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第二章
第26話(3) おかえり哀愁
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☆
御盾が雅との戦うことを決意したのと同じ頃、その近くで勇次と愛が哀と愁の二人と対峙していた。勇次が苦々しい表情で呟く。
「あいつら……」
「それぞれの後方に尻尾が浮かんでいるわ、あれで操っているのよ」
愛が尻尾を指差す。勇次が尋ねる。
「尻尾を攻撃したらどうなんだ?」
「そういえばそうね……黒駆三尋、朔月望……お貸し給へ!」
「!」
愛が形代を用い、三尋と朔月を一体ずつ出現させ、尻尾を攻撃させる。
「‼」
攻撃は弾かれ、逆に尻尾が発した炎によって、三尋たちはあっけなく燃やされてしまう。
「何らかの結界のようなバリアを張っているみたいね。直接攻撃は難しそうだわ」
「っていうことは……?」
「この二人をなんとか大人しくさせないといけないってことよ」
愛が哀と愁を指し示す。勇次が舌打ちしながら金棒を構える。
「ちっ……気が進まねえが、やるしかねえってことか」
「ええ……」
「……来るみたいよ、哀」
「ああ……」
哀と愁はそれぞれマシンガンとバズーカを構える。
「そういや、あいつらあんなもんを持っていやがるんだよな……」
勇次が思わず苦笑しながら後頭部を掻く。
「……あの武器に関してはなんとかしてみるわ」
愛はそう呟くと、前に進み出る。
「お、おい、愛、危ねえぞ」
「大丈夫……風坂明秋、山牙恋夏、お貸し給へ!」
「え⁉」
「お願いします!」
愛の掛け声に従って、風坂と山牙が哀と愁に向かって走り出す。哀が笑う。
「しゃらくせえ!」
「……!」
「なっ! かわした⁉」
「一撃必中!」
「……‼」
「なっ⁉ 下にうつ伏せになってかわした⁉」
「愁、とにかく接近させるな! 撃ち続けろ!」
「ええ!」
哀と愁は銃撃を続けるが、風坂と山牙はかわし続ける。愛は拳を握る。
「よしっ! 風坂さんの素早い移動、山牙さんの野性的な動きを捉え切れていない! この流れで……林根笑冬、火場桜春、お貸し給へ!」
「……」
「お願いします!」
愛の掛け声を受けて林根と火場が走り出す。哀が叫ぶ。
「愁、新手だ!」
「ええ! まずはこちらを!」
「‼ ……‼」
「なっ⁉」
火場が足元の床を拳で砕き、破片を哀たちに向かって殴り飛ばす。
「ぐあっ!」
「きゃっ!」
破片の直撃を喰らった哀たちはそれぞれマシンガンとバズーカを手放してしまう。
「しまった……!」
「! ……!」
「どわっ⁉ な、なんだと……?」
「レ、レーザー……?」
林根の発射したレーザービームによって、哀たちが拾おうとしたマシンガンとバズーカは無力化する。愛は快哉を叫ぶ。
「やった! あの二人は武枝隊の『風林火山』四天王とは面識がない! その隙を上手くつけたわ! さっき皆さんと会話しておいて良かった!」
「厄介な武器は片付いたな!」
「ええ! 四天王の皆さん、そのままお願いします!」
「! ! ! !」
四天王が哀と愁を一気に取り囲む。
「舐めるなよ!」
「姉に同じ!」
「‼ ‼ ‼ ‼」
哀と愁はそれぞれけん玉とヨーヨーを巧みに使い、四天王の式神の包囲を打ち破る。四体はあっけなく霧消する。愛が呆然とする。
「そ、そんな……四人を凌ぐ戦闘力を有しているというの? これも尻尾の強化のお陰?」
「愛、下がっていろ、後は俺がやる!」
「勇次君! せめて援護だけでも!」
「体力をこれ以上消耗するな! 隊長の回復用にとっておけ!」
「! わ、分かったわ!」
愛が後退する。勇次は鼻の頭を擦る。
「さてと……どうやって、あの二人の懐に潜り込むか……」
「勇次、乗るニャン!」
「⁉ 又左! よし!」
駆け付けた又左に飛び乗り、勇次が一気に哀たちと間合いを詰める。愁が驚く。
「しまった⁉」
「愁、落ち着け! まずは又左の手足を封じろ!」
「! ええ! それっ!」
「そらっ!」
「ニャ⁉」
哀と愁がそれぞれ投げたけん玉とヨーヨーの糸が又左の右手と左足に絡みつく。
「よっしゃ、愁! あれをやるぜ!」
「ええ、分かったわ!」
「おらあっ!」
「うニャア⁉」
哀たちが糸を引っ張り、遠心力を利用して、又左を床に叩きつける。勇次も放り出される。
「ぐおっ⁉」
「もらった!」
「お覚悟!」
哀たちが勇次に迫る。寝転がっていた勇次の反応が遅れる。
「しまっ……⁉」
「なっ……⁉」
「むっ……⁉」
哀たちが繰り出した攻撃を鎌が受け止めた。受け止めたのは鬼ヶ島一美である。
「ね、姉ちゃん……?」
「寝坊してごめんなさいね、勇次。お姉ちゃんも戦うわ」
「誰だよ! アンタ!」
「どなたか知りませんが邪魔をしないで下さる⁉」
「礼儀知らずの新人さんたちね……」
一美が苦笑いを浮かべる。又左が苦しそうに呟く。
「……この場合は君が一番の新人にゃ……」
「……」
「ね、姉ちゃん?」
「……それは置いておいて!」
「ご、誤魔化した!」
「勇次、行くわよ! このお嬢さんたちを大人しくさせるんでしょう⁉」
「あ、ああ!」
「私は白髪のお姉さんの方を!」
「そっちが妹だぜ!」
「えっ⁉ ま、まあいいわ! えい!」
「悪く思うなよ! 哀! おらあ!」
「きゃあ!」
「どわあ!」
一美と勇次の攻撃を喰らい、愁と哀がその場に崩れ落ち、尻尾が消える。
「……あ、あら? ここは……?」
「アタシたち、一体何を……」
やや間があってから、愁と哀が正気に戻る。一美が頷く。
「元に戻ったみたいね!」
「ね、姉ちゃん……さっきの新入りうんぬんってのは……?」
「ああ! 私、鬼ヶ島一美も上杉山隊に入隊するわ! そこのところよろしく!」
「ええっ⁉」
一美の突然の宣言に勇次は驚愕する。
御盾が雅との戦うことを決意したのと同じ頃、その近くで勇次と愛が哀と愁の二人と対峙していた。勇次が苦々しい表情で呟く。
「あいつら……」
「それぞれの後方に尻尾が浮かんでいるわ、あれで操っているのよ」
愛が尻尾を指差す。勇次が尋ねる。
「尻尾を攻撃したらどうなんだ?」
「そういえばそうね……黒駆三尋、朔月望……お貸し給へ!」
「!」
愛が形代を用い、三尋と朔月を一体ずつ出現させ、尻尾を攻撃させる。
「‼」
攻撃は弾かれ、逆に尻尾が発した炎によって、三尋たちはあっけなく燃やされてしまう。
「何らかの結界のようなバリアを張っているみたいね。直接攻撃は難しそうだわ」
「っていうことは……?」
「この二人をなんとか大人しくさせないといけないってことよ」
愛が哀と愁を指し示す。勇次が舌打ちしながら金棒を構える。
「ちっ……気が進まねえが、やるしかねえってことか」
「ええ……」
「……来るみたいよ、哀」
「ああ……」
哀と愁はそれぞれマシンガンとバズーカを構える。
「そういや、あいつらあんなもんを持っていやがるんだよな……」
勇次が思わず苦笑しながら後頭部を掻く。
「……あの武器に関してはなんとかしてみるわ」
愛はそう呟くと、前に進み出る。
「お、おい、愛、危ねえぞ」
「大丈夫……風坂明秋、山牙恋夏、お貸し給へ!」
「え⁉」
「お願いします!」
愛の掛け声に従って、風坂と山牙が哀と愁に向かって走り出す。哀が笑う。
「しゃらくせえ!」
「……!」
「なっ! かわした⁉」
「一撃必中!」
「……‼」
「なっ⁉ 下にうつ伏せになってかわした⁉」
「愁、とにかく接近させるな! 撃ち続けろ!」
「ええ!」
哀と愁は銃撃を続けるが、風坂と山牙はかわし続ける。愛は拳を握る。
「よしっ! 風坂さんの素早い移動、山牙さんの野性的な動きを捉え切れていない! この流れで……林根笑冬、火場桜春、お貸し給へ!」
「……」
「お願いします!」
愛の掛け声を受けて林根と火場が走り出す。哀が叫ぶ。
「愁、新手だ!」
「ええ! まずはこちらを!」
「‼ ……‼」
「なっ⁉」
火場が足元の床を拳で砕き、破片を哀たちに向かって殴り飛ばす。
「ぐあっ!」
「きゃっ!」
破片の直撃を喰らった哀たちはそれぞれマシンガンとバズーカを手放してしまう。
「しまった……!」
「! ……!」
「どわっ⁉ な、なんだと……?」
「レ、レーザー……?」
林根の発射したレーザービームによって、哀たちが拾おうとしたマシンガンとバズーカは無力化する。愛は快哉を叫ぶ。
「やった! あの二人は武枝隊の『風林火山』四天王とは面識がない! その隙を上手くつけたわ! さっき皆さんと会話しておいて良かった!」
「厄介な武器は片付いたな!」
「ええ! 四天王の皆さん、そのままお願いします!」
「! ! ! !」
四天王が哀と愁を一気に取り囲む。
「舐めるなよ!」
「姉に同じ!」
「‼ ‼ ‼ ‼」
哀と愁はそれぞれけん玉とヨーヨーを巧みに使い、四天王の式神の包囲を打ち破る。四体はあっけなく霧消する。愛が呆然とする。
「そ、そんな……四人を凌ぐ戦闘力を有しているというの? これも尻尾の強化のお陰?」
「愛、下がっていろ、後は俺がやる!」
「勇次君! せめて援護だけでも!」
「体力をこれ以上消耗するな! 隊長の回復用にとっておけ!」
「! わ、分かったわ!」
愛が後退する。勇次は鼻の頭を擦る。
「さてと……どうやって、あの二人の懐に潜り込むか……」
「勇次、乗るニャン!」
「⁉ 又左! よし!」
駆け付けた又左に飛び乗り、勇次が一気に哀たちと間合いを詰める。愁が驚く。
「しまった⁉」
「愁、落ち着け! まずは又左の手足を封じろ!」
「! ええ! それっ!」
「そらっ!」
「ニャ⁉」
哀と愁がそれぞれ投げたけん玉とヨーヨーの糸が又左の右手と左足に絡みつく。
「よっしゃ、愁! あれをやるぜ!」
「ええ、分かったわ!」
「おらあっ!」
「うニャア⁉」
哀たちが糸を引っ張り、遠心力を利用して、又左を床に叩きつける。勇次も放り出される。
「ぐおっ⁉」
「もらった!」
「お覚悟!」
哀たちが勇次に迫る。寝転がっていた勇次の反応が遅れる。
「しまっ……⁉」
「なっ……⁉」
「むっ……⁉」
哀たちが繰り出した攻撃を鎌が受け止めた。受け止めたのは鬼ヶ島一美である。
「ね、姉ちゃん……?」
「寝坊してごめんなさいね、勇次。お姉ちゃんも戦うわ」
「誰だよ! アンタ!」
「どなたか知りませんが邪魔をしないで下さる⁉」
「礼儀知らずの新人さんたちね……」
一美が苦笑いを浮かべる。又左が苦しそうに呟く。
「……この場合は君が一番の新人にゃ……」
「……」
「ね、姉ちゃん?」
「……それは置いておいて!」
「ご、誤魔化した!」
「勇次、行くわよ! このお嬢さんたちを大人しくさせるんでしょう⁉」
「あ、ああ!」
「私は白髪のお姉さんの方を!」
「そっちが妹だぜ!」
「えっ⁉ ま、まあいいわ! えい!」
「悪く思うなよ! 哀! おらあ!」
「きゃあ!」
「どわあ!」
一美と勇次の攻撃を喰らい、愁と哀がその場に崩れ落ち、尻尾が消える。
「……あ、あら? ここは……?」
「アタシたち、一体何を……」
やや間があってから、愁と哀が正気に戻る。一美が頷く。
「元に戻ったみたいね!」
「ね、姉ちゃん……さっきの新入りうんぬんってのは……?」
「ああ! 私、鬼ヶ島一美も上杉山隊に入隊するわ! そこのところよろしく!」
「ええっ⁉」
一美の突然の宣言に勇次は驚愕する。
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