お礼（無謀）企画

番人の館

７

＊



次の日、また、霧で迷ったという者が屋敷を訪ねた。
それは、ミッシェルというまだ幼い女の子だった。
僕の娘のキャロルと同じくらいの年に見える。



「ミッシェル、君はいくつなの？」

「私は五歳よ。
おじちゃまはいくつ？」

その言葉に僕の頬は緩んだ。
このくらいの年頃の女の子は、おしゃまでとても可愛らしい。



何が起こったかもわからないまま、こんな所で足止めを食らい、沈みがちだった僕の心もミッシェルのおかげで少し明るくなった。
ミッシェルは、話していて利発な子だということがわかったが、ここへ来た経緯についてはいまひとつ要領を得なかった。
どうやら別荘に遊びに行っていた時に迷ったらしいのだけど、その場所…住所についてはわからないようだった。
それがわかれば、今いるこの場所もだいたいの見当は着くだろうに。
しかし、それも五歳の子供には無理からぬこと。
キャロルも確か自宅の電話番号は知っていたと思うけれど、僕やジェーンの実家については住所も電話番号もわからないはずだ。

そんなことはともかく、ミッシェルの親御さんはさぞかし心配されていることだろう。
ミッシェルも当然家に戻りたがっていたが、とりあえず無事にここに辿り着けただけでも良かったと思えた。
外は今なお真っ白な霧が晴れない状態だ。
早く家族の元へ連れていってやりたい気持ちはあったが、今、出て行って何事かあれば、ミッシェルがここに辿りついた意味がない。
僕は、ミッシェルが寂しい思いをしないようにと気遣い、常に一緒に過ごした。
そして、そうすることが僕の慰めにもなった。
霧が晴れたらこの子を両親の許に届け、そして、いつか出来る事ならキャロルやジェーンにも会わせてやりたい。
僕は彼女の寝顔を見ながら、ふとそんなことを考えていた。



ところが、次の朝、予期せぬことが起こってしまった。