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魔女の住む森
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「だが、勝負はもうついた。
この男は、岩をどけることは出来んかったじゃないか。」
「肝は二つなんだから、こっちにもチャンスを二度いただこう。
次はこのアルルが挑戦する。」
「なに?そのエルフが挑戦するじゃと?」
サンドラは、アルルをあらためてじっくりと眺める。
「よし、わかった。それで気が済むのならわしはそれで構わんぞ。
ただし、三度目はないから、そのつもりでな。」
サンドラは不意に姿を消し、酒瓶を十本入れたバスケットを持って、再び現れた。
「アルル…良いか?うまくやればあの酒はあんたのもんだ。
あのものすごくうまい酒がだぞ…
あれを逃したら、金がないから当分酒なんて飲めないぞ。
いや、金があった所であんな酒は滅多に手に入らないんじゃないか?」
アルルの耳元で、カルフはまるで呪文のように銘酒のことを甘美に吹きこむ。
「さ…酒……昨夜のうまい酒……」
アルルの目が夢見がちに潤み、頬はほのかに上気した。
「そうだ、あの酒だ!」
「よし、わかった。
私は絶対にあれをものにするよ!
……はぁぁぁぁぁ…ギーガーメティーーースーーーーー!」
アルルの気合いのこもった声が高らかに響き渡り、それと同時に雷鳴のような激しい音が耳をつんざき、地面は立っていられない程にぐらぐらと揺れた。
「あ……!」
立ち昇る土埃をかき消すように温かいものが五人の上に降り注ぐ。
「こ、これは温泉…!?」
アルルの呪文は巨岩を粉々に崩しただけではなく、その周りを広く陥没させ、温泉までをも噴き出させたのだった。
「サンドラさん、良かったじゃないですか。
岩はなくなったし、温泉が噴き出した。
この温泉に漬かれば腰痛もよくなるかもしれませんよ。」
「そ、そ、そうじゃな。」
サンドラは、温泉にびしょ濡れになりながら穴の中をのぞきこみ、小刻みに頷いた。
「それにしても、おまえさん…どあつかましいが魔法の腕はたいしたもんじゃ。
……どうじゃ、わしの弟子にならんか?
魔法をたくさん教えてやるぞ。」
「あいにくだけど、私は勉強は苦手でね。
じゃあ、ばあさん、酒はいただいていくよ。」
「残念だねぇ…」
サンドラは名残惜しそうな目でアルルをみつめた。
*
四人は、サンドラの魔法により、森の外に送り出された。
アルルは、手に入れた酒のおかげですっかり舞いあがり、クラウドは自分の無力さに打ちひしがれ、カルフとヴェリエルの間には気まずい亀裂が走った。
「良かった、良かった。
あの森に行ったおかげでこんなうまい酒が手に入った!
何が幸いするかわからないもんだねぇ!」
スキップで先頭を進むアルルの後ろ姿をみつめながら、三人は同時に深い溜め息を吐いた。
この男は、岩をどけることは出来んかったじゃないか。」
「肝は二つなんだから、こっちにもチャンスを二度いただこう。
次はこのアルルが挑戦する。」
「なに?そのエルフが挑戦するじゃと?」
サンドラは、アルルをあらためてじっくりと眺める。
「よし、わかった。それで気が済むのならわしはそれで構わんぞ。
ただし、三度目はないから、そのつもりでな。」
サンドラは不意に姿を消し、酒瓶を十本入れたバスケットを持って、再び現れた。
「アルル…良いか?うまくやればあの酒はあんたのもんだ。
あのものすごくうまい酒がだぞ…
あれを逃したら、金がないから当分酒なんて飲めないぞ。
いや、金があった所であんな酒は滅多に手に入らないんじゃないか?」
アルルの耳元で、カルフはまるで呪文のように銘酒のことを甘美に吹きこむ。
「さ…酒……昨夜のうまい酒……」
アルルの目が夢見がちに潤み、頬はほのかに上気した。
「そうだ、あの酒だ!」
「よし、わかった。
私は絶対にあれをものにするよ!
……はぁぁぁぁぁ…ギーガーメティーーースーーーーー!」
アルルの気合いのこもった声が高らかに響き渡り、それと同時に雷鳴のような激しい音が耳をつんざき、地面は立っていられない程にぐらぐらと揺れた。
「あ……!」
立ち昇る土埃をかき消すように温かいものが五人の上に降り注ぐ。
「こ、これは温泉…!?」
アルルの呪文は巨岩を粉々に崩しただけではなく、その周りを広く陥没させ、温泉までをも噴き出させたのだった。
「サンドラさん、良かったじゃないですか。
岩はなくなったし、温泉が噴き出した。
この温泉に漬かれば腰痛もよくなるかもしれませんよ。」
「そ、そ、そうじゃな。」
サンドラは、温泉にびしょ濡れになりながら穴の中をのぞきこみ、小刻みに頷いた。
「それにしても、おまえさん…どあつかましいが魔法の腕はたいしたもんじゃ。
……どうじゃ、わしの弟子にならんか?
魔法をたくさん教えてやるぞ。」
「あいにくだけど、私は勉強は苦手でね。
じゃあ、ばあさん、酒はいただいていくよ。」
「残念だねぇ…」
サンドラは名残惜しそうな目でアルルをみつめた。
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四人は、サンドラの魔法により、森の外に送り出された。
アルルは、手に入れた酒のおかげですっかり舞いあがり、クラウドは自分の無力さに打ちひしがれ、カルフとヴェリエルの間には気まずい亀裂が走った。
「良かった、良かった。
あの森に行ったおかげでこんなうまい酒が手に入った!
何が幸いするかわからないもんだねぇ!」
スキップで先頭を進むアルルの後ろ姿をみつめながら、三人は同時に深い溜め息を吐いた。
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