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祠壊村役場定例会議
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祠壊村(ほこわむら)の定例会議はいつも以上に重苦しく、心なしか部屋の明かりも暗かった。事務の佐藤さんがこの前節約のためと言って切れた電球の代わりにピカピカの泥団子を吊るしていたからそのせいかもしれない。
「えー、皆さんわかっていると思いますが、祠壊村は非常に厳しい状況にあります」
村長の小曽根は頭に手を当てながら言った。額には汗が滲んでいる。少ない髪の毛が汗で固まり複雑な幾何学模様を作っており、QRコードハゲみたいになっている。以前も似たような形になっていた時に佐藤さんが読み込んでみたらモーニング娘の無断転載されたLOVEマシーンの動画に飛んだ。
「わが村の人口減少は留まることを知りません。年々減少を続け、遂に村の最年少は年齢不詳の佐藤さんだけになりました。佐藤さんを除けば今年で33歳の奥富くんになります。総人口15人、いよいよ限界集落でしょう。どうにか今年村民増加を達成しないとわが村は廃村になります」
僕、いや奥富の名前が出た。そう、先日高校生になった宮内家の三女が進学を理由に引っ越したことで遂に僕が最年少になったのだ。佐藤さんが何歳なのか教えてくれないので暫定だが、まあ正直佐藤さんもそんなに若い見た目をしていなあれなんかこっち睨んでくるなやめてこわい
「とにかく、何とか村おこしをしないといけません。みなさん、何かアイデアはありますでしょうか……」
「でしたら僕から。一度ここで祠壊村の良いところをまとめ、何をアピールできるかを考えるべきかと」
「そうですね、奥富くんはどう思ってます?」
「はい、祠壊村は栃木県●●市の山奥に位置しています。栃木の山奥、ということで自然に溢れています。土地も村にしては広く、これだけ少ない村民にも関わらず村医者と八百屋や定食などの個人店を構えているので本当に最低限ではありますが暮らしにもそこまで困りません。広大な土地を有しているので農業には適しているでしょう。また、祠壊山の奥にある滝は絶景スポットです」
「奥富くんは本当にこの村が好きなんだねぇ……」
「生まれ育った村ですから。ですのでまずはこの自然をアピールしていく方向がいいかと……」
「甘いですね奥富さん。おばあちゃんが作るだし巻き卵くらい甘いです」
佐藤さんが挟んできた。そんなのは家庭によるだろ。
「今時自然を武器にした村おこしには限界があります。日本がどれだけ美しい自然を有していると思っているのですか?」
「まあ、それはそうですけど……」
「ですが、山を含めた広大な土地に目をつけるのは私も賛成です。そこで、私が提案する村おこし案はこれです」
そう言って、佐藤さんはプロジェクターに電源を入れた。佐藤さんのPCの画面が映し出される。待ち受けが力道山の乳首をアップした画像だった。
「題して、『破壊用の祠を大量に建立して観光客を呼び込みたくさん破壊させて村おこしプロジェクト』です」
「なんて?」
本当に何?
「最近、インターネット、特にTwitterで若者が祠を壊し、老人が叱責するという一連の流れがブームになっています。これは因習村というホラー界隈のミームから派生した流れのようです」
佐藤さんはXを頑なにTwitterと呼ばない。前に理由を聞いたら「は?」と言っていた。怖かったのでそれ以降は黙るようにした。
「という訳で祠壊村にたくさん祠を作りブームに乗った若者をたくさん呼びこもう、というのがこのプロジェクトの概要になります」
「え、ちょ、佐藤さん待って村長わかんない置いていかないで」
「村長の疑問は当然です。『祠壊村に因習も怪談も何もないのにホラーで客を呼び込めるわけないじゃないか』という点ですよね」
「え?いやまあそれもそうだけど」
どうやらネットミーム付近の疑問は答えてくれないらしい。僕は一応そういうブームがあることは知っていたが最近までYouTubeを夕方に宙ぶらりんになる遊びの略称だと思っていたくらいネットに疎い村長だ、確かに説明するだけ無駄かもしれない。
「差しあたってそれっぽい怖い話を作ってきました。これをまずオカ版に貼り私と奥富さんで盛り上げて、実際に凸る流れにします。そこで予め作っておいた画像を貼り、最終的に怪異に乗っ取られENDにし、あとは怪談系YouTuberに来てもらって話題にしてもらいます。あとは用意していた破壊用の祠を大量に設置すればその数だけ祠を破壊したがる方々が来てくれるでしょう。そして祠を壊した人を村民が逃がさず住民票を移せば……」
「……拉致だね」
「まあ最後のはともかく、観光客を呼ぶ手段としてはいいかもしれません。村民の皆さんにはその流れでおもてなしをしていただき、この村を気に入ってくれればいい訳ですから」
「そんな上手くいくぅ……?」
「やるだけやってみましょう……」
「では奥富さん早速始めましょう。オカ板へ」
かくして、破壊用の祠を大量に建立して観光客を呼び込みたくさん破壊させて村おこしプロジェクトは始まった。
「えー、皆さんわかっていると思いますが、祠壊村は非常に厳しい状況にあります」
村長の小曽根は頭に手を当てながら言った。額には汗が滲んでいる。少ない髪の毛が汗で固まり複雑な幾何学模様を作っており、QRコードハゲみたいになっている。以前も似たような形になっていた時に佐藤さんが読み込んでみたらモーニング娘の無断転載されたLOVEマシーンの動画に飛んだ。
「わが村の人口減少は留まることを知りません。年々減少を続け、遂に村の最年少は年齢不詳の佐藤さんだけになりました。佐藤さんを除けば今年で33歳の奥富くんになります。総人口15人、いよいよ限界集落でしょう。どうにか今年村民増加を達成しないとわが村は廃村になります」
僕、いや奥富の名前が出た。そう、先日高校生になった宮内家の三女が進学を理由に引っ越したことで遂に僕が最年少になったのだ。佐藤さんが何歳なのか教えてくれないので暫定だが、まあ正直佐藤さんもそんなに若い見た目をしていなあれなんかこっち睨んでくるなやめてこわい
「とにかく、何とか村おこしをしないといけません。みなさん、何かアイデアはありますでしょうか……」
「でしたら僕から。一度ここで祠壊村の良いところをまとめ、何をアピールできるかを考えるべきかと」
「そうですね、奥富くんはどう思ってます?」
「はい、祠壊村は栃木県●●市の山奥に位置しています。栃木の山奥、ということで自然に溢れています。土地も村にしては広く、これだけ少ない村民にも関わらず村医者と八百屋や定食などの個人店を構えているので本当に最低限ではありますが暮らしにもそこまで困りません。広大な土地を有しているので農業には適しているでしょう。また、祠壊山の奥にある滝は絶景スポットです」
「奥富くんは本当にこの村が好きなんだねぇ……」
「生まれ育った村ですから。ですのでまずはこの自然をアピールしていく方向がいいかと……」
「甘いですね奥富さん。おばあちゃんが作るだし巻き卵くらい甘いです」
佐藤さんが挟んできた。そんなのは家庭によるだろ。
「今時自然を武器にした村おこしには限界があります。日本がどれだけ美しい自然を有していると思っているのですか?」
「まあ、それはそうですけど……」
「ですが、山を含めた広大な土地に目をつけるのは私も賛成です。そこで、私が提案する村おこし案はこれです」
そう言って、佐藤さんはプロジェクターに電源を入れた。佐藤さんのPCの画面が映し出される。待ち受けが力道山の乳首をアップした画像だった。
「題して、『破壊用の祠を大量に建立して観光客を呼び込みたくさん破壊させて村おこしプロジェクト』です」
「なんて?」
本当に何?
「最近、インターネット、特にTwitterで若者が祠を壊し、老人が叱責するという一連の流れがブームになっています。これは因習村というホラー界隈のミームから派生した流れのようです」
佐藤さんはXを頑なにTwitterと呼ばない。前に理由を聞いたら「は?」と言っていた。怖かったのでそれ以降は黙るようにした。
「という訳で祠壊村にたくさん祠を作りブームに乗った若者をたくさん呼びこもう、というのがこのプロジェクトの概要になります」
「え、ちょ、佐藤さん待って村長わかんない置いていかないで」
「村長の疑問は当然です。『祠壊村に因習も怪談も何もないのにホラーで客を呼び込めるわけないじゃないか』という点ですよね」
「え?いやまあそれもそうだけど」
どうやらネットミーム付近の疑問は答えてくれないらしい。僕は一応そういうブームがあることは知っていたが最近までYouTubeを夕方に宙ぶらりんになる遊びの略称だと思っていたくらいネットに疎い村長だ、確かに説明するだけ無駄かもしれない。
「差しあたってそれっぽい怖い話を作ってきました。これをまずオカ版に貼り私と奥富さんで盛り上げて、実際に凸る流れにします。そこで予め作っておいた画像を貼り、最終的に怪異に乗っ取られENDにし、あとは怪談系YouTuberに来てもらって話題にしてもらいます。あとは用意していた破壊用の祠を大量に設置すればその数だけ祠を破壊したがる方々が来てくれるでしょう。そして祠を壊した人を村民が逃がさず住民票を移せば……」
「……拉致だね」
「まあ最後のはともかく、観光客を呼ぶ手段としてはいいかもしれません。村民の皆さんにはその流れでおもてなしをしていただき、この村を気に入ってくれればいい訳ですから」
「そんな上手くいくぅ……?」
「やるだけやってみましょう……」
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