愛が呟く。
「とりあえずといったレベルですが……」
「ちょっと待てよ……おおっ! 乗れるぞこれ! すげえな愛!」
「まあ、もっと精度を高めないといけませんけどね……」
「それにしてもすげえよ! いや~アタシも負けてらんねえな!」
バイクから降りた千景が片腕をぶんぶんと振り回す。
「……これから戦いはより厳しくなってくるはず。もっと術を磨かないと……」
愛は穏やかな夏の海を眺めながら静かに呟く。
「うわあ~♪」
サイドカーから見える夏の日本海を目の当たりにして、愛は思わず歓声を上げる。
「へへっ、絶景だろ?」
バイクを運転する千景が笑う。愛が笑顔で頷く。
「はい!」
「そろそろ休憩するか」
千景はバイクを停車させ、二人は降車する。愛は近くにあったベンチに座って海を眺めながら伸びをする。
「う~ん♪」
「飲み物買ってくるか、アイスコーヒーで良いか?」
「あ、はい、お願いします」
千景は自販機へ向かう。愛は再び海に目をやって呟く。
「こういう風景があるんだ……全然知らなかったな」
「……ほらよ」
戻ってきた千景が缶を手渡す。愛はお礼を言う。
「あ、ありがとうございます」
「130円な」
愛の隣に座った千景が手を差し出す。
「え? あ、はい……」
「冗談だよ、それくらいおごりだ」
千景は笑う。
「い、いただきます」
「おう」
「おいしい……」
「またこの景色を眺めながらってのが良いだろ?」
千景が大げさに両手を広げ、目の前の海を指し示す。
「ええ……本当です」
「な?」
頷く愛に対し、千景は得意気な表情を浮かべる。愛が尋ねる。
「こういうところはよく来られるんですか?」
「ちょっと前まではな……最近は色々忙しいからなかなか来れなかったけどよ」
「ああ……」
「他にもいくつかあるけどよ、こういうお気に入りの場所に来てのんびり過ごすのがアタシにとって良い気晴らしになるんだよ」
「よ、良かったんですか?」
「ん? 何が?」
「そんな大事なリフレッシュの機会に私なんかを連れてきて……」
愛の言葉に千景は笑う。
「いや、いつも一人じゃつまんねえじゃん」
「そ、そうですか……」
「なんか最近のお前さん、イライラが溜まってそうだったからな」
「え? わ、分かっちゃいましたか?」
「そりゃ分かるさ。隊舎で鬼みたいな顔してトレーニングしてるんだもんよ」
「お、お恥ずかしい……」
愛が顔を赤らめる。
「悪かったな」
「え?」
「こないだの佐渡へのハネムーンを邪魔しちゃってよ」
「そ、そんな邪魔だなんて……って、ハネムーンじゃないですよ!」
「冗談だよ」
「そ、そりゃあ、ちょうど良いリハーサルくらいには考えてましたけど……」
「いや、ちょうど良いって……」
愛の呟きに千景は苦笑する。
「でも、皆さんとああいった形で外出することは今までなかったことなので、本当に楽しかったですよ。それこそ海水浴とか楽しかったです」
「そうだな」
「でも……ナ、ナンパにはびっくりしましたけど……」
「どこにでもいるんだよな、ああいうチャラい奴ら」
「そ、そうなんですね……」
「アタシらに声をかけてくるのはなかなか良い目の付け所をしていると思うが……それがある意味命取りだったな」
千景が頬杖を突いて笑う。
「私たちはああいったものには慣れていないので、千景さんが追い払ってくれたのは助かりました……ラリアットはやりすぎかなと思いましたが」
「どさくさ紛れに馴れ馴れしく体を触ろうとしやがったからだよ。いくらアタシでもいつもああいう暴力を振るっているわけじゃねえよ」
「はあ……」
「っていうか、姐御よりマシだろう! 連中を砂に埋めて、頭だけ出させて『スイカ割りだ……』とかやろうとしやがったんだぞ!」
「た、確かにそうでしたね。インパクトが強烈過ぎて忘れていました……」
「加減ってものを知らねえんだよ、あの人は……面白かったけどな」
千景は思い出し笑いをする。
「哀さんたちと交流出来たのも良かったです」
「最初は生意気なガキどもだと思ったけど、色々話してみると、どうしてなかなか可愛い奴らだったな。ゲームも上手いしよ」
「千景さん、レースゲームで負けていましたね」
「最近のやつに慣れてなかっただけだ。前のバージョンなら死ぬほどやり込んだから余裕で勝てるさ」
「ふふっ……」
千景の負け惜しみに愛は笑う。千景は真面目な顔つきになる。
「……それで? 目的はなんなんだ?」
「え?」
「最近の鬼気迫る筋トレはストレス発散だけが目的じゃねえんだろう?」
「……分かりますか」
「そりゃあ分かるさ」
「妖絶士としてレベルアップするためには、術をより磨き上げる必要があります。ただ、より高度な術を用いる為の基本的体力、筋力が私には不足している……」
「鍛えないと体が持たねえってことか」
「そういうことです」
千景の言葉に愛は頷く。
「確かに治癒能力を使う際は結構消耗しているからな、鍛えるのは分かる。だけど、式神ってやつか? あれはかなりのレベルに達していると思うけどな」
「いえ、まだまだです……千景さん、あのサイドカーはなんというバイクなのですか?」
愛が振り返ってバイクを指し示す。
「え? あれはアルタイってメーカーの『アップギア』ってやつだよ」
「ふむ……」
「そ、それは、車の形代? そういうのもあるのか?」
「交通安全祈願などで用います。アップギア……お貸し給へ!」
「⁉」
愛が唱えると、バイクが一台出現し、千景が驚く。愛が呟く。
「とりあえずといったレベルですが……」
「ちょっと待てよ……おおっ! 乗れるぞこれ! すげえな愛!」
「まあ、もっと精度を高めないといけませんけどね……」
「それにしてもすげえよ! いや~アタシも負けてらんねえな!」
バイクから降りた千景が片腕をぶんぶんと振り回す。
「……これから戦いはより厳しくなってくるはず。もっと術を磨かないと……」
愛は穏やかな夏の海を眺めながら静かに呟く。
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