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穏やかな村
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「実は……ここへ来たのは偶然だったんです。
僕は、姉の住む町へ行くつもりでした。
ここらの地域は、どこももう壊滅的な被害を受けたことは僕も両親も知っています。
だから、姉のことも諦めてはいたのです。
もし、生きていたらきっと故郷に戻って来るはずです。
戻って来ないのは……生きてないから……
でも、その事実を確かめるのはやはり怖い。
正直、行きたくありませんでした。
でも、両親はなんとしても確かめて来てくれと僕に頼みました。
僕は故郷を出たものの、なかなか足が進まなかった。
そんな時、町の宿屋である老夫婦に会ったんです。
老夫婦は息子さんを探しになんとか町までは来たものの、ここから先の道はまだ修復していないし、自分達の不自由な足ではとてもたどり着けないだろうと、寂しそうに話してくれました。
それで、僕はその老夫婦に代わりにこの村の様子を見てきてあげると約束したんです。
……姉の住む町へ行くのを少しでも遅らせたいがために……」
旅人は、瞳を伏せ、小さな声でそう話しました。
「……そうだったんですか。
……でも、あなたはどうして昨夜そのことをおっしゃらなかったんですか?」
「それは……」
旅人の顔に暗い影が差しました。
そして、躊躇いがちにゆっくりと口を開きました。
「息子さんは、燃えるような赤い髪だと言ってました。
……ここには赤い髪の男性はいない。
それに…その息子さんには三つになる女の子がいたそうなのですが、ここにはそんな小さな子供もいない。
アダムさんは…彼のご家族は、皆、亡くなられたのですね。」
「え…えぇ……実は……」
村長はそれだけ言って、悲しそうに目を伏せました。
「やはりそうでしたか……」
「ご両親はさぞ悲しまれることでしょうね。」
「そうですね…
でも、覚悟はされていたと思います。
なんせ、ここは終焉の地ですから……
僕にはいまだに信じられないくらいです。
この地域にこんなに平和で美しい村があったこと、生き残った人間がこんなにいたことが……
息子さん達のことはお気の毒ですが、このことを伝えたら、あのご夫婦も少しは救われると思います。
それに…」
「それに……?」
「僕も希望を感じました。
もしかしたら、姉も生きているのかもしれないって…
故郷に帰って来ないのは、町の再建に奔走してるからなのかもしれないって……
ようやく町に行ってみる勇気がわいてきました。」
「そうですか…それは良かった。」
皆、旅人の言葉に、ほっとした笑みを浮かべました。
僕は、姉の住む町へ行くつもりでした。
ここらの地域は、どこももう壊滅的な被害を受けたことは僕も両親も知っています。
だから、姉のことも諦めてはいたのです。
もし、生きていたらきっと故郷に戻って来るはずです。
戻って来ないのは……生きてないから……
でも、その事実を確かめるのはやはり怖い。
正直、行きたくありませんでした。
でも、両親はなんとしても確かめて来てくれと僕に頼みました。
僕は故郷を出たものの、なかなか足が進まなかった。
そんな時、町の宿屋である老夫婦に会ったんです。
老夫婦は息子さんを探しになんとか町までは来たものの、ここから先の道はまだ修復していないし、自分達の不自由な足ではとてもたどり着けないだろうと、寂しそうに話してくれました。
それで、僕はその老夫婦に代わりにこの村の様子を見てきてあげると約束したんです。
……姉の住む町へ行くのを少しでも遅らせたいがために……」
旅人は、瞳を伏せ、小さな声でそう話しました。
「……そうだったんですか。
……でも、あなたはどうして昨夜そのことをおっしゃらなかったんですか?」
「それは……」
旅人の顔に暗い影が差しました。
そして、躊躇いがちにゆっくりと口を開きました。
「息子さんは、燃えるような赤い髪だと言ってました。
……ここには赤い髪の男性はいない。
それに…その息子さんには三つになる女の子がいたそうなのですが、ここにはそんな小さな子供もいない。
アダムさんは…彼のご家族は、皆、亡くなられたのですね。」
「え…えぇ……実は……」
村長はそれだけ言って、悲しそうに目を伏せました。
「やはりそうでしたか……」
「ご両親はさぞ悲しまれることでしょうね。」
「そうですね…
でも、覚悟はされていたと思います。
なんせ、ここは終焉の地ですから……
僕にはいまだに信じられないくらいです。
この地域にこんなに平和で美しい村があったこと、生き残った人間がこんなにいたことが……
息子さん達のことはお気の毒ですが、このことを伝えたら、あのご夫婦も少しは救われると思います。
それに…」
「それに……?」
「僕も希望を感じました。
もしかしたら、姉も生きているのかもしれないって…
故郷に帰って来ないのは、町の再建に奔走してるからなのかもしれないって……
ようやく町に行ってみる勇気がわいてきました。」
「そうですか…それは良かった。」
皆、旅人の言葉に、ほっとした笑みを浮かべました。
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