お礼（無謀）企画

竜の国

２２

「それと……」

 桂葛さんは僕から視線をはずし、言いかけた言葉は途絶えた。



 「……桂葛さん…何なんですか？」

 「翔…これからはあまり朱花と親しくしない方が良い。」

 「えっ！？どうしてですか？」

 「それは……
好きになっても別れることになるかもしれないからだ。」

 「え……それは一体どういうことですか？」

 「以前にも言ったはずだ。
 詳しいことは今は言えない。
ただ、こちらの世界には必ず五年は住まなければならない。
それももう言ったはずだな。」

 「……はい。」

そうだ…それは多分、五年経ったら元の世界に帰れるってことなんじゃないかと思って、それで僕はずっと頑張って来た。
 真面目に生きていれば、それを評価してもらえるんじゃないかって…
でも、僕は自分の中に眠ってた竜の力を目覚めさせることが出来て、そのことから僕自身が竜神族の者だという自覚も感じるようになった。
だからといって、元の世界に帰りたくないってわけじゃない。
 僕がいなくなってから、父さんや母さんが、そして友達がどんな風になったのか、正直ものすごく気にはなってる。
だけど、それを考えるとどうしようもない気持ちになってしまうから、あえて目を背けてた。
そうしないと、ここでは生きていけないような気がしてたから。



 朱花のことを好きになって、そして、朱花も僕のことを好きだといってくれて、そのことで多少気持ちは揺らぐようにはなったけど、それでも、僕はやっぱり元の世界に帰りたい。



その気持ちはきっとこの先も変わらない…
そう思ってた。