お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)

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喋る大樹

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 「こっちだ。」

 次の日の早朝、アズロの案内によって、アレクは森の中を歩いていた。



 「ラムゼル!」

 『おぉ、アズロか…ひさしぶりだな。』

 突如、聞こえた低い声に、アレクはあたりを見渡した。
しかし、見渡す限り、そこにあるのは木々だけで、人の姿は見られなかった。



 「ラムゼル、こっちはアレク…
ちょっと困ったことが起きてね。」

アズロは一本の大きな木の傍で、そんなことを口にした。



 『何があったというのだ?』

その声は、木に空いた拳大の穴から聞こえているようだった。



 「このアレクがね、空気の揺らめきに触れて、ここへ飛ばされちゃったみたいなんだ。」

 『時空の歪みか…
そいつは困ったものだ。』

 「ちょ、ちょっと待て。
アズロ、お前が今しゃべってるのは…も、もしかして、この木なのか?」

 「そうだよ。彼がラムゼル。
この森のことを一番知ってるのは彼だ。」



 (一体、どうなってやがるんだ?
 空を飛ぶ人間に、喋る木だと…?
まったくイカレてやがる!)

アレクは唇を噛んで、心に浮かんだ悪態を堪えた。



 「ねぇ、ラムゼル…
アレクを元の世界に戻してあげるにはどうしたら良いかな?」

 『そりゃあ、待つしかなかろうな。
 空気の揺らめきがこの森のどこかに現れるのを…』

 「やっぱり、それしかないかな?」

 『あぁ…ここはいろいろな世界と繋がった森だ。
また時空の歪みが発生するということは十分に考えられる。』

 「そいつはいつ現れるんだ!?」

アレクは、前のめりになって質問した。



 『それはわからん。
 時空の歪みは不意に現れて、不意に消える。
たいがい、それらは誰にも気付かれずに消えるものだが、時におまえさんやアズロのように、それに触れてしまう者がいるというわけだ。』

 「これからはたとえみつけたとしても触れたりはしないけどね。
 最初はわからないから、触ってしまったんだよね。」

アズロは照れくさそうにそう言った。
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