ダブル★愛★

田山麻雪深

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戸惑う心

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「まな、行ってらっしゃい」


まなと途中まで登校して、声をかけた。


「うん、お姉ちゃんも行ってらっしゃい!帰ったら一緒に遊んでね」


「はいはい」

半分呆れて返事をしていると。

向こうの方から、親友の可恋が歩いてくるのが見えた。



「めぐーおはよ!」


「あ、可恋おはよ!」

可恋を見て、まなも。


「あ、可恋さん。おはようございます!」

体を二つ折りにして、お辞儀をする。


「まあ愛翔くんおはよ。いつもちゃんと挨拶出来て偉いね」


「えへへ・・・」

頭を掻いて、まなが照れてる。


「あ、学校遅れちゃう!じゃあお姉ちゃん後でね!」


「はいはい・・・」

私は手を振ってまなを見送る。


そして、私と可恋も学校へと向かう。



「愛翔くん、今日も可愛いね!」

歩きながら、可恋が呟く。


「え、そう?」


「え!めぐは可愛いと思ってないの?」


「いや、可愛いと思うよ?姉として、自慢の弟だもの」


「だったら、なんでそんなノリ悪いのよ?」


「ちょっとね・・・」


はあ・・・。


これは、姉として嬉しい悩みなのか?


それとも、困る悩みなのか?


それは微妙な所だけど・・・。


私は今非常に悩んでおります。



これから姉として、どう弟と接していけばいいのか?


このまま彼女も作らず、ずっと私を愛してても困るし・・・。



誰か~!!

解決方法を教えて!

心の中で何度も叫んでいた。




私には、今想いを寄せている相手がいる。


杉田大(すぎた まさる)くん。


杉田くんとは、席が隣同士ってこともあって。


入学してからすぐに仲良くなった。


彼は、成績優秀で常に学年トップ!!


それに、誰に対しても優しいの。


頭が良くて、優しいなんて、こんなの反則!?


顔も整ってて、大人っぽいイメージ。


私はそんな彼のギャップに惹かれてしまったの。




私は長女で、弟の愛翔を面倒見ているからなのか。


その反動で、他人に甘えたい気持ちがある。



だから、杉田くんのことが好きになったんだと思う。


大人っぽくて頼りがいのある彼に。



私のハートは奪われてしまった。


でも、彼のことを好きになる人は、私だけじゃない。


学年女子のほとんどは、彼の良さに気付いて。


最近じゃ、数え切れないくらいのライバルが増えちゃった。


私に勝ち目がないのは分かってる。



でも・・・少しだけなら期待してもいいですよね・・・?


だって彼は、私が期待してしまうことをいつもしてくる。


例えば、私が風邪で学校を休んだ次の日。




「倉本さん。先生から聞いたよ。風邪で休んでたんだって?」



「あ、うん・・・」



「もう大丈夫なの?風邪は治った?」



「うん、なんとか熱も下がったし」



「そか、良かった」


「ありがとう、心配してくれて」


「そりゃあ、当然だよ」



「どうして?クラスメートだから?」



「いや・・・。俺、倉本さんがいないと、学校つまんないからさ・・・」


そう言って、私にウインクしてきた、あの日。




他にも、私がある時いじめの標的にされたときも・・・。



「おい!学校来るんじゃねえよ!」



「そうだ!目障りなんだよ!」

男子からの暴言を浴びさせられる毎日。



女子からも、靴を隠されたり、鳥の死骸を靴箱に入れられたり・・・。



本当に、心が死んでしまいそうなくらい辛い時も。



「おい、お前ら!何やってんだよ!?いじめなんて最低だぞ」


「おい、杉田!今アイツを助けたら、お前まで標的にされんぞ?」



「それがなんだ?そんなの関係ない。今は、彼女を助けるのが最優先だ!そんなことも分からないのか?」



「・・・・」


そう言って、私を助けてくれたっけ・・・。



「倉本さん、大丈夫?」



「杉田くん、ありがとう・・・」


私はただ涙が流れるばかりで、仕方がなかった。



「ありがとうだなんて・・・。俺は当然のことをしただけだよ」




キュン。



その時の彼の顔が、一瞬知らない一面が見れたみたいで、カッコよかった。



今度は自分が標的にされるかもことも構わず、私を助けてくれるなんて・・・。



ああ、なんて素敵な人なんだろう?



その時私は強く思っていた。



私が彼に想いを寄せ始めたのもそうだった。



ずっと勉強に真面目で、一言も喋らなかった彼のことを。




怖い人だと思っていたのに・・・。



それは間違いだった。



怖いどころか、とても優しくて誠実で。

こんなに素敵な人だったんじゃないか!



人って、本当に見た目では判断出来ないね。




怖いって思ってる人ほど、意外と優しかったり。




逆に、良い人そうに見えても、実際怖かったり・・・。




彼のおかげでいじめも減ったし。



私が心から学校が楽しいと思えるのは、彼のおかげかもしれない。




恋って、ある日突然嵐のようにやってくる。



ちょっとしたきっかけで、恋に発展するときもある。



人それぞれだけど・・・。


誰かを好きになる気持ちは、みんな一緒。




私だって、彼を好きな気持ちは負けない!



誰がなんと言おうと、好きなモノは好き!


ライバルは、いつだって自分自身なのだから。



彼を振り向かせるために、自分磨きは欠かせない。


心も体も彼のことがいっぱいなのに・・・。




まながあれほど私のことを好きになるなんて・・・。




はあ・・・。



大きくため息。




「ねえ、めぐ?聞いてる?」



「あ・・・ごめん。何だっけ?」




「もお!何ぼーっとしてんのよ!?」

隣で、親友の可恋がブツブツ言ってる。


親友の、小田可恋(おだ かれん)。



可恋とは、高校に入ってすぐに仲良くなった。




可恋には、妹さんがいて、しっかりした性格。



私みたいに、面倒見良くて頼れるお姉さんだ。



私には弟がいるけど、可恋には妹か・・・。



私も妹の方が良かったな・・・。




「・・・可恋はいいよね」

独り言みたいに私は呟く。



「え?何が?」


「弟じゃなくて妹さんで・・・。麗奈ちゃんだっけ?こないだ家に遊びに行ってみたけど、人形みたいで可愛いよね」


「あら。そういういめぐの弟の愛翔くんだって可愛いじゃない!」



「そうだけど・・・」



「何か不満なの?」



「不満ではないけど・・・。何か他の家庭に比べて、まなの私に対する愛情が違うっていうか・・・」



「いいじゃない!そこまでお姉ちゃんを好きになるなんて、滅多にいないよ?麗奈なんか反抗期なのか、喧嘩もしょっちゅうよ」



「え!それ意外!」



「普通だって。でも私はめぐが羨ましい・・・」


「え?」



「あんな可愛い弟がいて・・・。私も弟が欲しかったな」


可恋はまなの本性(?)を知らないから、そんなことが言えるんだ!



「じゃあ・・・まなあげるから、麗奈ちゃんと交換しよ?」


「コラ!嘘でも言わないの。それ聞いたら愛翔くん泣いちゃうよ?」


「分かってるよ・・・」



「今日帰ったら、一緒に遊ぶんでしょ?」


「うん。まあ、いつものことだけど・・・」



「お姉ちゃんなんだから、しっかりね!なんだかんだ言って、私も妹の麗奈のこと可愛いんだから」



「うん・・・」


しっかり・・・かあ。



まなが私のことを「姉」としての好きだったなら。


しっかり出来たのかもね。



最近は、ちゃんと面倒見れるのか自信ない・・・。


あーもー!!


なんで実の弟にここまで気を遣わなくちゃいけないの!?



私はそんな葛藤と、いつも闘っているのであった。





キーンコーン。



今日もあっという間に一日が過ぎていく。




「めぐ、帰ろう!」


「うん!」


可恋と帰りの支度をしていると・・・。


「倉本さん」
杉田くんに声をかけられた。


「あ、杉田くん」


「気を付けてね。じゃあ、また明日ね」
そう言って、杉田くんは少し顔を赤くして帰って行った。



今の・・・何?


なんで顔を赤くしたの?


「めーぐー?」


「うわっ!!」


いきなり可恋が目の前に現れたから、ビックリしちゃった。



「これは、脈アリかもね」


「え?」


「杉田くんよ!絶対めぐのこと好きだよ!」


「そうかなあ?」


「じゃあなんで彼は、顔が赤くなったのかしら?」


「それは私にも・・・」



私もそれが気になっていた。


私のことを好きなのかは分からないけど・・・。


でも。



少なくとも私・・・彼に嫌われてないよね?



「まあでも。、彼は絶対めぐに気があるよ。私の勘鋭いから」


「はは・・・」



「良かったね、めぐ」



「うん?」


「片思いだったんでしょ?」




ギクッ!!



可恋には恥ずかしいから、内緒にしてたのに・・・。




どうして分かったんだろう?




「な・・・なんで分かったの!?」



「言ったでしょ?私の勘は鋭いの!」


「もー。可恋には敵わないなあ・・・」



「あはは。図星でしょ?」


「う・・うん」


「私、協力するからね!付き合えるといいね」



「可恋・・・ありがとう」



可恋には時々、こんなふうにからかわれたりするけど。



でも、そのたびに私の心は、すっきりしている。




何でなんだろうね?



不思議に思うばかりだけど・・・。



本当に杉田くんと付き合えるようになったらいいな。


私は夢見心地になっていた。





「あ、めぐ。もう帰ろう!愛翔くん、もう家に着いてるんじゃない?」



「うん・・・そうだね」



あー家に帰るのが憂鬱。


心の中で何度もそう呟いてた。




「ただいまー」


元気よく挨拶して、帰ると。





「お姉ちゃん、お帰りなさい。遅いよ!僕待ちくたびれちゃったよ!」

ほっぺを膨らませて、拗ねて見せる。



「ごめん、ごめん。可恋とちょっと話をしてたから」



「ふうん。てっきり、僕と遊ぶのが嫌になったのかと思ってた」




ギクッ!!


まあ半分はそうだけど・・・。


でもまあ、帰りがけに、杉田くんに話し掛けられたことは。



言わないでおこう。





まなには、杉田くんのことは話していない。



こんなに私のことを好きだって思ってくれるまなのことだから。


私が彼に想いを寄せていることを言ったら・・・。


拗ねるどころか、泣いてしまうかも知れない・・・。



私だって姉として、まなのことちゃんと好きだよ?



でもそれは、まなの思ってる「好き」じゃないのよ・・・。





それにしても、今日も杉田くんも素敵だったなあ。



普段は、勉強に真面目な彼が。



私に見せてくれる優しい笑顔に。



私のハートは何度奪われたことか・・・。




見た目は平静を装っているけど・・・。



心の中では、嵐のように恋が渦巻いている。




ドキドキとバクバクで心臓壊れそうなのよ。



きっと彼には分からない。



どれだけ私が彼のことを好きか、なんて。




あーもーダメ。



思い出したら、顔がニヤけてしまう。





そんな私を見て不思議に思ったのか、まなが口を開く。




「なんか今日のお姉ちゃん機嫌いいね。何かいい事でもあったの?」




「えー?まあちょっとね」



「ふうん・・・」


まなが一瞬悲しそうな表情をした。


でも、今の私にはおかまいなし。



「さて、まな。今日は何して遊ぶ?」



「んー。じゃあゲームしようよ!僕新しいソフト買ったんだ!」


「OK!」



今の私は、何でもしてあげたくなるくらいの気持ちだった。



彼と話せることは、私にとって大事件なの。


そのうえ、あの優しい笑顔を見せられた時はもう・・・!



天使の矢が当たったみたいに、キュン死してしまう。




大怪我してしまうかもね。




今日はまなとゲームしながら。




ずっと彼のことが、頭から離れられないでいた。



今日の出来事が嬉しすぎて、笑いをこらえるのが大変だった。


そんな私の姿を見て、まなは。




「・・・やっぱ、お姉ちゃん好き。僕の自慢のお姉ちゃんだ」



「え!?何・・・・いきなり・・・」


「いや・・・なんでも。でも僕、本当は・・・」



「え?何?」

ゲームに集中していて、まなの声、よく聞こえないよ。


「何でもなあい!」

そう言って、意味深に笑った。



まなの言葉の続きが気になったけど・・・。


ま・・・いっか。



あまり深く考え込まないようにした。

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