会社を辞めたい人へ贈る話

大野晴

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1.少年漫画気質

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 僕の名前は園内そのうち辞太郎やめたろうといって、実家は地方都市なのだけれど今は東京にいます。

 今日、2014年4月1日は僕が入社する(株)アルファポリ商会の入社式。アルポリ商会は全国規模の会社で2014年度の採用人数は30名程度。
 全国に拠点を持ち、僕を含めた地方採用の人間も東京で1ヶ月近く研修を受けます。

 今、考えてみれば30人の新人が揃ったのも最初で最後です。これは僕の物語ですが、入社1年目の時点でひとり、2年目で確かふたり、壁と呼ばれる3年目でふたり、そこからポツポツと同期内で退職者が・・・といった感じで、辞めていく人がいました。
 当たり前ですがその人達にも辞める理由があって、辞めたわけで、その物語が存在しているはず。

 新人達が集まった初日、みんなで色んな話をしました。

「辞太郎クンは理系なのにどうして営業に?」
「工学部4年卒なんてそんなもんだよ」

「どうしてアルポリ商会選んだの?」
「お前は?」

「辞太郎は東北地方出身だよね?地震ヤバかった?」
「凄かったよ。九州地方のやつには分からんか」


・・・僕は工学部を4年で卒業し、商社の営業職に就きました。


 理由?


「いや。ここしか受からなかったし」


 それが理由です。そして入社式が始まり、ひとり一言自己紹介を兼ねて皆の前でスピーチをしました。その時僕は後付けの理由を見つけました。


「東北地方の復興、その一翼を担いたい」


 それっぽい理由が出来ました。このスピーチはたぶん同期内で一番だったと思います。というか、僕は結構負けん気が強くて、同期にはぜってー負けねえぞ、という謎の少年漫画気質がありました。

 ちなみに退職までこれが折れる事はありませんでした。その集団に属したからには、頑張る。社会人として頑張る。心血注いで頑張る。
「頑張りすぎだ」とか「前のめりになりすぎ」とか、嘲笑を込めて「真面目だな」とか「やる気あるな」とか言われ続けましたが、頑張りました。

 先に言っておきますが、この後7年後に発症するうつ病の原因のひとつが頑張りすぎた事ですが、直接的な原因とは異なります。

 こうして東京で一ヶ月間の新人研修が始まりました。名刺の渡し方、お辞儀の角度・・・グループワークでは1位を目指してリーダーを進んでやったり、滑り気味なジョークを飛ばしてチームのまとめ方を学んでいったり・・・ほぼ毎日飲んだり。

 ただ、物語にする程特筆する事は無くて、それは何故かと言えば、地方の支店に配属された時にはそれらが全く無意味だと気付いたからです。お遊びの1ヶ月間。それは考えれば、大学生活と社会人生活の切替の為の準備期間だったのだと思います。


 こうして2014年5月。東北地方に配属されます。ここから長い社会人生活が始まります。


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