お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)

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傷だらけの掌

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「相当、腹が減ってたようだな。」

「……まぁね。」



少女はぺろりとパンをたいらげ、果物と缶詰は持っていた袋に仕舞った。



「それじゃあ、気を付けて…」

「おじさん、この先の町に行くんじゃなかったのかい?」

「え…あぁ、まぁそうだが…」

「なら、あたいと同じだね。
一緒に行こうよ。」

少女はそう言って、俺の手に指を絡ませ、そして何かに気付いたかのように俺の掌を上向けた。



「……どうしたの?この傷……」

「……ちょっと、な。」

「ふ~ん、わけありなんだ。名誉の負傷?
じゃ、行こうよ。」



少女は年の頃は十歳と言ったところだろうか?
背丈もそう大きくはなく、痩せこけてはいるが、目にはとても強い力があった。



「君は、いくつだ?
名は何という?」

「年は多分十二。
名前は、ラナってことになってる。」

「ずいぶんおかしなことを言うんだな。
自分のことなのに、なぜ『多分』なんだ?」

「だって、あたい、物心付いた時には、もう親がいなかったんだ。
なんでも、あたいの親は戦争で死んだってシスターが言ってたよ。
名前もシスターがつけたんだ。
あたいは孤児院で育ったんだけど、そこも戦争でなくなって、八つの時からは一人で生きてる。」

俺はラナの横顔をじっとみつめた。
今の話は本当のことだろうか?
八つの子供が…まして、戦時中のこの国で一人で生きることなんて出来るのだろうか?



「おじさんの家族は?」

「……え…?
……俺の家族は…今はいない。」

「戦争でやられたのかい?」

事も無げに放たれたその言葉に、俺はいささか不快な気持ちを感じたが、ラナに悪意がないこともわかっていた。
先程の話が本当なら、自身も親を戦争で失っていることになるのだから。
ただ、この少女はそれがどういうことなのかを知らないだけなのだろう。



「……そうだ。」

「そいつは大変だったね。
皆、やられちまって、おじさんだけが生き残ったってことかい?」

「……その通りだ。」

「あたいと同じだね。
でも、そう気に病むことはないさ。
そんな奴はあたい達以外にも山程いるよ。
どれほど悲しんだ所で、死んだ者は帰らない。
だけど、この世界には女もいっぱいいるんだし、また良い人をみつければ良いだけの話さ。
そして、新しい家族を作れば良いんだよ。」

俺は苦笑するしかなかった。



そんな風に考えることが出来たなら、俺だってもっとずっと楽に生きられただろうに…
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